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リミットゾーン  作者: 金ボール
第二章 チェース・マンハッタン銀行強盗事件
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第九話:44オートマグ対44マグナム

 トミーは44オートマグの引き金を引いた。銃口はトニーの眉間に向いている。引き金を引かれてから、その銃弾を避けることは不可能だ。しかしトニーはわずかに頭を傾けた。すると弾丸は彼の後方にある木に外れ、何事もなかったかのように言った。


「無駄だと言っているだろトミー。薬物を摂取した俺に銃は効かねえ」

「銃が効かねえなら……これしかねえか!」


 叫び、トミーは44オートマグを仕舞いながら駆け出した。銃が駄目ならば接近戦で技をかけ、動けなくなった所で急所を撃てばいい。彼はそう判断したのだ。


「接近戦か……それも面白いな」


 トニーは銃をホルスターに収めた。間合いを詰めたトミーは首元めがけて回し蹴りを繰り出す。しかしトニーはそれを片腕で防ぐと、不気味な笑みを浮かばせながら肘打ちでトミーの頬を殴りつける。それだけでは終わらなかった。次々とトニーは二度、三度、渾身の一撃をその体に叩き込んだ。トニーは銃撃戦だけでなく、格闘技もプロレベルだったのだ。トミーを蹴り飛ばすと、彼は焦りながらもどこか余裕のある表情で叫んだ。


「ちょ、ちょっとタンマ! 今度50セントのドーナッツを奢ってやるからもう少し手加減してくれねえか! 砂糖もたっぷりかかってるぜ!?」

「ふざけた野郎だぜトミー。そろそろ決着をつけるか」


 言って、トニーは44マグナムを取り出した。


「だぁあああ待て、待てって。そんな危ないもん捨てようぜ! 殴り合いも面白そうって言ったろ!?」

「悪いが気が変わった。悪党は悪党らしくしねえとな」


 トニーの親指が44マグナムのハンマーを引き起こした。銃口はトミーに照準をつけている。そして引き金を引いた。

必死の思いで、咄嗟にトミーは駆け出し、弾丸を避けた。舌打ちをしながらトミーに再度狙いをつけ、44マグナムを連射する。だがトミーは紙一重でそれらを避け続けた。


「危ない! 危ないって! よして! やめてよォ!」


 叫びながら、トミーは木の陰へ隠れた。


「ちょこまかとうっとうしい野郎だ。だが次は外さねえぞ」


 呟き、素早く44マグナムのシリンダーを開け、空薬莢を捨てた。そして新たなパッケージを取り出して装填する。木の陰からそれを見たトミーは、44オートマグを取り出した。


「ふん……隠れたって無駄だぜトミー。木ごとぶち抜いてやる」


 言って、トミーが隠れた木に照準を合わせたその時、突如木の陰からトミーが飛び出してきたのだ。慌ててトニーはトミーに照準を合わせ、引き金を引いた。それとほぼ同時にトミーも引き金を引くと、セントラルパーク内に44マグナムと44オートマグの発砲音が響き渡った。


「うぉっ!?」


 突如、強烈な衝撃と共に44オートマグが手から弾かれた。慌ててトミーは44オートマグを拾い直そうととするも、トニーが放った44マグナムの弾によって撃ち抜かれており、使い物にならなくなっていた。

しかしそれはトミーだけではない。トニーが持っていた44マグナムも、トミーの44オートマグと同じように撃ち抜かれ、地面に落としていた。

奇跡としか言いようがない。二人が放った拳銃の弾は身体に被弾する事なく、まるで弾が吸い込まれていったかのように互いの銃を撃ち抜いたのだ。


「なんてこった……」

「相打ちとはな。俺の推測は間違っちゃいなかったぜトミー。ここまで俺を楽しませてくれるとはな。最高だよお前は」


 不気味な笑みを浮かばせながらそう呟き、地面に落ちた壊れた44マグナムを拾うと、現金が詰まっているバッグを持った。トミーは壊れた44オートマグを拾い、トニーに駆け寄る。


