9話(3/7挿し絵追加)
「はーい。あら鈴木さん。どうしたの?」
「木戸君に、渡さなきゃいけないプリントと、宿題を教えに来ました。」
「ちょっと貴光ー。鈴木さんが来てるわよー。」
『最初の会話から聞こえてるよ。ちょっと待って。』
オレは靴下を履きながら
この鈴木さんって人の事を思い出していた。
…誰だっけ?
…わかんねー。でもなんかあったな。昔鈴木さんって人と。
オレは結局思い出せないまま玄関に向かった。
『おう!お待たせ。』
「木戸君いきなり、帰っちゃうから、どうしたの?」
…知ってる!
…オレの記憶に、こいついる!
…いる!いる!
…小学生の最後のバレンタインに、オレにチョコレートくれながら告白して来たやつだ。
…確か、オレあの時あんま女の子に興味無いし、全然オレとタイプ違うから、気持ちわりーんだよ。メガネブスとか言ったんだ!
…なんだ、オレ優子の前にも女の子に酷い事してたんだな。
…一生懸命告白して来た相手にメガネブスとかは無いよな。無いわー!
…自分の言葉に自分でマジひくわー。
『あっーーー!!マジ酷い!。』
「ちょっと木戸君。」
「貴光?どうしたの?やっぱり今日あんた変よ。」
『鈴木さん。家どっちだっけ?』
「反対方向だけど、、、。」
『母ちゃんオレ送って来るわ!』
「はいはい。いってらっしゃい。鈴木さんいつもありがとうね。」
…いつもありがとうなんだ。
…いつも鈴木さんが来てくれていたのか?全然気にしてないから知らなかったな。
「ちょっと、、いいよ、、別に、、送るなんて、、、」
『オレが送りたいんだ。それに話もしたいし。』
「そうなの、、?」
『ちょっとチャリ持って来るから待ってて。』
オレはチャリを取りに行くと、
カマキリハンドルの自転車のハンドルが絞られ、
リアの荷台はカチ上げられていて、
ハンドルにはパフパフのラッパが付いていた。
『ははは。マジどんなセンスだよ!』
チャリを見ながら昔を思い出していた。
『やったなーこれ!単車に憧れて、ハンドルは鉄パイプ入れてハンドル絞って、なかなか右と左がおんなじ位に曲がらなくて、原チャリが羽カチ上げてんの見て、チャリのキャリアカチ上げて、乗ってた、乗ってたわ!おもしれーな小学生の頃のオレ!でも自分でやった事だから、共感できるんだよな!ははは。あっ!やべー鈴木さん待ってるんだった。』
『わりぃ!チャリ人乗れなかった。』
「そう。それなら、私は帰るね。」
オレは鈴木さんの前に大の字で立ちはだかった。
『ダメだ!今日は送っていく。そう決めた。』
「どうして?いつも、私の事迷惑そうにしてるじゃない?」
『いつもって言うほど話もしてなかったろ?』
「そうだけど、、。」
『今日はちょっと話がしたいんだ。』
鈴木さんがちょっと困ったような顔をしたまま、少し下を向いていた。
「おーい!タカ!家の前でなに、女の子泣かせでるんだ?」
『泣いてねーし。』
「あんたなんか口が悪くなったね。どうしたん?」
『色々ある年頃って事にしといてくれ。』
「お母さん中にいる?」
『あー!母ちゃんオレが、学校さぼったせいで、パート早く上がって、学校に呼び出されたから、もう家にいるよ』
「タカあんた最近不良に憧れてるの、薄々わかってたけど、お母さんに迷惑かけちゃだめでしょ!」
『わかってる!』
「わかってればいいや。どっかいくの?」
『彼女を家まで送ってくる。』
ビックリして、鈴木さんと、遥姉さんがこっちを見てる。
…んっ?なんか変な事言ったか?
「あんた、彼女出来たの?」
『違う!そういう!彼女!じゃない!よくナンパする時に言うだろヘイ彼女!の彼女だよ。』
「あんたナンパするの?」
『しねーし。しねーだろ!小学生で、ナンパして、茶店でも行ったらおかしいだろ!』
「茶店?なんかあんた今日変!」
…またそれか。
…母ちゃんにも言われたな。
『そんな事ねーよ。早く家行けよ。』
「誰だかわからないけど、タカと仲良くしてやってね。」
「はいっ。」
「お母さーん。タカが頭おかしくなったよー!」
ハルねぇが家に入って言った。
「お母さんもそれ思ったけど、元々頭悪かったからね貴光は、これ以上悪くならないと思ってたんだけどね。」
『聞こえてっからー!全部聞こえてっから!』
「貴光!聞こえるように話してるのよー!」
『あー!そうかい!』
「ふふふ。」
『ははは。変な家族だろ?』
「木戸君のさっきあの人お姉さん?」
『あー!遥姉さん。ハルねぇ中学2年生だ。』
「そうなんだ。木戸君の所も、お母さんだけだったよね。」
『鈴木さんもだっけ?』
「そう。お母さんと2人暮らし。」
『そうか、、。とりあえず立ち話もここじゃなんだから、とりあえず行こうか?』
「うん。」
2人は鈴木さんの家に向かい歩き出す。
こうして、初日から、過去は改変されていった。