4.2話
「おぃ!げんぞー!ヤツ連れてきてるか?」
「ハイ!来てます!ここに。」
「おまえ毎日毎日よく来るなぁ。ドMかおまえ?ハーハッハ。」
何かシンがボソボソ話している。
「あー?なんか文句あんのか?あんならでっけー声で言ってみろ。」
「ブツブツブツブツ、、、。」
「小さくて聞こえねんだよ。おまえそれでも人間か?』
『ブツブツブツブツ、、、」
「あーもういいや、金出せ!」
「ブツブツブツブツ、、。」
「おめーさっきからオレの悪口言ってんだろ?」
「ブツブツブツブツ、、、。」
なんだかもう見ていたくなかった。
と言うか、見ていられなかった。
『谷口先輩。オレちょっと具合わるいんで、先、ちょっと失礼します。』
「なんだジュンこう。これから面白く、なるのに。わかったオレのかわいい舎弟よ。また明日な。」
そう言うと振り返った。
振り返る瞬間、シンはオレをじっと見ていた。
…あいつ助けてくれっていいたかったのかな?
…今振り返り、先輩を止めれれば、、。
…止めれれば、、。
そんな考えとは逆に、足は、一歩一歩、
振り返った先へ、進んでいく。
「おーっと、シン!帰っていいのは、ジュンこうだけだ。おめぇは逃げる元気が、あるんだなじゃ、もうちっと付き合えや」
「ぐふっ!」
背中越しに拳で殴る音と、
シンらしき人が倒れこむ音が聞こえる。
「ブツブツブツブツ、、、。」
…シン、、、。
「だからさっきから何言ってるんだ、ってんだろーがよ。」
【ドゴッ!】
「ゴホッゴホッ。」
倒れこんだシンに蹴りが入った音だろうか?
下を向いた、、、。
涙がでそうだ。
オレのせいで、シンはイジメの対象になった。
こうなったのは弱いあいつが悪いと、そう自分に言い聞かせて来ていた、、。
でも異世界に行き、惨殺されて、
考えが揺らぎつつあった。
それでも救えない。
だってオレは、弱い、また、中学みたいにオレが標的にされる。
いまなら、やる側で
自分には被害はないから、、。
「た、たす、け、て、、、。」
シンのかすれた悲鳴が聞こえた。
聞こえないフリをした。
自分がやられるより、人がやられるのを黙ってみてるのも結構辛い。
聞こえないフリをしても涙がこぼれる。
オレにはシンの気持ちがわかるから。
それでも、助けてと言うたびに後ろで殴られる音がする。
涙ぐんでいたら谷口先輩に誤解される。
イジメが嫌いな人間なんだと
誤解され、
またあの時みたいに、もどってしまう。
もう聞いていられなかった。
その悲鳴が苦しくて、
あの助けてがオレに向けられている気がして、
耐えられなかった。
オレは走った。
また逃げたのだ。
いつも自分より強い相手には真っ向から
戦おうともせず、逃げてきた。
…シン、、。すまん。
…何も出来なくて、すまん。
…まだ、何も変わってなくて、すまん。
走って逃げてしまった。
オレは弱い人間で
家でひたすらキワパンを極めようとして、パンチを打ち込んで練習を繰り返した、あの頃から、何一つ変わってない。
キワパンは強いやつを成敗するために、
ずっと練習したはずが、
結局、強いやつには通じず、
自分より弱いやつにしか使えていない。
どどのつまり、中学の頃と何も変わってなかった。
結局
やられる側からやる側に回っても
何一つ幸せなんて、あるわけなかった。
自分が強くいられる時は自分より弱い奴の前だけだった。
帰ってきて、ベッドに横たわり、今までの思い出したくもない、
過去の記憶が走馬灯のように駆け巡り、
その回想に、心が押しつぶされそうになっていた。
オレは
考えてないように考えてないように、
耳を塞ぎ、目をつぶっていたら、
いつの間にか寝ていた。