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とある夏の日。

花神楽の、夏。


澄み切った青い空と白い雲が眩しい。

夏休み真っ只中の真昼間。


「メゾン・ド・リリー!見つけた!」


地図と睨めっこをしていたヨシノが顔をあげて一目不散に駈け出した。アスファルトに陽炎が立ち上る炎天下の中全力疾走する元気に私は溜息をついた。

こら、私達は花神楽にはじめて来るんだぞ。地図を持ったお前とはぐれてしまったら右も左も分からなってしまうじゃないか。

まったく、と、私と同じく溜息をついたユウがヨシノを追う。私もその後ろ姿を見失わないように小走りで追った。


「ここだ!」


こちらに一瞥する事なくヨシノはメゾン・ド・リリーの敷地内に入って行く。ユウがやれやれと肩を竦めた。

私達が門をくぐる頃には既にヨシノはアパートの二階に駆け上り目的地である部屋のインターホンを押している所だった。目を輝かせながらそわそわしている。久しぶりに会うのだもの、気が急いてしまうのは仕方ない事か。

しかし一向に扉が開く気配はない。


「留守、かな」


ヨシノに追い付いたユウがぽつりと呟く。

そういえば、事前にそちらに向かうと連絡なんてしようものなら絶対に逃げられるのがオチだから事前連絡はいれていないし今は夏休みだ。外出していてもおかしくはない。

ヨシノがもう一度インターホンを押す。

返事はない。

もう一度インターホンを押す。

扉が開く気配はない。

もう一度。もう一度。もう一度。


「ヨシノ、少し時間を置いてからまた」


来よう、と、ユウが提案しようとしたのだろうけれどその言葉は、勢いよく開け放たれた扉が扉の真ん前に立っていたヨシノの顔面に容赦なくぶち当たる音と、片手に鋏を携え立ち現われたその部屋の住人による「うるせええええ!!!!いつまでも鳴らしてんじゃねえよ殺すぞ!!!!」という怒号でかき消された。

なんだちゃんといるんじゃないか。居留守使ってやがったなコイツ。

ヨシノは後方に吹き飛ばされそうになる衝撃を踏ん張り耐え、怯む事なく鋏を掴む彼の手を自らの両手でがっしと包み込み笑顔を向け、再会を待ち望んでいた相手に浮かれ調子のまま告げた。


「くるちゃん!久しぶり!」


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