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あと30分で世界が終わる時の事

作者: しいか

【あと30分で世界が終わる時の事】


 突然ですが、この世界はあと30分で終了します。

 そんなことをいわれた、深夜1:30。

 残された時間は30分。

 あなたの30分はどんなだろう?


 まぁ、想像でしかないんだけど。


 ボクは家から外に向かうでもなく、

 ネットやテレビの中継を見るでもなく、

 友達に電話をかけたりするでもなく、


 こうして『新しいテキスト』を開くことにした。


 今、外は驚くほど静かで、

 でもたぶんそれは、ボクの家の回りが静かなだけで、

 遠い町の、

 渋谷とか新宿とか、そういったどこかは、きっととってもうるさいんだろうと思う。


 スマホとかの回線は、正月も真っ青なくらいパンパンで、

 だから本当に誰かに会いたくて仕方ない誰かは、声を聴きたくて仕方ない誰かは、走ると思うんだ。

 パジャマかもしれない。

 脱ぎかけのスーツかもしれない。

 別に、服なんかなんだっていい。

 靴だって、なんだっていい。

 外に出て、走るんだ。

 走ってると、たぶん聞こえてくる。

 いろんな声とか、音とか。

 見えるものもたくさんあると思う。

 例えば、なんだろう…

 ボクはきっと、泣きたくなるようなものがたくさん見えると思う。

 例えば、あと26分しかないのに殴りあってる奴らを見て泣くと思う。

 他には、残り26分を抱きしめあってる親子を見て泣くと思う。

 君なんかは、怒りたくなるようなものも見えるかもしれない。

 例えば宗教の勧誘とか、政府に文句をいうデモとか、ここぞとばかりに犯罪を犯す…なんてのもみえるかもしれない。


 でもね、

 走るんだよ。

 その誰かは。

 間に合うかもしれないんだもの。

 幸運にも。

 北海道と沖縄じゃ無理だけど、走れば間に合う位置にいるんだもん、会いたい人が。

 したら、走るでしょう。


 まぁ、もちろん想像でしかないんだよ。

 だってボクはこうしてテキストを埋めるのに一生懸命なんだから。

 残り23分しかないってのに、我が物顔でポップアップしてくるウィルスソフトとかにイライラしながら、それでも残り22分しかないんだぞ、って打ってるんだもの。


 これはきっと、最後の文章になるんだ。

 だから本当はもっと、構成にも言葉選びにもこだわりたいんだ。

 読み返す時間だって欲しいよ。だって、あと21分。


 だけど、そんな余裕ないんだよ。

 走ってる誰かが、普段なら助ける人を見捨てるように、

 走ってる誰かが、普段なら考えちゃうようなあれこれを頭から追いだして、

 せいぜい道を間違えちゃいけないからって、地図だけはその場その場で確認するように、

 ボクはテキストを打つことにしたんだよ。


 会いたい人なんていないけど、

 届けたい人はいたから。

 まぁ、想像でしかないんだけど。

 もしかしたら、残り19分の間、ボクの文字を読んでおきたい人が、更新ボタンを連打してるかもしれないじゃない?

 最後の最後にさ。

 おいしいものを食べるとか、

 お気に入りのマンガを読むとか、

 飼ってる猫と遊ぶとか、

 そういうなんか温まる何かなんかじゃなくてさ、

 ボタンを連打してるかもしれないじゃない?

 もしかしたら、

 そんな人いないかもしれないことなんて分かってるんだよ。

 だけどさ。

 ボクは打ってるだけだから、本当のところはどうかなんてぜんぜんわかんないんだけどさ。

 走ってる人だって、会えないかもしれない、なんてことは分かってると思うんだ。

 でも、走るでしょ?

 もしかしたら、すれ違うかもしれないよね。

 もしかしたら、向こうは会いたいなんて思ってないかもしれないよね。

 道路が壊れてるとか、

 途中でバールのようなものとかでぶん殴られるとか、

 もしかしたら30分じゃなくて15分とかで世界が終わっちゃうかもなんて考えるよね?

 まぁ、もし15分だったら、今この行を書いてる間に終わっちゃうんだけど、

 とにかく走るでしょ?

 走れよ、って思うでしょ?

 そして、できれば、30分丁度で会いたい人に会うじゃなくてさ。

 もう少しだけ早く辿りついてさ。

 ちょっとでいいんだ。

 辿りつくまでに考えたことをさ、

 走ってる間に考えたことをさ、

 あぁ、世界はもうあと13分で終わっちゃうんだけどさ、

 ボクは残りの13分を君に捧げるために来たんだよって、

 そういう時間が欲しいと思うんだ。


 まぁ、何度でもいうけど、ボクの想像なんだ。

 きっと明日になったらおかしいぐらいに爽やかな朝日が差し込んできて、ボクが打ったテキストなんて笑いものにされて、そういう明日がくるんだよ。

 だってこれはボクの想像なんだから。

 救急車のサイレンが鳴ってるけど、

 パトカーと消防車のサイレンとか、車の音とか聞こえて来てるけど、

 残り11分しかないんだけど、

 次の言葉を考えてるだけで1分経っちゃったけど、

 きっと、そういう明日が来るんだよ。


 ボクの想像なんだけど。


 残りは、10分を切ってしまったんだ。

 ごめんね、本当はこんなボクの文章を待ってくれてた人に、10分は捧げたかったんだけど。

 1分前までは連打してた人は、今はもう諦めてしまったかもしれないんだけど。

 これから、アップしようと思います。

 残りは8分で、

 たぶんこれをアップしようとしている間に6分とかになって、

 あなたがこの行を読むときには、残り3分とかになってて、

 なんだよ、これじゃあカップラーメン食いながらよむこともできねーじゃねーか、

 って笑いながら読んでくれたりするんじゃないかなって。

 思ってたんだけど、もうあと5分ぐらいしかないや。

 本当はもっといいセリフとか、胸を打つ言葉とか、そういうのを打ちたかったんだけど、

 まぁ、しょうがないや。

 それじゃぁ、そろそろ最後のセリフ。

 最後のセリフだけは、20分前から決めてたんだ。


 君だって、最後のセリフはこう締めるはず、って思ってただろ?


 『まぁ、全部、ボクの想像なんだけどさ』


 って。


 お読みいただきありがとうございます。

 自分で書いておいてなんですが、なんていうジャンルといわれるとよくわからないのですが、たまにこういう、誰かになっての手記というか日記というかみたいなのを書きたくなるので書いてみました。


 作中の時間ですが、実際に深夜1:30から書き始めて、実際にパソコンに表示されてる時間を見ながらリアルタイム? に時間を打ち込んでおります。


 たぶん、後で読み返したら『夜のテンションって怖いなぁ』と我ながら恐ろしく思うことでしょう。


 まぁ、想像でしかないんだけど。


 てな感じで、改めてありがとうございました。

 できればまた、別の物語で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 臨場感、というと語彙力がないことを痛感してしまうんですが、作品に流れる空気が、「想像」だけど「本当」にしてしまっているなと感じました。すごくひきこまれていて、読んでいるうちに、「連打していた…
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