5話
『みんな、クリアクリアといっても、このスキルは今から何かする訳じゃないんだ。
このスキルは、人間界で、使うと過去に戻れるスキルみたいだ。
R4は4時間
R96 は4日
R2976 は4ヶ月
R35064 は4年だ。
使えるのはどれか3つまで、4つ目を使うと、一生、異世界から帰れなくなるらしい。』
『4日を使えばじゃあ、キッドが過去に行って、ジュン君とケンスケを、救えるの?』
「でも、それのどこが異世界をクリアできるスキルなのだ?ぶはっはっは!」
『あー!マイミ!多分それは可能だ。このスキルは使った人間が、クリア出来るように出来ているらしい。』
「どういうこと?」
『異世界をクリアするんじゃなくて、異世界に来なくするスキルだと思ってくれ、なんか傷を持ってみんな、異世界に来たんだろ?4年前に戻ってその傷を解消したら、みんな異世界に来なくなるだろ?そしたら、トラウマは消えて、ここで過ごすみんなとの思い出も、自然と消える。そういう事だ。異世界に来なくてすむようになる事でクリアしたのと同じという解釈のスキルらしい。さてみんなはどうする?』
『私は異世界のみんなとの記憶は無くしたくない。私は異世界で救われたから、もし、やり直しが出来て、腕が車にひかれない未来があるとしても、腕が動かなくても、いいから、みんなと一緒にいたい。ジュン君に出会いたい。』
マイがジュンを、救いたいが為に熱く語っていた。
だが、人は三者三様過去はそれぞれ違う。
レイがそれに、反論するように話し出す。
「すまないマイ、私は違う。私は異世界に来なくてもいいから、救って欲しい命がある!」
意見が真っ二つにわれた。
みんなが、黙ってる!
『レイ以外に異世界に来なくてもいいから、4年以内で救って欲しい人はいるか?』
ほぼ全員でマイとシン以外が手を上げた
『全員があげたら、誰も異世界に来なくなっちゃうだろ?それはオレらの思い出を捨ててでも救わなきゃいけない過去か?ここに来て、救われたやつもいるんだろ?生きてりゃ、いじめだって、いやがらせだってある、それにあって、異世界に来て、今よくなって、楽しい今があるんじゃねーの?そんなやつらは、ここで痛みから立ち直るきっかけを貰って、前より強くなったんじゃねーのか?オレが言ってるのはそうじゃない!もっとオレらを殺してでもトラウマを、解消して欲しいやつはいるのか
って聞いてる!オレらはジュンと、ケンスケを救いにここに来たんだろ?』
それでも3人が手を上げた。
レイ、ケンスケ、セシル隊長、だった。
『わかった。オレらを殺してでも救って欲しいなら、その3人!みんなの前でそれを話せるか?』
3人がみんなで目を合わせて、誰から言う?みたいにアイコンタクトしていた。
真っ先に立ち上がったのが、セシル隊長だった。
「聞いても多分私の話は面白い話なんて何もないけどいいのでしょうか?でも救って貰えるなら聞いて欲しいみんなに。話すのも実は初めてなんです。人間界の話なんで人間界の口調で話しますね。」
『大丈夫です。私も聞きますし、みんながついてます。』
マイミがセシルさんに語りかけた。
「わかりました。あれは、私が3年前の事です。
私には妻と娘がいました。
娘の名前はユイと言います。」
みんながユイを見た。
「ははは。そのユイとは別人です。私は今の会社ではちょっとした役職をしています。
仕事は好きではありませんが、入社して、ちょっとずつ、出世する度に色々仕事を任されるようになり、日に日に帰る時間も、遅くなって行きました。遅くなれば、もちろん給料は増えていきました。
でも増える給料とは逆に、家族の会話は減っていきました。
私は、みんなの為にもっとお金を稼げば喜んでくれて、昔のように仲良いように戻れるのではと思い必死に仕事をしました。
上司にけなされても、家族の為にと苦しみは家には持ち帰らず、必死に仕事ばかり頑張りました。
でも、夜11時以降帰る私に一緒に食べる家族なんている訳ない。
毎日、作ってある夜ごはんを1人でチンして食べる生活が続き、
初めは愛妻弁当だった弁当は、机に千円札が置かれるようになりました。
なんの為に働いているんだろうか?
