60話
「オレは医者だというのは言ったけど、今は自宅待機中というのは言ったか?」
『ああ。聞いた。』
「院内にオレをはめたやつがいる!オレが薬物に手を出したと、警察に言った奴がいてな、警察がいきなり令状持ってガサ入れに来て、まあやってないから別に関係ないと、高を括っていたら、病院に通勤するスーツから脱法ハーブが出て来たんだ。参ったぜ。違法なやつじゃなかったから捕まりはしなかったが、誰かに私服に入れられて、それが院内に広まり、謹慎中と言う訳さ。」
『それがなんで自分が生きてない事と繋がる?』
「オレはオレをはめたやつを殺す!そして自分も死ぬ!まぁそんなとこだ!そう考えてる」
『ははは。冗談だろ?』
『、、、、、、、、。』
『ジャイおまえ本気なのか?マジやめろってそんな事!』
「キッドよく、そんな事って簡単に言えるな。キッドおまえが1番大事にしてる物はなんだ?」
「鈴木さんと、家族と仲間だ。」
『キッドは1番がいっぱいあるんだな。じゃあその大事な物を、順番に、誰だかわからんマスクをしたやつが、無差別に全員を刺していった!おまえはそんなやつを許せるか?そいつを見つけたら殺そうと思わないのか?』
…そりゃ、許せない
…許せないけど、
…ここで、許せないって言っていいのか?
…今のジャイに共感して殺人をしようと考えているやつを肯定していいのか?
…でもオレも中学受かったとはいえバカだからな、理屈より感情なんだろうな。
…もっと頭がいいやつなら、上手く引き止められるのかもしんない。
…オレには無理だ。
『正直言って、殺すと思う。』
「だろ?じゃあしょうがないじゃないか?オレの場合医者でいる事が生き甲斐だ。その為に犠牲にして来た物もたくさんある。キッドにとっての鈴木さんはオレにとっての仕事だ。」
『でもジャイ!オレはやらなきゃならない事がある!姉ちゃんの足が動かなくなっても、鈴木さんをどん底に突き落としても、仲間が死のうと進まなきゃ行けない!背負ってるんだ。みんなの未来をオレ1人で。背負っちまった。優先順位があるんだ。オレはみんなを救い、ジュンとマイミの結婚式に出ないとオレの人生は終わらない。だから殺人をして、みんなを救えないなら必ず殺人はしない。』
「おまえ変わったやつだな。」
『ジャイ自分が死ぬ所をみた事あるか?』
「ある訳ないだろ。」
『オレは、ある。あるんだ!自分が飛び降りる瞬間を客観的に、そして、仲間が撃たれて死ぬ現場、仲間が自殺する姿、その仲間達がみんな狂っていく未来を見たんだ、、、、。地獄だったぞ、、、。そして自分のせいで姉ちゃんが足を動けなくなり泣く姿、大好きな鈴木さんに訳も言えず罵声を吐き続け発狂する姿、自分のせいで刺される昔の彼女の姿もなんとか泣きながら越えて来た。だからジャイ、殺すとか、自殺するとか言うなよなんて事は言わないけど、オレが、過去に来てるの知ってる1号なんだからさ、そんな事考えるくらいなら、半分背負ってくんねーか?一緒に!
