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ゴブリン魂  作者: チャー丸
第2章 キッド’s side story
216/534

74話

11:30


オレと、ジャイは電車に乗り、ジャイの高層マンションを目指した。


12:15


『3回目だなここに来るのは。』


「電車からタクシーで来たのはオレも初めてだ。いつも車だからな。」


『あの時も、この下からジャイの部屋を見上げてたな。めっちゃ、酔っ払いで手がつけられなかったらどうしようとか話してさ。』


「ははは。あれから1ヶ月か。って事は親父が倒れて1ヶ月ちょいだな。脳梗塞だけど、山は越えたからまだ死ぬ訳はねえと思っていたんだけどな。ハーブなんかやってたから、脳梗塞になったのかな?頼る場所が違うんだよ!アホ親父!」


『ジャイ電車で話してくれた、やる事があるんだろ?』


オレはジャイの袖を引っ張った。


「ああ、一刻の猶予もない!急いで行かないと。」


『じゃあ部屋に行こうぜ。』


2人はマンションの中に入り、メールBOXに入った大量の手紙を持ち、エレベーターに乗りジャイの部屋に来た。


【ガチャ。】


『あのままだな。』


「1度荷物取りに来た時は服だけ取ってそのままだったからな。とりあえずキッドカーテン開けよう。暗くて陰気くさい!これじゃ気持ちも滅入る。」


『あいよ!』


とりあえず日の光を部屋にいれる。


『ジャイ見て!燃えたカーテン!』


ジャイが自分の部屋からガサゴソ何か探し物をしているようだ。


「言うなよ。あの頃は1人で色々大変だったんだ。カーテンとソファーくらいで済んでよかった。あの時死んでいたら親父の気持ちも知らなかったし、キッドとの楽しい思い出も何も知らなかった。」


ジャイの声だけが違う部屋からリビングに聞こえる。


【シャー。】


オレはカーテンを開けた。


『すげー。超景色すげー。』


そこからみた景色は雄大で7駅向こうのオレの家すら双眼鏡があれば見えるんじゃないかと思える高さだった。


「あった!キッドあったぞ。」


ジャイが手帳数冊と携帯電話3つと充電器と紙とペンを持ってリビングにかえってきた。


オレは手帳を開いて見てみた。


『すげーな。何人だ?こりゃ。』


「600人だ。だいたい。そのうち、200人はオレが担当していた。」


『間に合うかな?19時までに。』


「やれるだけを全力にやるだけだ。」


ジャイが、3つの携帯電話を、充電し、電源を立ち上げた。


「キッド!その1番右の携帯電話の名前と電話番号を紙に書き出して、その人の症状と、日にちが手帳に書いてあるだろ?それを紙に書き出して、いってくれ。」


『なぁ、ジャイこの日にちってなんなんだ?』


「親父が親父だけを頼って来てくれる患者さんを自分から家に遊びに行ったり電話でコンタクト取ったりして、自分から連絡した日にちだ。新しい日にちが1番最後に連絡を取ったか、会いにいった日にちのどちらかだな。

親父は、無駄にそんな事ばかりしてた。心が病んでいそうな人を見逃さないそんな能力が、あるくらい、人が悩んでると普通の風邪の人で、診察で来ても電話を聞き出しその後話し相手になったりして悩みを聞いたり、世間話を、したりしていたんだ。その人達に連絡を取ったり、あったりした最後のコンタクトを取った最後の日が書いてある。」


『そうなのか?そっちの手帳は?』


「こっちがオレのリスト、100人に、親父が500人のうち、人が増えて、手に回らなくなったうちの100人だ。そうか!?親父はこういう事を嫌がらずにやる、医者を探していたのか?今これをみてわかった気がする。兄貴達は反対していたんだ。効率が悪いと、風邪できた患者は風邪を治すだけで充分だと、、、。そういう事か親父?それで5人探していたのか、、。死んでから気がついてもな。」


『大丈夫だ。ジャイの父ちゃんと、ジャイが、やって来た事が無駄にならないように、今から、やるんだろ?可能な限りやれる事を全力でやろうぜ。見せてやろう!人が人を救うって現実を父ちゃんにも、兄貴達にも!リアル魔族一家なめんなよだぜ!』


「だな!その通りだ!まずは、親父のリストの前に親父の、気持ち知っちまったからな。あの2人からアポかけないと、協力してくれるかな?とりあえずやれる事を全力でやるんだよな!小学生なめんなよだ!」