そう考える日々が続くようになりました。そんな事を家族に相談する事も出来ず、もちろん会社の人間にも言えず働く日々が続き、
私は新しいスマホを作る企画に携わり、これがうまくいけば、出世間違いなしと言う企画で死にものぐるいで働き、
ついに私は会社で、倒れました。
そして、初めて会社を早退して、家にかえったら、家に知らない男の車と、私にみせないような笑顔の妻がいて家の前で抱き合ってました。
私はその時どうしていいかわからなかった。
今出ていけば、離婚になり、娘も離れて行くと思いました。
この時が、だいたい4年前で、まだ娘が12歳でした。
私は、仕事しかなかったから、
馬鹿な私は自分の妻を見て見ぬふりをして体を引きずり会社に戻りました。
私にはもう仕事しか無くなりました。
家に帰っても妻とも会話がない、
私が朝出勤する時には娘は寝ていて、帰ってくる時間にも、もう寝ています。
もはや、そんなのが何年も続いていたので何を話していいかわかりませんでした。
いつのまにか、家族の為にしていた
仕事が自分の支えになっていきました。
そして娘が中学になって、ずっと話しをしてなかった娘が私にライブがあって、時間に遅れそうだから、駅まで送って欲しいと言ってきました。
嬉しかった。
どんな理由でも、久しぶりに話せて、一緒に、駅までいけるなんて、
そう思い、車に乗り、娘を後部座席に乗せ、駅まで15分のドライブが始まりました。
始めは無言でした。
そんな時娘が一言。お父さんって私達家族の事嫌いだよね。
そう言われました。
初めて家族にそう思われている事に気が付きました。
そんな事ないよ。と言いましたが全く信用してくれませんでした。
私はその駅まで送る最中、信号で右折で止まってる状態で左側から信号無視のトラックに突っ込まれました。
私はその事故で、4日意識を失い、5日目に奇跡的に意識を回復しました。
その時には、もう娘の姿は無く、埋葬も終わり、すでに妻が位牌を持って、横にいる状態でした。
もしかしたら、後ろでシートベルトさえつけていれば、死なずにすんでいたかもしれません。
まさか、トラックが左側から突っ込んでくるなんて思わないですし、
今まで会話出来ていなかった娘との、見送りですから、舞い上がっていたのかもしれません。
警察は私達に非はないと言ってくれました。
少し経って保険金も、下りました。
非はないと言われても、お金が入ってきても、ユイは帰らない、、。
ユイは死んで、この世にはもういないはずなのに、毎日、毎日、夢に出てきてユイが言うんです!
「お父さんって私達家族の事嫌いだよね」
って、毎日、毎日です。
毎日私が殺した事の懺悔の念から朝が始まる日々が続きました。
殺した事の懺悔から、
時期に髪は白髪が急激に増えていきました。
食欲も減って行きました。
生きがいの仕事も行けなくなり、休職中になりました。
結局、妻も私に愛想を尽かし実家に戻っていきました。
ただ、何をするでも無く、息をするだけそんな生活の中で、神に祈りました。
何もいらない!ユイに会いたい。
それを祈り続けたある日私は、
ユイがお父さんって私達家族の事嫌いだよねって言わない変な夢を見ました。
それがこの異世界の始まりでした。
隣には今そこに座っている!ユイが居て、ユイと声をかけてしまったから、彼女の名前はユイになったんです。
別にユイでいい!って言ってくれて、
それから、2人で狩りに行きました。
少し前向きになれた気がして楽しかった。まるで、娘と話しているようで、無くした時間を取り戻すように、狩りを楽しみました。
そして異世界に来てから、ユイの夢は見なくなりました。
そして、カナ、ミズー、魔法使い3人組などもどんどん仲間になりました。
ただ楽しかった。
