13.45話
矢が一斉に落とし穴の先の煙の向こうに飛んでいく。
「オイ!しっかりしろ!チッ!あのクソ魔族供!」
グロック達の仲間の声が聞こえる!
『第2波 矢込めろ!』
「オラーーー!!」
グロック達の移動スピードが上がった。
こちらが臨戦態勢な事に気がついたのだろう。
うちらの撃ったボーガンがどれだけの被害を与えたかは煙玉の煙で、わからない。
『ミッキー、カナ、アキねぇ来るぞ!魔法用意!!』
グロック達の姿が見えた!
「なんだこりゃー」
煙の先に落とし穴があるとは誰も思わなかったようだ。
『カズキ何人落ちてる!』
「6〜7人!!」
『充分だ、アキねぇありったけの雷!カナ!一発必中ボム見せてやれ』
「ハー!」
「エィ!」
【ズダン!】
【ドゴーーン!!!!!!】
巨大な落とし穴が、ミッキーのアルティメットボムで更に巨大な穴になった。
まだ穴からの煙がモクモク上がって、中の様子は伺えない!
考える暇もなく、敵が落とし穴を迂回して来る!!
ひと息つく暇も無い!
『みんな第2波構えろ!ミッキー用意だ!』
プレイヤー7人くらいが見えた!
『ミッキーありったけで凍らせろ!』
「ハー!!」
【パキパキパキパキ】
「なんだ?こいつら、全員武装してるじゃねーか。グロック!これじゃ話が、、。」
『全員第2波 撃て!確実に狙え!』
「ギャー!」
「ギャー!」
煙玉の煙が消え、
アルティメットボム!の煙も空に消えていき、やがて、視界が見えるようになって来た。
『カズキ、どうだ見えるか?』
「ジュン!穴の中には人はいない!いないぞ!ざっとだが、残り6人だ!」
『みんな行けるぞ!近接戦闘用意だ!武器を持て!』
「黙れー!アホ供!!何がいけるって?あー?」
グロックだ!
もはや人ではない!馬に近いモンスター化していた。
『みんな矢構えろ!』
「だから何がいけるって?えー?」
グロックの空の一振りの風圧で、
砂煙が舞う。
近くにいたら風圧で吹っ飛んでいるだろう。
…強い強いとは聞いていたがこれ程か。
『みんな怯むな!第3波撃てー!』
各方向から、グロックに向かい雨が降るごとく、矢が放たれる。
「こんなんで、オレが殺れると思ったか?バカ供!しゃらくせー!ハー」
右手は剣の風圧で、左手からは強烈な火炎魔法でグロックに飛んで行ったボーガンの矢が跡形もなく、消え去る。
「いいか?魔族供よく聞け!どうせ、おまえらは死ぬ!ただし、今日に限り、自分の仲間1人殺したら今後一切そいつはオレ達の仲間だと認め今後殺さないでおいてやる!
この中に毎日死にたくない奴はいないか?」
村がザワザワしている。
…この野郎!せっかくみんなの士気をあげて、心1つに纏めてここまで来たのに!ここで、内部分裂したら、何もかもおしまいだ。
『みんなこんなやつの言う事を信じちゃダメだ!こいつは後で必ず裏切り殺す!そんな奴だ!』
「1日でなんでこうも変わるかと思っていたら、おまえが首謀者か?あっ?よく見たらこないだ、土下座したゴブリンだろ!おまえ!
こりゃ!傑作だ!
よく聞けこのバカ供!こいつは自分が助かりたいだけで、オレに土下座して来た、ただの偽善者だ!
よく見てみろ自分だけ攻撃されないように、後ろで座ってるだけじゃねーか?いいかおまえら、こいつは、自分は最低限のリスクで、おまえらを上手く使い、オレを倒そうとしてる、ただの嘘つき偽善者だ!!」
『違う!!断じて自分の為じゃない!!オレはみんなが安泰に過ごせる異世界を、、、。』
「じゃあ、おまえそういうなら、なんで後ろで踏ん反りかえって座ってる?あー?またオレに殺されるのが怖いだけだろ?
死ぬ事をこの青魔族に押し付けて自分だけ、助かろうとしてるだけじゃねーのか?おぃ!
クソ魔族供よく聞け、赤魔族ってやつは、殺人に手を染めたやつが罪を償う為になるって知ってるか?
おまえらの後ろで踏ん反りかえってるこのゴブリンは、人殺しだ!
だから、平気でおまえらを見殺しに出来るんだ!!
わかったか、、このアホ供!
おまえら自殺者で弱いからこの殺人者に利用されてんだよ。
わかったら、仲間になりたいやつは、仲間早く殺してこっちに来い!今日から仲間にしてやる!!」
『このクソ野郎!!』
「抑えろジュン!おまえがそんなんじゃないのはうちらはわかってる!」
「そうだジュン!僕たちプレイヤーはみんなジュンを信用してる。」
『でもこのままじゃ、、、。』
そんな時立ち上がったのはマイだった!
『ジュン君はそんな人間じゃない!私も赤魔族!私が行けば魔族のみんなは納得できる!いや、多分私にしかできない!』
そう言うとみんなの前に歩いて行った。
「なんだ、最初の寝返り組か?ホラ誰か殺してみろ!仲間にしてやるぞ。」
『みんななんで、こんな奴に言われた事で迷ってんの!忘れたのあなた達はこいつに昨日殺されたんでしょ?
