47話
教室について普通に授業が始まった。
鈴木さんが、休み時間の度に2組に、遊びに行っていた。
なんの為に行っているか、光も響も知らない。
というか、2組に行ってることすら知らないはずだ。
鈴木さんは学校では頭がよく、先生から色々頼まれる忙しい人で有名だから。
そして、3時間目の休み時間に鈴木さんに呼ばれた。
光と響には職員室にオレと鈴木さんとで受験の事で呼ばれたって事にして、2人で2組に顔を出した。
もう、オレと鈴木さんが一緒にいても不思議に思う人もいない。
あれから6年の生徒全員がオレと鈴木さんが付き合っている事を知ってる状況になり、それでも2人堂々としていたから、それに触発されて、告白とかした人もいたようだ。
小学6年のみんなが持っている、恋愛しちゃいけないのかな?って感情を、
オレら2人が、中学2年レベルの好きなら付き合って当たり前なんだよ!ってとこまで底上げしたと言ってもいい。
次第にうちらを茶化す生徒はいなくなって、みんながいいなって、目で見るように変わっていき、
鈴木さんには女子が、
オレには男子の生徒が
恋愛の相談に来るようになっていた。
『シオンヌ。どうだ?』
「多分話せそうな気がしない。無理だ。昨日家で練習したんだ。小学生最後だから自分で伝えようって、でも無理だ!顔を見ると言葉が出ない!ましてや朝あんな事を言われたんだ!私の中で緊張のハードルは余計高くなった。無理だから、手紙に、名前付きで下駄箱に入れて、帰ろうと思う。」
『馬鹿か!おまえは!』
オレはシオンヌの机を両手で叩いた!
ざわざわしていた教室がオレの言葉と行動に
一瞬にして試験の面接会場のような張り詰めた空気の空間に変わり、
みんながこっちをみていた。
『シオンヌおまえは、そこが苦手な人間として生まれてきたんだ。
人間誰でも得手不得手がある。シオンヌはスポーツが万能だし、他の女より度胸もある!
でも恋愛だけが極端に消極的に生まれてきただけなんだ。
そりゃ、告白してふられたら傷つくし、悲しいさ!
でも、光が、あんなにも、シオンヌを受け入れる準備が出来ているって朝言ってるんじゃないか!
テレビでも最近よく言ってるだろ?
いつやるか?今でしょ!って!
今神様がシオンヌに変わる為にくれた最高のチャンスじゃないか!
シオンヌは勇気を持って、うちらの仲間入りをした!
凄いじゃないか?自分から1歩踏み出して自分から光に近づいて来た!
で、みんなを通して光とも少しずつ話をして来た!
シオンヌ!みんな今日の日の為じゃないのかよ?
いつか、恋愛をシオンヌも重ねるうちに普通に彼氏と話せるようになるんだ!
そうして、その好きな人の前に立った緊張も、多分いろんな経験をし、そうしてそのうち治る。
そういうもんだろ?普通。
でも治った時に自分の人生を振り返った時に、今日の1日を悔やむ日がきっと来る!
あの日光が待っていてくれたのに、私は意気地がなくて、手紙入りチョコしか下駄箱に入れる事しか出来なかったって。
あの時、私が告白していたらどうなっていたんだろって思う日がさ。
自分が、その時に立ち向かわなかった事を後悔する日がきっと来るんだぜ!
オレだって寺島に絶対勝てると思ってあの場所に行った訳じゃない!
立ち向かわなくてはいけない日は人それぞれ日にちは違うけど、必ず来るんだ!
オレは、シオンヌ!それは今日しか無いと思う!
小学生だからなんて、思うな!
小学生だって、中学生だって、人生は普通1回しか無いんだ!
だったら、悔いのない道に進んだ方がいい!辛ければオレも鈴木さんも側で助ける!
仲間だろ?友達だろ?』
「でも、木戸どうしたらいい、私は。」
『オレに作戦がある!シオンヌが素の姿で話せるいい作戦が!』
「木戸おまえいい奴だな。鈴木さんが惚れるのもなんとなくだがわかる気がする。木戸はこんな情熱的なやつだったのか?」
『前な、ジュンって友達がいたんだ。そいつはいろんな逆境の中、必死で立ち向かい仲間を助けながら進んでいったすげー奴でな。魔族一家もそいつが、昔つけた名前なんだ。オレはずっとそいつの背中を見て来たからな。』
「そいつは今は友達じゃないのか?」
『そんな事はないが、今は連絡が取れない遠くにいるんだ!』
「じゃあその人が木戸君の人生の先生だね。」
『まぁ、そうなるかな。かなり影響を受けた事は間違いない!』
「私の先生の先生になる訳かな?」
『鈴木さん!オレなんか先生になったら世も末だぞ!』
「ははは。いいなっ2人は。私も2人みたいに光と話がしてみたい!木戸!その案話してくれ。頑張ってみようと思う。」
『シオンヌそう言うの待ってたぜ!』
オレは自分の案を鈴木さんとシオンヌに話した。
シオンヌもこれなら、いけるかもしれないと言っていた。
鈴木さんも今日はシオンヌをバックアップするって言ってた。
『よし!そういう事だから、男子共はまかせろ!』
「じゃ、詩音さんまたね。」
「頼んだぞ2人とも。」
そういうと、オレと鈴木さんは廊下に出た。
オレはそのまま自分の1組に戻る予定だったが、入る前に後ろから服を引っ張られた。
『どうした?鈴木さん。』
「あのね木戸君。お母さんが再婚する人の事で、相談があるの。放課後少し時間いいかな?」
『わかった。じゃあ光をうまく終わらせてから少し話をして、それから、2人が初めてキスした場所に入試の結果の封筒持って集合って流れで今日はいいかな?』
「それで大丈夫。」
『1つずつ確実に終わらせよう。まずは光だな。』
「そうだね。頑張ろうね。」
オレと鈴木さんは自分のクラスに戻った!
…ここからがオレの芝居の見せ所だな。
『光!明日オレ用事あるからさ、兎小屋の掃除の日の金曜日だけど、掃除出来ないからさ、悪いんだけど今日一緒に、前倒しで掃除してくんね?』
「いいよ。でも下駄箱にチョコ入れてくれた人がわかったら、放課後その人に想いを伝えてからになるけどいいかな?」
『もちろん!』
「タカも響もそうなったらついて来てくれるよね?」
「もちろんだぜ!」
『今更聞くなよ!』
「みんながいて、心強いよ本当。」
【キンコンカンコーン】
そして4時間目の授業が始まった。
もうすぐ、光が待ちに待った昼休みがやって来る。