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ゴブリン魂  作者: チャー丸
第2章 キッド’s side story
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68話

『痛っ、、、あれっ?ジャイ?』


「キッド!気がついたか?今オレの病院に向かってるとこだから」


『大丈夫だ!多分いつものやつだ感覚でわかる!

倒れたのは初めてだけど行かなくていい!

それにジャイだって、病院とか行ったらまずいだろ?何分寝てた?』


「倒れてまだ5分くらいかな?

異世界が原因で倒れたなら行かないけど、医師として、違う原因があるなら見過ごせねーよ。

いきなり倒れるって相当だからな。」


『大丈夫だ。もうほとんど痛くない!感覚が覚えてる!』


「そうなのか、じゃあこのまま、スーパーに戻るけど。」


『なぁ、悪い時間あるか?

もう1度あの駐車場に行ってくれないか?

ジャイに話がある!』


「わかったUターンする!」


車はまたジャイの駐車場に、引き返した。


そして、駐車場のバイクの前に、ついた。


『ジャイ!このバイクだ!』


「ああ、オレが大学で暇な時に親父に黙って免許取って、買った初めてのバイクだ。」


『どういう、因果かわかんねーけど、オレの前の未来で乗ってたんだわ!

このバイクに!未来で誰かに売る予定だったりしたのか?思い出せジャイ』


「いやいや。オレは未来から来た訳じゃないからわかんないし。

でもなキッド!売るつもりは無いんだわ!オレはこのバイク!

気に入ってるからな。」


『そうなのか?じゃあなんで、オレはこのバイクをあの未来でバイク屋から買って乗ってたんだ?』


「ちなみにそのバイク屋で初めてバイク見つけたのいつだ?」


『中3の夏過ぎだったな。それからめっちゃバイトしたから、毎月バイク屋に金わたして、4月に納車して貰ったから2015年の9月あたりかな?

ジャイ、ちょっとバイク動かして貰えるか?』


「あぁ。」


ジャイが動かそうとした時だった!


『痛っ!ダメだストップ!ストッープ!!無理無理!』


「なんだこのバイクを動かしちゃ未来で何かあるのか?

確かに乗る予定はなかったけど、、、。」


『なんだ?全然わかんねー!』


「多分オレとキッドが知り合わない世界ではバイクはずっと動かない歴史があるんだぜ、でも、頭痛が来るって事はなんかあの未来に関係があるって事は間違い無いな!」


『んーっ!わかんねーし、頭いてーけど、またがるくらいいいかな?

神様!動かさないから!またがるだけ!』


そう言ってバイクにまたがった!


『ダメだ頭痛てー!無理無理!なんだよ元オレのバイクだぞ!またがるのもダメなのかよ!』


「おまえ相変わらずアホだな!頭痛くて倒れたのに、また、またがろうとするか普通?」


『オレと青春を駆け抜けた相棒だ!よくこれに乗りいろんなやつと喧嘩もしたし、辛い思いもしたけど、夜の闇に自分が溶けて一体化してる感じが最高だった。

金曜の夜こそが生きていると感じがする瞬間で、

毎日金曜の夜の為に生きているそんな気分すらしてたんだ!

このバイク2気筒だけど、右側の排気だけ、煙多くないか?』


「いや、あまり気にした事ないけど煙凄いよな?」


『そうかわからねーか、、。

確かに煙自体多いもんな!

おい!RZおまえには、乗らないはずの未来に進んだはずなのに、まさかな、こんな所で会うなんてな。

おまえも、鈴木さんと同じでお預けか?もし、運命で、またオレの所に来たら、オレはもう悪友とつるむ気はねーけど、その時はおまえ1台だけど!一緒に走ろうな!』


「それだけ、あれなら売ってやってもいいとは思ったが、それじゃ頭がカチ割れちゃうんだよな?

今後どうなるか見守らないとな!