赤魔族が、殺人者?私だって昨日から、赤魔族になったんだから、そんな訳ないでしょ。
今まで一緒に目標持って引っ張ってくれる人がいたの?
後ろにいるだけって、あの人が後ろから、指示出してくれてるから、戦えてるんじゃない!
何を考えてるのみんな!
私は1人になっても戦う!
私は私の信じたものを信じる最後まで。』
「前に出て来て寝言は終わったか?魔族になり、モンスターの言葉がわかるようになったら、こんなバカな事言うやつしかいないのか?魔族というのは?」
『あんたなんか、ただ強さだけでみんなを従えてる裸の王様じゃない!私だって怒る時は怒るんだから!』
「遺言は終わった?」
『みんな見てなさいよ!通常痛覚の私だって戦えるんだから。エィ!』
一瞬!グロックの動きが止まる!
マイが腰から護身用ナイフで脇腹に突き刺した。
「オィ!ゴブリンが魔法使えるのは驚いたが、そんなナイフでオレに刺さるとでも思ったか?おぃ!」
グロックが振りかぶった
『やめろーーーー』
【グシャ!】
そんなオレの言葉など届かず
マイが宝石になった。
『きさまー!マイミになんてことしやがる!あいつは通常痛覚なんだぞ!』
『キッドー!はやまるな!やめろーー!!』
『よくもオレの仲間を!!グロック殺してやる!』
「たかが骨モンスターごときが殺すだって?やってみろ!」
キッドが1人腕を外し走って行った!
『キッドーー!やめろーー!!』
キッドが振りかぶった瞬間、グロックの左手から火炎魔法がキッドに向けて放たれた。
キッドがいなくなるまで一瞬だった!
『あの野郎!あの、あの野郎!!!絶対殺してやる!』
「待ってろジュン!あの2人の事は絶対無駄にしない!だからおまえはここで耐えろ、みんなに指示を出せるのはおまえしかいないんだ!!」
『カズキ、、。』
「ジュン!みんなジュンと同じ気持ちだから!」
『シン!』
その時だったオレ以外の叫び声を聞いたのは!
『みんな、あんなやつもう人間のやる事じゃない!僕は、あんな奴についていくなら死んだ方がいい!もう2度と負けない!人間界では負けたけど、心は折れない!マイミさんの死は無駄にしない!僕は1人でも行くぞー!』
それは昨日、1番怖がりだった青魔族のギルだった。
そのギルの奮起につられ青魔族のみんなも、奮起を取り戻し、大声をだして向かって行った。
『魔族のみんな、、、ありがとう。
マイ、おまえの言葉がみんなに届いたぞ、おまえの行動がみんなを動かしたんだ!馬鹿やろう、、、。
笑って帰ろうって、さっき約束したばっかで無理しやがって、、、。
キッドおまえも、馬鹿だ!仲間思い過ぎるだろ、、、。』
「バカ供が、自殺者らしく、大人しくしとけばいいものを!おぃ!おまえら見せてやれ!毎日モンスターを狩って来た実力の差を!プレイヤーは殺すなよ!プレイヤーは全員オレが殺す!いけおまえら!!」
『後衛近接組、出番だ!3対1バージョンで行くぞ!
手前の3人は雑魚じゃないが、魔族達の人数で押し切れるはずだ、
ずっとグロックの側にいた2人こいつらはヤバイ!
片方手に包帯巻いてるやつ!
こいつのスピードは、かなり速い!
もう片方は、シンと同じ魔法使いながら、剣も使う!
しかも魔力が半端ない!
前にオレは殺されるまでずっとストップ魔法をかけられて、息切れすらしてなかった!
そんなやつだ!
プレイヤーのみんなは、死んだら終わりだから、無理して倒せなんて言えないけど、
マイはついさっきオレと付き合うようになったオレの生まれて初めての彼女なんだ!
彼女が目の前で殺されたんだ。
今どれだけオレがあいつを殺してやりたいか、、。
その気持ちをみんなに、託す!
オレはここから、みんなに指示しか出せない、、、。出せないけど、みんな頼む!よろしくお願いします』
「ジュン!僕が異世界で強くなっていたのは今日の為かもしれない。」
「必ず殺してきてやっから!待ってろジュン」
「ジュン、、。私が彼氏目の前で殺されたら、あんたみたいにもう立ち上がれないよ多分!あんたの分までシンとカズキと一緒にやってきてあげるから!」
「セシル組も気持ちは同じです。マイミさんは勇敢でした。あの人がいたから、今みんなが戦ってる!あの子の思いを、私達も繋いでいかないと!」
『みんな頼んだぞ!』
「行くぞーー!!目にもの見せてやるぞ!」
みんなが、剣を抜き敵に向けて走って行った。
オレはグロックに怒鳴った!
『よく聞けグロック!オレがここにいるのは、オレがここにいた方がおまえを殺す確率が少しでも上がるからだ!オレはおまえを殺す為にここにいるんだ!』
「ゴブリンごときが笑わせる!
オレの仲間を全員倒したら相手してやる!ここまで来てみろ!」
戦争は肉弾戦の中盤に入った!