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リミットゾーン  作者: 金ボール
第二章 チェース・マンハッタン銀行強盗事件
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第七話:不運の連鎖

 セントラルパークに到着した強盗犯達。そこでも次から次へとSWATの増援部隊が現れ、終わりなく4人を襲い続けた。


「ゴミが……お前らは糞に集るハエか!」

「このままじゃ囲まれちまうぜ!」

「走り続けろ。もうすぐ合流地点だ!」


 言って、強盗犯の一人が手榴弾を投げた。閃光に瞬時遅れて轟音が響き渡る。爆風と破片にSWATの隊員達は身体中をズタズタに切り裂かれた。周りのSWAT部隊を一蹴すると、強盗犯の一人が苛立ちを感じながら呟いた。


「クソ……トミーって野郎は何処に居るんだ」

「いい加減そいつの事は諦めろトニー! 今は逃げる事だけをー」


 考えろ。と言おうとしたその時、遠くで銃声が鳴り響いた。そして次の瞬間、叫び声と共に強盗犯の一人が倒れた。遠くから狙撃されたのだ。


「あっちから銃声がしたぞ!」


 トニーと呼ばれる男が、銃声がした方向に向けてFALを連射する。それに伴い他の二人も乱射をし始めた。銃を乱射しながらトニーは倒れた仲間を調べる。


「ダメだ。頭を撃たれちまってる……クソ。走り続けろ!」


 叫び、三人は銃を乱射しながら再び走り始めた。しかしその途中、トニーの銃が突然動かなくなったのだ。


「クッソタレ……無理に撃ち過ぎて故障しやがった。てめえら援護しろ!」


 トニーは壊れた銃を捨て、現金が入ったバッグを持って走る。残った二人はトニーを援護しながら彼についていく。

しかし勝利の女神は彼らを見捨てた。たて続けに、他の二人の銃も動かなくなったのだ。


「ど、どうするよトニー! あとは気休め程度に用意した拳銃しかねえぞ!」

「いいから走り続けろ!」


 トニーがそう叫んだ時だ。再び遠くから銃声が聞こえたと同時に、強盗犯の一人が狙撃された。撃たれた男は声を上げる間もなく地面に倒れた。


「ちくしょうまた一人……諦めるなよフレディ!」


 言って、合流地点を目指して走り続けた。しかしフレディと呼ばれる男は、突如陰気な笑みを浮かばせながらその場に立ち止まった。


「何してやがるフレ……ディ!?」


 トニーは信じ難い光景を目にした。フレディは拳銃を取り出すと、自分の顎に押し当てたのだ。


「よせフレディ!」

「へへへっ……トニー、もう俺らはおしまいだ。サツ共に殺されるくらいなら俺は自殺するぜ!」


 叫び声と共に、フレディは引き金を引いた。弾丸は彼の顎を貫通し、身体がゆっくりとその場に倒れた。


「ちくしょう……ゴールはすぐそこだってのによ!」


 舌打ちをし、最後の一人となったトニーは走り続けた。途中で何度も狙撃されかけるも、木に隠れながらセントラルパーク内を駆け巡る。そしてついに合流地点に到着した。


「まだヘリは到着してないか。クソ、早く来い」


 苛立ちながら、現金が詰まっているバッグを地面に置いたその瞬間だった。


「ガキの頃ニュースでやってた……ノースハリウッド銀行強盗事件を思い出すぜ」


 突如、背後から男の声が聞こえたのだ。反射的にトニーは振り返ると同時にホルスターから拳銃を取り出す。咄嗟に‘トミー’もホルスターから拳銃を抜く。そして二人ともほぼ同時に銃口を向け合うと、驚きを隠せなかった。


「44オートマグ……!」

「44マグナム……!」


 二人が持っていた拳銃は、人に向けて撃つような代物ではない大口径の拳銃だ。そしてトニーは、トミーが持っている拳銃が44オートマグである事を確認すると、被っている覆面越しでほくそ笑んだ。


 44オートマグと44マグナム。皮肉にも、同じ‘44’と名付けれている銃が向け合っている。トニーが44マグナムを下ろした。トミーは44オートマグの銃口を向けたままだ。


「44オートマグ……欠陥品とも言われた銃を、今さら全米で使用している時代遅れの警察官なんざ一人しかいねえ。探したぜトミー」

「へっ。俺が時代遅れなのは認めるがね、あんたの44マグナムだってちょいとばかし古いんじゃないの?」

「お前の44オートマグと一緒にしちゃ困るね。コイツはその欠陥品なんかよりも性能が遥かに上だ」

「性能だけが全てじゃないぜ。腕も重要なんだ。なんならいっちょ教えてあげようか、強盗犯さんよ」


 44オートマグの銃口を軽く動かしながらトミーが呟く。すると不気味な笑みを浮かばせながらトニーが言った。


「……やってみろ。そして俺を楽しませてくれ」


 言った瞬間、トニーは横へ跳んだ。握っていた44マグナムの照準をトミーに合わせ、引き金を引いた。咄嗟にトミーは横へ転がり、弾を避けた。立ち上がると共に照準をトニーに合わせ、一回、二回と引き金を引く。

弾は肩と腹に当たった。しかしトニーは軽くのぞけっただけで、被弾した腹を見ると、ニヤリと不気味な笑みを浮かばせた。そう、マグナム弾が直撃したにも関わらず、軽くのぞけっただけなのだ。防弾チョッキ越しとはいえ、まだまだダメージを受けた様子はない。


「あぁん!? い、今当たったよねぇ!?」

「クククッ……クラス3Aの防弾チョッキと薬物のお陰だ。特に薬物は強力なやつを吸引しといたのさ」

「チッ。そういう事かよ……そんなもん吸ってるとロクな死に方しねえぞ?」


 呟き、トミーは眉間に狙いを定めて44オートマグの引き金を引いた。命中すれば確実に死ぬ。44AMP弾に入っている300発の粒が、頭蓋骨をズタズタに切り裂くだろう。

しかしトニーは僅かに頭を傾けると、弾丸は頬を掠めて外れた。いや、正確には避けられのだ。


「た、弾を避けた!?」

「無駄だトミー。俺が吸引した薬物はまだ市場に出回っていない代物でな。強力な鎮痛力は勿論の事だが、それ以上に危険なのは副作用で体感時間が遅く感じるようになる事だ」

「てことは……俺の動きが遅く感じるって訳か」

「そう、俺の周りで動くものは全て遅く見える。弾丸も例外じゃない。拳銃程度であれば飛来して来る弾を直視して避ける事も可能だ」

「なんてこった……クスリもここまで進化しちまったとはな」

「さあどうするトミー。俺を殺せるか? 俺を楽しませてくれ」


 薬物と防弾チョッキによる絶対的な防御力と武装。人を一人殺すには十分過ぎる戦闘力だった。そんな相手を前にトミーはほくそ笑み、44オートマグの銃口をトニーの眉間に向けた。


「殺すも何も、俺は警官としての務めを果たすまでさ。大人しくブタ箱に入ってもらうぜ」

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