とりあえずカバー被してあったように置いとくぜ!」


『ああ!こんなに愛おしいのに、触れられないなんて、、、。まるで機械に振られた気分だ。』


「はははは。まあどういう縁でキッドのとこに来るか、わからないがもし、バイクがキッドの所に来たら、一緒にオレが走ってやるよ!」


『あの88ccのモンキーでか?』


「いや、欲しいバイクがあるんだよ。スズキのグース350って知ってるか?」


『知らねー訳ねーじゃん!

なんでまたそこ!渋いな!チョイスがやっぱりナイスだわ!』


「もし、キッドの所にこのRZ250が来たら、一緒に走ろうぜ!

そしたら部屋にある部品も分けてやるよ。クロスチャンバーとかあるから!」


『ジャイ神だわ!

とりあえずどういう流れでオレの所に来るか観察しようぜ。

頭の頭痛も気になるし!』


「そうだな!今度車も、乗せてやるから遊びに行こうぜ!」


『小学生になった気で遊ぼうとか言ったけど、やっぱこういうの見ると格差感じるな。金持ちはすげーなと思うわ!』


「そんな悲しい事言うな!全財産とキッドどちらか選ばなきゃいけない状況でも迷わずオレはキッドを選ぶ!

いつも金、金だみんな。

オレはそうじゃない!

オレが神取であの病院の親父の息子とわかると、みんな態度が変わる!

そんな同じような仮面を被った人間どもうんざりなんだ!

そんなやつの顔は道化師のピエロの仮面にしか見えなくなるんだ。

オレはだから、病院でも浮いてるのかもしれないとわかってるんだ!

こんな事言ったらいろんな人に恨まれるかもしれないが、普通に憧れてるんだ!

それは多分オレが中学生から抱えて来たトラウマかもしれん。

オレが異世界に行った本当の理由は、兄貴を殺したいからとか、親父が倒れてとかじゃなくて、オレを神取誠一郎の息子ではなく、普通に神取誠として、見てくれる人を探していたのかもな。

だから人間界は退屈して飽き飽きしてると異世界でいったんだ。

おまえといれば退屈しないそう言ってくれた。

オレはそれを信じた。

なんだこの馬鹿みたいな日々は楽しすぎるじゃないか?

朝からマラソン?冬だぞ?馬鹿だ!

なんだ、あのご飯の量?馬鹿だ!

小学生とバスケ?馬鹿だ!

しかも小学生に勝てない!馬鹿だ!

医者のオレが、ティッシュのタイムセールの用意しながら品出し?もう馬鹿馬鹿過ぎて、面白すぎる!

最高だ!昨日から乾いた心に、水が滴って行く気分だ。

だから頼む、格差とかそんな事言うな!

キッドおまえも、道化師のピエロの仮面を被らないでくれ!それを被られると顔が見えなくなるんだ。」


『そんな訳ねーだろ。』


男のジャイに抱きついてしまった!


オレの場合考えるよりすぐ感情で動いてしまう人間なのかもしれない。


『おまえが金持ちでも、医者でも、おまえがホームレスでも関係ない!

おまえはジャイだ!

オレのダチのジャイだろ?

そんな簡単な発言くらいで惑わされるな!

もっと信じろ!

ジャイはもう異世界に来てるし、オレの未来の話も知ってる!

だから、オレが鈴木さんのように裏切る事はしない!

魔族一家はな!他人の為に笑って腹切れる仲間だ!

人間界の魔族一家はそこまでじゃないかもしれないけど、

異世界の魔族一家はそれくらい強い意志で繋がってる!

オレを信じるのが辛いなら、

疑う気持ちをまず捨てろ!

それでも不安になったその時こそ、信じてみろ!

ジャイ!本当に死ぬまで親友で見返りも求めず体張れるダチなんて、

一生で数人出来ればいい方だぜ!

むしろできないやつの方が多いんだ!

だからこそ、そういう奴が出来た時こそ、疑うな!

