55話(3/15挿し絵追加)
2013年 2月15日 AM2:00
異世界 1日目。
転生されたのは。シンの村の方だった。
…本当に来ちまった。
…腕が骨じゃねー!人間の腕だすげー!引っ張っても取れねー!
何より不思議だったのは、プレイヤーになり、ここに転生されると、今まで人間界で、悩んでいた事がなんでだろうと思うくらい気持ちが軽くなっていた。プレイヤー独特の感情なのかもしれない。
周りを見渡すと大体30人くらいのプレイヤーがいる。
誰1人、ここの状況を把握してる人間はいない感じだった。
…なんだここを理解してるのはオレだけなのか?
とりあえず誰とも話さず、無人道具屋に入ってみた。
…ここがジュンが言ってた所だな。おっ!
そこには体重計らしき物があった。
…ジュンがレベル3で、レイとケンスケがレベル18だっけか?
…じゃあオレは?
飛び乗ってみた。
〜〜〜〜〜
キッド
細剣型プレイヤー。
レベル11
次のレベルまで、472
好きなもの、
バイクに乗って先頭を走りながら後ろを気にしてる自分。正義。平和。仲間愛。キス。
嫌いなもの、
木戸貴光、バレンタイン、女子、運命、真実、ゆでたまご、ほうれん草
スキル残数 0
〜〜〜〜〜〜〜
…めっちゃ正確に出んだなこれ。
…スキル残0?
…これか?
貰ったカバンにはR4とR96のスキルの本がしっかり入っていた。
…そうか。スキルだけはあの時から引き継いでるのか?
…そのうち必ず使うって言ってたな、青神様が。この本だけは、大事にしないとな。
…それにしても、プレイヤーってこんな強い状態からスタートすんのかよ。
…反則だな。
…とりあえず、買い物すまそう。
腰についていた宝石袋を開けてみると
そこそこ入っていた。
オレは安い細剣と、HPカプセルと、会話スキルの本に、初期魔法の本を、買い宝石は空になった。
『よし買ったな。』
…とりあえず店出る前に魔法だけでも覚えとくか?
魔法の本を開いてみた。
しかし何も起こらない。
…なんでだ?そうか、、。青魔族の頃覚えてたからか?
…ははーん!もう、覚えてんだろ?
オレは満を持して道具屋を出た。
何をしていいかわからないプレイヤーがみんな。オレを見てる。
『おめーら!何していいかわかんねんだろ?今から魔法見せてやっからちょっと集まれよ!!』
まるでオレが大道芸人になった気分だ。
ぞろぞろ集まってくる。
『おー!来たな!じゃあ今から手から氷出してやっからな』
何が始まるのって感じでみんなが注目していた。
手に精神を集中する。
昔魔法の本を読んだ時みたいに感覚を思い出していた。
…見て度肝抜かすがいい!
『ファイアー!』
言葉だけが虚しく響き、
みんなの視線が刺さるようだ。
視線が痛く。手から氷じゃなくて、
顔から火が出そうだ。
『あれっおかしいな!ちょっと待て!もう一回な。ファイアー!!』
刺さる様な氷は出ず、
出るのはみんなから、ヤベー超痛い奴来た!の刺さるような視線だけだった。
『ちょっと待て、みんな!お前!』
オレは1番前にいた男のプレイヤーを前に連れて来た。
「なんですか?」
『いいから、コレ開いて読んでみ!』
いかにも魔法を使いそうな格好をしたやつだった!
そいつが魔法の本を開く!
「なんか頭の中にイメージが流れて来ます。」
『だろ!なんのイメージだ?それ?』
「雷ですかね?」
『そのイメージのまま、なんか叫んで、あの噴水みたいな池に雷打ってみ!』
「サンダー!」
【ズダーン!】
「おーー!すげーー!!」
みんなが凄いビックリしている!
雷がちゃんと落ちた。
「すごいですね。まるで、、、」
『ちょっと待てーー!おまえそれ以上しゃべるなよ!いいかみんなよく聞け!おまえらここに来る時緑色の月と話して来たろ?オレは3時間みっちり話して来たんだ!詳しく!だから知ってた。ここは心に傷を持ったやつしかいねー!ここでうまくやりたければ、そこらへんには触れない事だ。そしてモンスターを狩る事で、その傷は癒えるらしい!じゃまたな!』
…あぶねーまた調子乗ってドジ踏むとこだった!
…まるでって聞くと心臓がドキッとする。
…早く森に行こう!
オレは足早に森に向かって行った。
後ろでは全員が無人道具屋にダッシュして行っていた。
そりゃ雷やらが出せるのを目の前でみたら誰でも使ってみたくなる。
オレの方はと言うとついさっきまで泣きながら吐いていた人間とは思えないくらい普通だった。
…異世界だと普通だけど、人間界帰っても、この感じがいいな。
…多分異世界にいる間だけはどんな泣きたい気分でも、気持ちが穏やかになるのかな?だから、立ち直れるきっかけになるのかもしんないな。
…違う事に気持ちを向けるってよく言うもんな。
…普通はそんな時そんな違う方向けないはずなんだけど、異世界に強制的に来る事によって、その嫌な現実から目をそらす事が目的で異世界があるのかもしんないな。
…でも人間界ではまた吐くのかな?
…きっと思い出すんだろうな。
…そうならないように、出来るだけたくさん狩っておこう!
…そして、オレだけ異世界を知ってるって事は、またさっきみたいにボロが出やすい!
…つるむのはやめよう!誰だかわからないやつに未来から来たのかなんて言われたら最悪だ。
…1人でいいや異世界は。
…でもな、こんな傷ついた心の傷持ってないと、異世界にこれないんだぞ!
…レイもケンスケもセシルさんも、はい!助けて欲しい命は助けました。でも異世界には行きたいです。なんて、無理だわ!絶対!
…あの3人は未来で異世界に来れない可能性があるな。
…レイ、ケンスケもそこそこ強いけどなセシルさんがかなり強いから勝てた的な所があるからな。
…3人が、抜けてグロックを倒せるのか本当に。
…ってか、セシルさんが異世界に来ないとひょっとして、ユイ、カナ、ミズーに、補助魔法3人組も、一緒に行動しない事になんのか?
…じゃあぜってー勝てねーじゃん!
…なんだまたその日が近づくと、あの絶対的選択肢が来るのかよ。
…その選択肢は必ず選ばなきゃいけない方法が決まってんだよな!
…マジつれーんだよな、、、。
『はぁ。』
ため息をついても落ち込むような感情にあまりならない。
魔族とプレイヤーの違いがよくわかる。
常にそばで誰かがいて、暖かく励まされてる感じとでもいった所か。
プレイヤーにならないとわからない感情だった。
…とりあえず考えても始まらないな!今は自分が立ち直る様にいっぱいモンスターを倒しておこう。
…もう目をつぶった時にあの顔と、あの発狂した声が聞こえるのだけは本当にキツイし辛い。
…このレベルだと、グロック村から魔族村に行く途中にあるモンスター広場!あそこなら死なないだろ!
『じゃ1狩り行きますか』
走って、その場所まで向かった。
これがプレイヤーになって初日の出来事。
この異世界自体、実は今日が初日だった。
そう、この異世界は
2013年2月15日に出来たのだ。
そう、このプレイヤーとして転生されたオレが異世界でやらなきゃいけない事、その意味を
まだこの時の1人ぼっちのオレは知らない。