がっちり腕を組むように握手して、お互いがお互いのやるべき事をただやるだけだった。


ただ黙々とお互い作業をこなし、1時間、2時間、が過ぎだ。


「もしもし、総合メディカルセンター神取クリニックの私、神取誠と申します。はい。あの神取誠一郎の息子のです。こちらこそ、父誠一郎がお世話になりまして、、、、、。」



『あーっ!手が腱鞘炎になるー!』




3時間4時間と過ぎていった。


「もしもし、総合、、、。」


「池田のおばあちゃん。元気ですか?誠です。覚えてますか?父が見た足の様子はその後いかがですか?、、、はいこの度、、、、。」


『あーっ!もう手が折れたーー。』


飽き性の俺だが、嫌な顔せず続けた。


嫌な顔せずはウソだった。


嫌ではないけど、本音が出ちまうから手が痛くなると、それなりに叫んでいた。


それでも、そのたびに笑い、2人で、必死に頑張った。


「最後は、小泉先生に電話しないと。」


『オレの方は終わったー!死ぬー!』


「いやー1人じゃどうにもならなかった。マジ助かった、ありがとう。、、あっ、小泉先生もしもし。すいませんこちらから電話かけといて、あの親父が飲んでいた酒の名前教えて貰いたくて。はい。あっーなるほど。わかりました。はい、親父にお供えしてやろうと思ってまして。ははは。後もう1つお願いいいですか?実は、、、。」


「大丈夫ですか?ありがとうございます。恩に切ります。では失礼します。」


「やったぜ、キッド!無理聞いてもらえたぜ!」


『そうか、、。よかった。ちょっと30分寝かせてくれ、、。流石に疲れた。』


「わかった寝ててくれ。オレは礼服の用意とかしとくから。」


『悪い、、。』


…疲れたぜ。流石に。


そういうと、リビングで自分の持って来たリュックを枕にして、少し横になって目をつぶった。







「キッド!キッド!」


『んっ?ああ、オレ寝たのか?どのくらい寝てた?』


「1時間くらいかな?見ろよジャーン。」


ジャイが、机の上に一升瓶を置いた。


『これが、ジャイの父ちゃんが好きだったお酒か?』


「キッドが寝てる間に買って来た。親父が好きだったかどうかわからないが、よく飲んでいたお酒らしい。いやな事を忘れるために飲んでいたならあまり持っていかない方がいいのかな?」


『そんな事ないさ!だって、飲んでいるときは多分ジャイと一緒で嫌な事からこの酒のおかげで、救われていたかもしんねーじゃん?父ちゃんからしたら、何よりの薬だったかもよ。』


「そうかな?」


『これを持って行く事が、父ちゃんが悩んでいた事を分かってやった証になるんだってきっと。』


「親父、、、。お互い悩んで、1人でお互い酒のんで、1回くらいお酌してやればよかったな、、、。酒の力を借りれば好きな事を言えたかもしんないのに、親父はより強いハーブに、オレは酒の量を増やし、依存性になっていったのか?笑える話だ。」


ジャイが立ち上がった。


「キッド!行こう!親父がオレの酒を待ってる!そして伝えなくては行けない!例えどんな邪魔されても、親父がやって来た事は無駄じゃなかった事を伝えなくては。」


オレもジャイが話してる間に着替え終わり、用意が出来ていた。


『ジャイ!行こう!』


そして、部屋を出て、エレベーターで地下1階に向かった。


10台置けるジャイの駐車場の端に1台カバーを被った車があった。


『ジャイこれって?』


「親父のお下がりだ。趣味で持っていたやつを昔貰ったんだ。えいっ!」


【パサッ!】


『空冷ビートルじゃんか?渋っ!』


「唯一親父に貰った車だからな、でも1年半エンジンかけてないんだかかるかな?」


【キュルキュルキュルキュル】


「かかってくれ!この車で行きたいんだ!」


『頑張れビートル!!』


【キュルキュルキュルブォーン】


『かかったぜ!ジャイ。』


「やった。やった。かかった。親父今行くからな。」


ジャイが1速に入れ、ビートルが走り出す。


マンションから出た時にはもう辺りは夕方が終わり、夜になっていた。


背水の陣の覚悟で、2人は、巨大なお寺さんに向かった。


なぜか妙に人暖かさ感じる空冷ビートルに乗りながら、、、。


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