22話
オレの家に向かいながら色々話をしていた。
『ねぇ、鈴木さんってさ、オレからみたら完璧っぽいんだけど、何を変わる必要があるの?』
「私ね、、、、、、、。」
自転車を押しながら歩くオレ。
普通に歩く鈴木さん。
その鈴木さんが遠くを見て話し出す。
「私怒った事が無い人間なの。」
『えっ?』
「怒る感情が無いわけじゃないんだけど、それを人にぶつけた事が無いの。お母さんに人に嫌われる人間になっちゃダメだって小さい頃から言われて来て、怒るって行為は人に好かれて行く上でいらない行為だって言われて来たから。」
『そうなんだ。』
「だから、いずれ自分の意見を言えるように、学級委員になったの。でも本気で怒る事ってあまり、今まで生きて来てなかったかな?あまり友達もいなかったし、お母さんに怒る事もなかったし。ははは。そんな感じ。木戸君はあるの?怒る事とか。」
『あったよ。未だに絶対許せないやつが2人いる!』
「木戸君、、、。顔が怖い。」
『あっ!ごめん。忘れて、、、。』
「なんか悩みとかあるなら私に言ってね。ちゃんと聞くよ。」
『わかった。話が出来るようになったら話すよ!』
オレの家に着いた。
『ちょっとチャリ置いて来るから待ってて。』
「うん。わかった。」
チャリ置いて返ってきたら、鈴木さんが誰かオレの家の方に手を振っていた。
『んっ?ハルねぇか?』
「あの人お姉さんなんだ。木戸君の。」
2階からハルねぇがうちらに手を振っていた。
…ハルねぇなんか楽しそうだな。
『鈴木さん恥ずかしいから、早く行こう!』
鈴木さんがハルねぇに会釈してオレの家を後にした。
「優しそうなお姉さんだね。」
『でもたまにキレるよ!』
「姉弟って感じでいいな。」
『そうか?』
鈴木さんが隣に来て腕をツンツン突いている。
『どうした?』
手のひらを、前に出して何かオレにサインを出している感じだった。
…手を繋ごうって事かな。
オレは黙ってその手を握った。
「さすが、木戸君、、、。」
『、、、、、、おう。』
手を繋ぐ事により、少しの間2人から会話が消えた。
2人、手を繋いだ夕日のシチュエーションが2人の気持ちを加速させる。
何も話さない時間が1秒1秒すぎる度にお互いの好きの想いが手を通じて点滴の様にオレの想いは鈴木さんに、鈴木さんの想いはオレに流れて来てる気がした。
そのシチュエーション効果か、
大胆にもギュッギュッと2回手を強く握られた。
同じく握られた回数分ギュッと握って返してみた。
「なんか、恥ずかしいね。」
『だな。』
「なんか恋人みたいだね」
『だな。』
「、、、、、、、、、、。」
『、、、、、、、、、、。』
しばらく手を繋いだまま歩いた後だった。
「私ね昨日木戸君が会いにきて、帰り際に手を握られてから、ずっと勉強が頭に入らなくて、、、。気がつくと木戸君の事ばかり考えてた。」
『そう?』
「勉強なんか答えが一つしかない物でしょ?こういうのって無限に解答があるんだなって木戸君が会いに来てくれてから本当思う。こう言ったら喜んでくれるかな?こうしたら、喜んでくれるかな?こう話したら嬉しい返答が返ってくるかな?色々考えたりするんだよ。でも全然違う。その違う、間違う事もそれが本当楽しいの最近。手を前に出しただけで、木戸君が握ってくれる。あってる事も全部楽しい。
そんな些細なこと、たった一つだけど、テストで、100点のテスト100回取るより嬉しいなんて知らなかったよ。木戸君。」
オレはその言葉が嬉しくて
手を繋いだまま、手を引っ張り
鈴木さんを抱き寄せた。
『こうしたかったからこうした。』
「ほら。やっぱり木戸君はいつも、私の考えてる以上のドキドキを、くれる。木戸君私ねずっと好きでした。1年半前からずっと木戸君が好き。もっと早くお話したいと思ってた。」
『鈴木さん。オレも一緒にいたいと思う。あの時は酷い事言ってごめん。でもオレも大事にしたい。鈴木さん今は大好き。』