私もだから、異世界でかなり、救われた口の人間です。大分笑えるようになりました。仕事も少しずつですが、出られるようになって来ました。
そうは、なって来ましたが、元気でいられる、本気で笑えるのは異世界ばかりで、人間界に戻り、遺影をみると、自分の殺してしまった事実の現実にうちのめされるのが実情なんです。
家庭を修復したいなんて、贅沢はいいません。
みんなが口を聞いてくれなくなったのは私の責任です。私が仕事にかまけて、家族をないがしろにした結果ですから、
でも、、、ただ、娘の命だけはどうか、、どうか、、お願いします。」
異世界だから、色んな心の傷持ちが集まるのはわかるけど、実際に聞くと強烈だった。
オレが腹切った過去に負けじを取らない壮絶な過去だ。
「セシル隊長、、、。」
「ユイ、、。今まで娘として見て接していてすまなかった。娘じゃないとはわかってるんだ。わかってるけど、娘と一緒にいると思うとなんか心が凄く楽で、私の傷の為に利用していたと言われたら、返す言葉もない。でもユイやみんながいたから救われたのも事実なんだ。だから、私は本当のユイも救って欲しいが、異世界にも必ず戻って来たい!そう思ってます。」
「セシル隊長、、。ユイも実は言って、なかったんけど、ママが再婚した、義理の父親の暴力と、いつも浴びせられる酷い言葉にトラウマがあって、まぁ、それは今も継続中な、悩みなんだけどぉ、セシル隊長や、みんなと冒険出来るとストレスを発散出来て、楽しくて。セシル隊長って前のパパに似てて最近は、前のパパと一緒に暮らしたいとセシル隊長とあって、一緒に冒険して、思うようになった。ママは嫌いじゃないけど、ママはユイより、再婚した相手が好きだから、今の父親がユイに嫌なことしたり、言ったりしてるのは知ってると思う。思うけどママは自分が嫌われたくないから、助けてくれない。だからユイの居場所は家に無くて、本当のパパのとこにおしかけたら迷惑かなって思っていたから、迷っていたけど、異世界に来て、決心が出来たんだよ。だから、セシル隊長にはまた異世界に来てもらわないとユイが困るよ。」
…みんな色々持ってるな、、、。
…一緒にいて、モンスターと戦ってる時はそんな感じは微塵も感じないし、あんなに笑えるのに、みんなやっぱり、抱えてるんだな!
…本当生きていくって楽じゃねー!
…こうなって欲しいと思って動いても、逆の結果になる事だって多々ある。
…生きていくって、そういう痛みに耐えていく事なのかな?
…生きてりゃ必ず障害の壁にぶち当たる!
…その障害の壁は人それぞれ高さが違い、1人で頑張って乗り越えていく人、
壁を乗り越える為に、他に登る手段を用意する人、
そこで立ち止まり、誰かに助けを求める人、
壁を見上げ、その場でずっと見上げたまま、呆然としてる人、
壁を見ないふりして、Uターンして、違う道を探す人、
まぁ本当人それぞれだろう。
何が正解なんてのは、わからないけど、自分の考え取った行動に対して道が出来る事は変わりない。
壁を越えてる時、振り返る暇なんてないはずだけど、
いずれ、どの選択かは人によるが、その選択により、進んだ先で、いずれこの壁を振り返えれた人は、その選択肢は間違えてなかったとみんな思うんだきっと。
でも、その壁の前でどうしようもなく、もがいている人間が今、目の前に3人いる!その3人がもがきながらみんな手を伸ばしている。
そんな中オレだけが、空を飛べる翼を、持ってるんだ。
いいのかわからない。
この3人を救い、未来が変わりジュンが救えるかどうか?
わからない。
でも、ジュンもみんな救いたい!
そう言って来たリーダーだからな!
助けられるなら救わないと。
『わかった、、、。なんとかしよう!出来るかわからないけど。レイ達も聞いていいか?』
「構わない!その変わり必ず救って貰えるか?」
『レイ!出来る限り努力する。』
セシルさんに続き、次はレイが語り出す