18話
行きは走っていった道のりを倍の時間をかけて、帰って来た。
…さて、勉強するか?
と教科書を開いてみるが
勉強をした事がほとんどない人間が、勉強に奮起した所で、
どう勉強していいかわからない。
免許を取った時も、みんなの時系列もほぼ暗記だった。
だから、勉強するとなった所でどうやるかよくわからない。
とりあえず小学3年生の算数ドリルを引っ張りだして来てみた。
…まさかな。
…小学3年生だからな。
…オレ高1だぞ。
さて解いてみるとする。
流石に0点という事はなかった!
が、100点ということもなかった。
65点といった所か。
…ここらへんからやり直すのか?
小学3年生からの4年分の勉強を6ヶ月でやり、1月末の試験に望まなければならない。
…とりあえず小学3年生を100点に持っていこう!
…いきなり小学6年で100点は無理だ!
…出来る事からコツコツとやるんだ!
オレは机に向かった。
【ガラガラガラガラ】
「ただいまー。」
ハルねぇの帰宅だ。
…どうせ昨日のエロ本事件で、まだ怒っているんだろうから、いいや!
…オレは自分のやるべき事をやるだけだ!
オレは返事もしないで、ひたすら勉強を続けた。
ハルねぇはオレの部屋に来ることも無く、時間は1時間、2時間と過ぎていった。
ちょうど集中力も切れた18:30
【ガラガラガラガラ】
「貴光ー。遥ー。ただいまー。」
母ちゃんがパートから帰って来た。
『おかえりー。』
2階から返事をした。
その途端。オレの部屋の扉が開いた。
【ガラガラガラガラ】
「あんたいたの?」
ハルねぇだった。
『あーいたよ!ずっといたけど。』
「また部屋でそういう本でも読んでたんでしょ?」
『ちげーし!これだよ!』
オレは算数ドリルを取ってハルねぇに投げた。
「わっちょっと、、。何これ?小学3年生の算数ドリル?タカ何やってんの?」
『オレ0点ばっかだからさ、どこから、理解できてないかわからないから、とりあえず小学3年生からやり直してみたんだけど、なかなか難しな!』
「いや!私がいう何やってるのは、小学3年生とかじゃなくて、何勉強してるのって意味。」
『ハルねぇ聞いたら笑うだろ?』
「あまりにも酷い返答じゃなければ笑わないけど、、。」
『母ちゃんに言わないでくれるか?』
「わかった。言わない。」
『オレ弁護士になりたいんだ!だから進学校に行って人生を変えたい!』
「ハハハハハハハハハハ。あれっ?なんで真面目な顔なの?えっ?ウソでしょ?そういうフリじゃないの?」
『いや、マジ!』
「、、、、、、、、。いや普通に考えて無理だと思うけど。」
『オレもそう思う。今日も理科のテスト0点だったし。』
沈黙な時間が流れた
「真面目なら、真面目に聞くけど、なんで弁護士?」
『このまま、あの中学に行きたく無い!人生を変えてみたい!色々母ちゃんに迷惑かけたし、、、。悲しむ顔見たくないし、、。』
「悲しむ顔も、迷惑も小学6年のあんたじゃ、たかが知れてるでしょ。」
『そうなんだけど、そうじゃないんだよ!』
「何それ?まあいんじゃない?頭は悪いより、良いに越したことはないから。本気なら、たまに勉強みてあげよっか?」
『マジかハルねぇ!』
「別に構わないけど、遊びや、3日坊主なら、教えないけど真面目なら、わからない所くらいなら教えてあげてもいっかな?」
『助かる!ハルねぇ!昨日は色々悪かった!マジ頼むわ!』
「別にいいよ!昨日は、ちょっとビックリしただけだから。タカ下にご飯食べに行こ。お母さん帰って来てるから。私ご飯炊いといたから。」
『さすがー!!』
「でしょー!!!」
意外な話から普通に仲直りしてしまった。
理解してくれたって事でいいのだろうか?
オレとハルねぇは1階に下りた。
『母ちゃん!飯出来た?』
「もうすぐ出来るわよ。その前に貴光これ!」
母ちゃんのパートに持っていくバックから、プリントが出て来た。
『母ちゃん!これって!?』
「これは流石に貴光に渡さない訳にはいかないでしょう。」
母ちゃんから貰ったプリントには、
オレがビリビリに破いたテストがセロハンテープで貼り付けられており、
その上にルーズリーフがホッチキスで貼り付けられており、
どこがどうして違うのか赤ペンで事細かく書かれていた。
『鈴木さん、、、、。』
胸が熱くなるのがわかった。
昨日の11月の大好きの言葉を聞いたより、
このテスト1枚の方がオレの胸に突き刺さった!
「貴光。あんた鈴木さんが、このテスト持って来てるの知ってるのかい?」
『あー!知ってる。』
「もう何年も持って来てくれてるんだよ。」
『そーなのか?それは知らなかった。鈴木さんやっぱすげーいいやつだな!母ちゃん悪い、帰ったらご飯食べるから取っといてくれ!会ってくる!』
「行っておいで。」
『あぁ。』
オレはポケットにテストを入れて家を出た。
「いいねぇ。貴光も青春だねぇ。ついこないだまで女の子に興味ない感じだったのにねぇ。」
「お母さんタカってモテるの?」
「その子だけよ。ずっとテスト拾って私のパート先に届けてくれるのは。」
「お母さんその人ってどんな子なの?」
「貴光とは正反対みたいな、凄いおとなしい感じで、頭良さそうな女の子よ。」
「あー!なるほど!それで小学3年ドリルなんだ。」
「遥、どうしたの?」
「いやいや、なんでもない。、、、。ちょっと協力してあげよっかな?かわいい弟の恋の為に」
「遥なんか言った?」
「あっ!お母さん、独り言独り言。」
家を出て物置に入り、まだハンドルが絞られてないチャリを出して、鈴木さんの家にダッシュした。