「木戸君。あの小説の中みたいに、私にキスして。」
オレは田んぼ道の真ん中で、このやり直し人生で初めてキスをした。
「頭がクラクラするね。」
『体が熱いな。』
「木戸君ずっと一緒にいたいよ。さっきの図書館で読んでた小説のヒロインになったみたい。私が今小説の中にいるみたい。楽しい。生きてる事全てが楽しいな木戸君。」
『オレもだ。鈴木さん。オレはあの小説の話の彼氏とは違う!病気になろうが、何があっても、そばにいて貰う。2人の意思じゃこの愛は終わらない、終わせるのは時間だけだな。』
「なんで木戸君。いつもテスト0点ばかりなのに、なんでこんなカッコイイと思って、こんなに惹かれるのかわからないよ。私に持ってない物沢山持ってるからかな?」
『オレなんかなんも無いよ!勉強も出来ないし、失敗ばかりの人生にそれでも頑張ってるんだ。鈴木さんとの出会いはオレの新しい人生で正解であって欲しい!』
「今幸せな気分だよね?」
『もちろんだ!』
「私も木戸君もこの気分になれたんだから、正解で間違いないんだよ。」
『そうだな。』
「私の恋愛と人生の先生だね。木戸君は。」
『いつまでも続けばいいな鈴木さん。』
「私忘れない。今日のキスを。2人に偽りの無い今日のキスを死ぬまで忘れないよ。」
『オレもだ、鈴木さん。誓うよ。』
「私も誓うよ。」
今ならわかる完全にわかる。
ジュンとマイミの気持ちが、
こんなに人を好きになったのは初めてかもしれない。
優子ともキスもした。SEXもした。
違う女の子ともキスもしたし、SEXもした。
好きだとも言った。
好きになるのに、思いの強さがあるなんて、知らなかった。
あの時はあれだけの好きだったのか?
でも優子を、好きだった自分に嘘は無い!
だってあの時は好きだった。
たのしかった。
でも今回は、なんか違う!
なんだか言葉で表現は出来ないが、運命的な物を感じる。
この鈴木さんに。
この人しかいないと、なんでかわからないけど、そう思う。
一生に一度の恋愛があるなら、この恋愛しかあり得ない!
オレはこの人の為なら笑って、
腹を斬れる!
そんな気がした。
だから、マイミとジュンの2人が2人を思う気持ちが痛い程わかる。
…オレも幸せになって、
…ジュンとマイミも幸せになって欲しいな。
「木戸君。帰ろうか?」
『おう!帰ろう。』
…よし、オレから手を出して手を繋いで貰おう。
『「はい!」』
手を出す瞬間とコメントがシンクロしまさかの2人同時だった。
『同じタイミングかよ。』
「木戸君のそういう私の想いを裏切らないとこが好き。」
『じゃあ繋ぐ?』
「いいよ。」
『行こうか?』
「うん。」
…鈴木さん。かなり大胆だったな。
…もっと、頭がいいから奥手なのかと思ってた。
…今の小学6年の女子ってすげーな。
…この頃のオレなんか男友達と遊ぶことしか考えてなかった気がする。
…鈴木さんがいろんな小説読んでるせいで進んでるのかな?
…頭がいいせいか、話していて、小学生って感じがしないんだよな!
…響や光とかすげー小学生って感じがするんだけど。
…小学6年で小説みたいにキスしてなんて言うか?普通。
…もう!めっちゃかわいいじゃねーか?オレの彼女。
…しかも頭も良くて非の打ち所がない!
…かわいいじゃねーかもう!!
歩きながらいきなりホッペにキスしてみた。
「キャッ。何?木戸君。」
『いや、可愛かったからキスしてみた。』
「そういうの反則だよ。嬉しいけど。ふふふ。」
…年上の余裕ってやつだな。
…実はドキドキしていて、あまり余裕なんて無いけど
オレは手を繋ぎ鈴木さんを家に送り届けた。
次の日も図書館デートの約束をした。
平日は学校ではあまり話をするのはやめようという約束もした。
そして、平日は行ける方のお互いの家で勉強しようと決まった。
その後、家に帰り、勉強はしないで1日を終えた。
オレは前の人生で酷い事を言った女の子が、やり直しの人生では正式な彼女となる自分の人生を選んだ。