表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルゴール  作者:
1/1

紅いオルゴール

ちょうど中学1年の頃だったと思います。私は彼のことが好きになりました。今までの恋は偽物なのではないかと思うくらいに彼が好きでした。彼は年が一つ上の男性で、顔が良いわけでもなく、悪いわけでもなく。性格は優しいけれどたまに私を虐めてくる少し変わった人でした。なぜ彼を好きになったのか私にも分かりません。ですが、たまに聞くような好きになった人と理想の人は違う、ということと同じなのでしょう。

しかし私は彼とはまだ一度もあったことがありませんでした。端末型の携帯を通して仲良くなったのです。恋というものは顔を合わせてはじめてするものだと私は思い込んでいましたし、今までもそうでした。彼の顔は画面を通して知りましたし、私の顔も同じです。ですがその顔を見て好きになったわけでもなく、普通に話しているうちに好きになっていました。彼の口調や好きなもの、趣味など全部が好きになりました。

ただ、時々私は彼を困らせました。私もどうにかしたいけれど、どうにもならなかったのです。それは俗に言う嫉妬というやつで、他の人と話しているだけ。他の人とちょっとふざけているだけ。そう頭では分かっているのにどうしても嫉妬してしまうのです。彼にも何度も直せと言われました。私も自分なりに努力して言われてから約2年ほど経ってやっと直すことができました。この時、私は高校三年生でした。

私が大学一年生になった時、彼の住んでいる所に行く機会があったので彼と会いました。この時はじめて画面を通して見ていた彼を間近で見ることができました。嬉しくてたまりませんでした。ずっと会いたかった彼に、はじめて会うことができたのです。まるで時が止まったかのような感覚で、心がふわふわと浮かんだような心地がしました。やっぱりこの人が好きなんだなーとその時、改めて思いました。

彼は私の用事が終わると住んでいる所を案内したり一緒に買い物をしたりしました。私がそこで見つけたオルゴールを彼は買ってくれました。曲名は分からないけれど、とても綺麗な曲が流れていて、素敵なオルゴールだったのです。紅色の、装飾が施されているわけでもないただの四角いオルゴール。それでも、綺麗な音で鳴っているそのオルゴールに目を奪われました。

彼にそれを買ってもらって色々な所を回った後、私は時間がなく、駅に向かい家に帰りました。駅で彼と別れると私は電車に長いこと揺られていました。その時も頭の中は彼の事ばかりで、幸せな心地がしました。

私は今でもそのオルゴールを聴いています。まだそのオルゴールはぱらりん、ぽろりんと素敵な音色を奏でています。彼とまた会う時まで、オルゴールは鳴り続けるのです。その思い出を忘れないように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