25話
『今日はとりあえず帰ろう。これ以上探しても無駄っぽいし。』
「明日には普通に出て来てるといいね。」
『光!休み時間全部潰れちゃってごめんな!』
そんな話をしてるとこに帰る用意が終わった響が合流して来た。
「どうする?この後も探すか?」
『いやー。いいや!今日は帰ろう!これ以上はもうしょうがない!』
オレら3人は、玄関の下駄箱ロッカーに向かって歩いていた。
そのはるか後ろから黙って、鈴木さんが来ていたのもわかっていた!
『オイオイ!マジかこれ?』
その言葉に、響と光が近寄って来た。
『無ぇ!オレのナイキの靴が!無ぇ』
朝通学して来た靴すら帰りには無くなっていた。
「タカ本当?」
「最悪だな!」
『間違いなく、意図的にオレを狙ってやがる!気に入ってたのに!』
「やっぱりちょっと探して帰ろう!オレ用事あるけど45分くらいは大丈夫だから。ちょっとオレ家近いから、すぐ上履き取って来る。最悪無くても、スリッパで帰る訳には行かないっしょ?」
そういうと、光が靴に履き替え、ダッシュで、でてった。
…光、、。
「もう中には無いだろ!ホイ!」
響が、自分の上履きを渡して来た。
「とりあえず、校庭側探すならスリッパじゃ危ないだろ?」
…響、、。
『ありがとう、、。響。もうちょっと付き合って貰っていいか?』
「もちろん!」
鈴木さんは下駄箱には来ず職員室の方に歩いて行った。
…鈴木さんなんか先生に用かな?
オレは響と、うだるような暑い校庭に出た!
『あるかな?』
「見つけてやるぜ!」
『参謀の光がいたらどこから、探したらいいとか勘がいい事わかるんだけどな?』
「タカ!オレら2人は体力しか能がない人間だから、動くしかないって!」
『だな!』
とりあえず、うさぎ小屋の方面から探した。
その後、光が上履きを持って来てくれて、1時間探したが結局見つからなかった。
光が言った焼却炉の側に捨てられてるんではないかとの案も、
焼却炉の山のように積まれたゴミ袋をどかして見てみたが、結局無かった。
『だめかぁ』
「無いねぇ!」
「なんだよ!全くひどい事する奴がいるもんだな!」
『まったくだ!1人でいるとイライラするから一緒に帰ろうぜ。』
「帰ろう帰ろう。」
そのまま、靴は見つからず3人で帰った。
…母ちゃん怒るかな、、。
…ってか、話しづらいよな。
いつの時代も仲間に支えられてる気がする帰り道だった。
家に帰り、勉強をしていたら、ハルねぇと母ちゃんが一緒に帰って来た。
「タカーいるー?」
下からお呼びだ。
まぁ玄関に知らない上履きがあって、外履き用の靴がなければそりゃ呼ばれるだろう。
『今行くー。』
オレは別にこういうのを言うのはあまり、躊躇したりという、感情は無いけど、せっかく買って貰った物が無くなってしまったことは申し訳なく思う。
「タカ!お母さんが、上履きでどうしたのだって」
母ちゃんは早速台所で、夜ご飯の用意を始めていて、ハルねぇは食器などの用意をしていた。
『母ちゃん!靴が無くなった!』
「そう。じゃあ明日私のパート先の奴買って来るわね。」
『上履きも無くなった!でも光の貰ったけど』
「じゃあ上履きも買わなきゃね。」
「お母さん!これイジメか嫌がらせだって!!絶対!!」
ハルねぇがオレの為に声を荒げていた。
ちょっと意外だった。
「遥。こんな事は必ずあるの!生きてれば。見てみなさい貴光を!まだ大丈夫そうでしょ。遥だって今まではこんな事は無かったかもしれないけど、1人暮らししてからこんな事があったら大丈夫?お母さんは貴光より、遥の方が心配だわ。貴光、靴の事は気にしなくていいから、負けるんじゃないわよ。あなたには仲間がいるし、彼女もいるんでしょ?どうしてもお母さんの協力が欲しければ言って来なさい。貴光あなたまだ大丈夫でしょ。」
『母ちゃんもちろんだ!心は折れてない。』
「さすがそれでこそ、お父さんの子供!まぁ遥こんなものよ。みんないろんな経験して大人になるの。それを全部親がやっていたら何もわからないまま大人になるのよ!貴光はまだ大丈夫!目がまだ死んでないもの。本当に辛い時はそんな話すら自分から出来ないから。」