「おいおい何処へ行くんだ。まだ勝負は終わっちゃいないぜ」

「……悪いが時間切れだ」


 言ったその時、上空からヘリのローター音が聞こえ始めてきた。トミーは空を見上げると、そこにはヘリコプターが一台浮遊していたのだ。


「警察のヘリじゃねえ……お前の仲間か!」

「その通りだトミー。今ここで俺を捕まえるなら好きにすればいいが、ヘリに乗っている俺の仲間に撃ち殺されるだけだぜ」

「畜生……」


 武器も何も無いまま彼を拘束する事は不可能だった。結局、トミーは何も出来ないままヘリがセントラルパークに降下するのを見つめていた。ヘリが着地するとトニーは現金が詰まったバッグを持ち上げ、ヘリに乗り込む。そこでトニーは一度振り返り、覆面越しに笑みを浮かばせながら言った。


「感謝しろよトミー。俺をここまで楽しませてくれた礼だ。殺さずに生かしておいてやる」

「……それはありがたいがね、また会うかもしれねえんだ。その薄汚い覆面を外して、素顔くらいは見せてくれないかい」


 トニーはその言葉に反応し、被っていた覆面を取った。すると、素顔を見たトミーは驚きを隠せない様子でいた。彼こそはシカゴを牛耳るベルティーニ・ファミリーの幹部。凶悪犯指名手配犯リストのトップに指定されている男、トニー・カルヴィーノだったのだ。


「……トニー・カルヴィーノ。まさかアンタのような大物を相手にしてたとは思いもしなかったぜ」

「それはお互い様だトミー。ここまで俺を楽しませてくれるとは予想もしなかったな。お前こそ俺の宿敵に相応しい……」

「へっ。全米最悪の犯罪者にライバル視されるとはね。自慢話が一つ出来ちまった」


 言ったその瞬間だった。

銃声がした。

同時に銃弾がトニーの胸元を貫いた。しかし薬物によって肉体を強化しているトニーは何事もなかったかのように、銃声がした方向を見つめる。瞬時に、ヘリの乗組員達もその方向へ銃を向ける。

トミーは振り返った。そこにはスナイパーライフルを手にしているエリオットが立っていたのだ。


「エリオット……随分遅かったじゃねえか!」

「悪いなトミー。弾切れで一旦パトカーへ戻ってたんだ」

「……エリオット・ウィリアムズか。そのスナイパーライフルで俺の仲間を狙撃しやがったな」


 呟き、トニーは不気味な笑みを浮かばせた。


「なるほど……シカゴに続いてニューヨークも支配しようと考えていたが、お前らがいる限りそう簡単にはいかなそうだな。実に面白い街だ」


 トニーが顔を上げた。その目が新しい玩具を得た子供のような目になっている。


「よく覚えておけ……いずれ俺らはニューヨークを本格的に攻め込みに行く。その時にトミー。生きていたら決着を付けようか」

「……構わないぜ。お前もその時まではパクられるなよ?」

「ふん、口の減らねえ野郎だ。また会おうぜ」


 言うと、輸送ヘリが垂直に上昇していき、その場を去って行った。それを見送ったトミーは煙草を取り出し、口に咥えた。そして火を付けると美味そうに吸い、ヘリが飛び去って行った上空を見上げる。

トミーとトニーは、まるでコインの裏表のような存在なのだ。トミーが44オートマグを使用するのに対し、彼は44マグナムを使用。職業は警察官と犯罪者であり、射撃の腕はほぼ互角。まさにライバル同士という名に相応しいだろう。


「……Dr.レッドフォードといいトニーといい、厄介な奴らに目を付けられたもんだ。人気者の辛いところだぜ」

これにて、銀行強盗編は終了です。

トニーはトミーのライバル的存在として、一通り主要人物達を登場させたら、何度も再登場させる予定です。

そして次回、スラム街と化したサウスブロンクスでストリートギャングを相手に、トミーが大暴れをしちゃいます。

これからも何卒、よろしくお願いいたします。

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