疑う方が馬鹿野郎だぜ!』


ハグは終わった。


男にハグなんてこしょばゆい気持ちだ。


「キッド、、、。

異世界でオレはおまえに会わなきゃいけないって理由がわかった気がする。

前、キッドがオレに会わない未来でもオレはキッドってやつと異世界を過ごしていた。

オレはやはり、おまえに救われなきゃいけなかったかもな。

さっき変な事言ってすまなかった。」


『気にすんなよダチだろ?当然じゃんか?なぁ、最後に1度未来のオレのバイクに抱きついてから帰っていいか?』


「別に構わないが、、。」


『RZ!!うわっー!頭やっぱり痛てー!』


「ははははははは。ははははははははは。頭痛くなるのわかってて、また抱きつくかよ?

キッドおまえがそんな馬鹿なやつでよかった!

帰るぞ!あまり時間遅くなると主任さんに怒られそうだ。」


『そうだな。じゃあな、オレのRZ250おまえは、鈴木さんと違いもう少し早い2年半後だな。

多分また会える!その時までしばしの別れだ。』


オレと、ジャイは、軽トラに乗り、ジャイのパート先のスーパーに向かった。


帰りも病院の側を通っていた。


ジャイが病院を見ながら話し出した。


「キッド!今日な実は昼1時から夕方5時くらいまで後継者決める会議があったんだ。」


『まじか?まだギリギリ間に合うじゃねーか!病院すぐそこだし、携帯貸してくれりゃ母ちゃんに事情説明して、主任さんに連絡するけど。』


「これ見ろよっ!」


そこには、半分燃えた封筒があった。


「半分は燃えたけど、まだ読めるしちゃんと親父が書いたって証明が取れるから効力がある!」


『すげーなあそこの医院長になるのか?』


「ははははははは。ははははははは。」


ジャイがビリビリに遺言書を破いた。


「なるか?あんな所の医者なんて!」


そしてちぎった遺言書を軽トラの窓から投げ捨てた!


「勝手にやってろクソ親父に、馬鹿兄貴ども、金の亡者め、神取メディカルクリニック!なんだそりゃ!

死んじまえー!そんな病院はははは。」


『オレもバカだがジャイおまえはもっと大バカだな!』


「バイトなめんなよ!時給800円なめんなよ!1人人間としてなめんじゃねー!」


『言ってやれ!あのクソ病院に思いっきり言ってやれ!思いの丈全て吐いちまえ!』


「オレは神取誠一郎じゃねー!誠だ!1人でもうなんでも決められる大人だ!敷かれたレールなんてクソくらえだ!」


『いけいけー!』


「今日からな、神取の名字すらいらねんだよ!ジャイロ誠で充分だバカヤローーーー!!!!」


『よく言ったジャイ!』


【パチン】


車中で感情が頂点に極まりハイタッチした。


「長かったぜ、この1歩を踏み出すのに何年かかったか?」


『そうか?この選択を選んだからといって楽な道なわけじゃないぞきっと。でも始めるのに、変わる事に遅いなんて事は絶対ないさ!』


「大丈夫だ!大変かもしれないが、笑ってさえいれればそれは金より価値がある!キッドおまえのさっきの一言で前に進めた。サンキューな。」


『ああ大した事言ってないけどな。でもその通りだ!笑ってれば金より価値はあるはずだ!ジャイもこの新しく進む未来にきっと笑える未来があるさ!おれも叫んでいいか?』


「ああ、言え言え!」


「病院のくせに、ジャイを傷つける病院なんて、潰れちまえー!!」


「ははははははは。楽しいな人生とは!まさかそんな風に思う日が来るとはな。」


『喜怒哀楽は必ずあるからな!人を救うのは人と、時間だぜ』


「その通りだ。何がきっかけかわからないもんだな。」


『オレもそう思う。オレもジュンにすげー影響を、うけたからな。そういう仲間は大事にしないとな。』


「そうだな。」


2人はスーパーに向かって車を走らせていた。


晴れ晴れとし、何か吹っ切れたような横顔のジャイの姿がそこにはあり、


昨日マンションで呑んだくれていた、人物と同一人物とは思えなかった。




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