オレは越えるには越えて来たが、もう2回も自殺してんだわ!その度、仲間に救われ、神様に救われ、異世界に救われ、鈴木さんに救われ、でもまだまだ弱いんだわ!すぐ泣くんだわ!半分とは言わねーから、ちょっとお互い一緒に歩こうぜ、何かの縁だろ?』
「キッドおまえ壮絶過ぎるな。こう言っちゃ悪いけど自分より辛いやつみると、救われるって言うけど、おまえより辛いやついんのかよ?」
『わかんねー。でもオレの周りにいるやつは必ず最後ハッピーエンドになるって神様に言われたんだ!未来を見せてくれた神様が言うんだから、間違いないはず!ジャイおまえもオレの側にいたらどうだ、、、?』
「ハッピーエンドか、、、。オレをはめたやつを殺さない未来か、、、、。まだわかんねーな。そんな先のことは、、、。」
…やっぱりダメか、、。
…話してなんとかなるもんじゃないよな心の傷なんて、、、。
「でも、キッド、おまえは医師として見過ごせない!」
『ジャイ、、、。』
「とりあえず、人殺しは後回しだ。おまえとの、未来ゲームに飽きたらな、、、。それまでは付き合ってやるよ。」
『ジャイ!』
「ああ。一緒にやるか?人殺したいなんて、忘れるくらい楽しませてくれるんだろうな?」
『ああ!もしかしたら泣いてばかりかもしんないけどな!』
「まぁ殺す事ばかり考えるよりはいいかもな!今のオレはオレから医療の道を遠ざけた奴を殺す事しか考えてなかった。モンスター斬る時もそいつを斬る練習だと思って斬って来た。神様は人殺しの練習させてくれて、なんて有難いと思っていたんだがな。」
『病んでるなー。』
「ははは。キッドに言われたくはないな。」
初めて2人で笑った。
笑った瞬間心が通じ合った気がした。
「じゃあ組むかオレと。」
『よろしく頼む。』
「よろしく頼むと言いたい所だが、じゃあもう1つ頼みがある!」
『どうした?』
「オレな今謹慎中で、殺す事ばかり、恨みばかりから逃げる為に酒飲みすぎて、アルコール依存症なんだ。薬物とか、ハーブはやってない!それは絶対だ!1回でもやったら、一生我慢しなきゃいけなくなるのはわかってるからな!とはいえ、アルコール漬け状態だから、無理矢理にでも外に連れ出して貰えないか?今の人間界だと、寝ても覚めても酒、酒だ!まともにシラフで話せるのは異世界だけだ。このままだと、謹慎が覚めても病院に戻れそうも無い!不思議な場所だなここは絶対言いたくない事すら話しやすい。本当に不思議な場所だ。」
『分かった!まかせろ!場所はどこだ?』
ジャイが住所を読み上げた。
『そんな長い住所わかんねーよ。でも思ったよりは近いな!駅8個くらいか?』
「そこの駅降りたら、1番高さが高い高層マンションの最上階に来てくれ、暗所番号は、これだ!部屋のロックは暗証番号+水道メーターの脇に鍵が隠してある!今の人間界のオレは常に酒で、よく覚えてない!頼んでいいか、、?」
『大丈夫だ。この異世界が終わったら、行く!』
「じゃあよろしく頼む。改めてだが、オレが決めた名前じゃないがジャイロ本名は神取 誠だ。」
『キッド!木戸貴光だ。よろしく。』
2人は握手した。
『なぁ、こうやって、前いた世界のジャイも、オレじゃないキッドってやつと握手したのかな?』
「まぁ可能性あるな。仲間になるべくしてなった感じはするから。」
『運命なんて大嫌いだと思ってたけど、運命って不思議だな。』
「話してるだけで、異世界が終わっちまうぜ。」
『確かに。とりあえずオレの村行かないか?お互い違う村に転生されたら面倒だし。』
「じゃあ、村に行くまで、この異世界の話をしてくれよ。オレなんもわかんないからさ。」
『わかった。』
オレとジャイは話をしながら、シンの村に向かった。
昨日も今日も、不思議に思った事が1つ、異世界に魔族の気配がまだ無い事だ。
プレイヤーにしか装備してないマップ情報に、星が光らない!
それはまだ会ってないだけか、どうかはわからないが、今日は魔族村にいく暇もないので確認の取りようがなく、
また今度見にいく事にした。
でも、今日はジャイという仲間が出来ただけでも大収穫と言える!
…人間界に戻ってからが、忙しそうだな!
話しながらそんな事を思いながら、
村に戻り、異世界の2日目が終了した。