「そういうもんなのかな?タカホントに大丈夫なの?」
『あー!。メンタルは大丈夫だけど。せっかく母ちゃんに買って貰った靴だから、申し訳なくて。』
「いいのよ。気にしなくて。お母さんはその言葉が聞けただけで、充分。明日の登校する時は靴無いけど、明日買って帰って来るから気にしないで待ってなさい。」
『母ちゃんごめんな。』
「もうちょっとで今ご飯できるからそのまま食べましょみんなで。」
ご飯が出来るまでに風呂に入り、3人で食卓でいつも通りご飯を食べて、部屋に戻った。
その後勉強をしようとしていたら、
【コンコンコン】
「タカ入っていい?」
『いいよ』
「おっ!今日も勉強。毎日偉いね。恋ってすごいねー」
『ハルねぇ。わざわざそんな事いいに来たのかよ。』
「いや、あの靴の話なんだけど。」
オレは勉強のペンを上げハルねぇの方を向いた。
「あれ誰かが嫉妬してない?タカと鈴木さんが付き合って、毎日一緒に勉強したり、図書館で勉強したり、手を繋いだりしてるからじゃない?」
『ハルねぇ。なんで手繋いでるの知ってんの?』
「いやいや、帰り道私の部屋から小さい双眼鏡で見てると途中から繋いで鈴木さんの家まで送るじゃない?だって見えてるし。双眼鏡なくてもみえそうだけど。まぁ、そんな話は置いといて、それをよく思わない人がいたりするんじゃない?タカの周りに。」
…オレだけに嫌がらせするって事は。
…オレ以外に鈴木さんの事が好きな人か?
その時、ピンと何かが閃くように、うさぎ小屋掃除の時の映像が脳にフィードバックして来た!
『いるかもしんない!』
「そいつだよ!間違いない!恋は怖いんだよ。周りが見えなくなって、殺しとかしちゃうから。よくテレビでやってるでしょ。不倫相手刺しちゃうみたいな、ドラマみたいの。だから気をつけないと。」
『よく気がついたね!ハルねぇ!グッジョブだわ!』
「だてに少女漫画読んでないからね。でも少女漫画はもっとドロドロに酷かったりするけど。」
『でもやつがやったって証拠が無いしな!』
「そこはどうしようもないわね。しかも、今日やって明日もやるようなバカはいないでしょ。でも気にしてみといた方がいいと思うよ。」
『ハルねぇ。サンキュー。』
「なんか私最近お姉さんらしい事してるような気がするね。ははは。」
『助かるよ!』
「じゃあまたなんかあったら言いなさいよ。」
そう言うと出てった。
…3組の学級委員、寺島か?
…あいつも頭いいって噂だよな。
…頭がいいやつがこんな事すんのか?
…じゃあ尚更、明日は何もなさそうだな、シッポを出すのはいつ頃になるか?
椅子をグラグラバランスをとりながらひたすらペン回しをしながら寺島の事を考えていた。
…長期戦になりそうだな。
…ったく、人生必ずしがらみがついてまわりやがる!
…世の中には、1年悩みもないやつもいるっていうのに、
…全く不公平だ!
とりあえずどうしようか、考えていた。
その考えは、光、響に相談出来ない点だ。
それはオレと、鈴木さんが付き合っている事を誰にも言ってないから、
寺島が、なぜオレに嫉妬するか、あの2人からしたらわからないし、
その話を相談したら、オレと鈴木さんが付き合っているのが、バレてしまう。
別にオレ的には構わない!
なんて事もない!
ただ優等生の鈴木さんから、したら、あんな馬鹿と付き合って、頭おかしいんじゃないの?とか、
今までの築きあげてきた鈴木さんがオレのせいで崩れてしまう気がする。
母ちゃんも言ってた。
あなたのレベルに、鈴木さんを引き下げちゃダメよ。あなたが鈴木さんの足を引っ張ったり、悪い事を教えたらしちゃダメだからね。
それは充分気にしていた事だから。
オレが成績を上げるために鈴木さんを下げさせちゃ絶対いけないと思っていたし、
オレと付き合っている時に、鈴木さんに何か迷惑をかけたくない。
これはもうちょっとしたオレのトラウマみたいな物だ!
かと言って何か名案も出ないまま、今日が終わっていった。