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リミットゾーン  作者: 金ボール
第三章 デッド・オア・アライブ
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第十一話:血塗れのチェンソー

 トミーは椅子の上で意識を取り戻した。手足はロープで縛られ、身動きが取れなくなっている。脇部を軽く動かし、携帯している銃があるかどうかを探る。どうやら気絶されてる間にホルスターごと奪われたようだ。

 辺りを見回すと、工具やドラム缶が置かれている事を確認出来る。ここは倉庫だろうか? そしてドアの前には黒人達が陣取っている。彼らの手には棍棒やバットが握られており、笑みを浮かばせながらトミーを見つめていた。するとその時、ドアが勢いよく開かれ、サングラスを着用した黒人が、もう一人黒人を従えて入ってきた。


「ようやく目覚めたか。トミー・ブラウン」


 サングラスを着用した男が呟いた。その声は低く、独特のある思い声だった。トミーはその男を見つめると、


「……驚いたぜ。あんた、デューク・ミラーだろ。ミラー・ファミリーのボスと対面できるとはね」

「ほう、光栄だな。俺らの事を知っていたのか」


 ミラー・ファミリー。サウスブロンクス一帯を牛耳るストリーギャングであり、そのボスこそがデュークなのだ。殆どが黒人で構成されており、構成員数だけならば全米最大規模の犯罪組織だと言われている。その凶暴性と実力も折り紙付きであり、FBIからもマークされているほどだ。トミーは世間話でもするかのように、デュークに話しかけた。


「……そういや、最近ここの地域はやけに治安が悪いな? これもアンタらの仕業かい」

「フン。トニーがニューヨークの銀行強盗に成功したって聞いてな。俺らも奴に負けずにと思って、力を入れてたのさ」

「トニー……? トニー・カルヴィーノ!?」

「そうだ。実はアイツと俺は昔からの仲でな。共に軍隊にいた頃に出会ったんだ。今じゃあいつが属するベルティーニ・ファミリーと同盟を組んでるのも、トニーと知り合ったおかげさ」


 話しながらデュークは葉巻を取り出した。ライターで火を付け、美味そうに吸うと口に咥えながらトミーを見つめる。


「あいつはもう一度、お前さんと決闘する事を望んでるらしいがな……悪いがそうはさせねえ」


 言ったその時だ。ギャングの下っ端である黒人男性がチェンソーを持ち出し、デュークに渡した。それも刃は血塗れだった。


「……まさかそのチェンソーで俺の首を切ろうとでも思ってんのか?」

「そのまさかだ」

「うああああああ誰か助けてェーッ!」


 叫び、トミーは手足を縛られているロープを解こうとした。しかし相当きつく縛っているらしく、いくらもがいてもロープが緩まる事はなかった。慌てているトミーを見て、デュークは笑みを深めながらチェンソーのエンジンをかけた。


「悪いなトミー。厄介な野郎はさっさと殺すのが俺のポリシーなんだ」


 言うと、デュークは血塗れのチェンソーの刃をトミーの首元へ近づけた。鋭い刃音がトミーの耳に響く。たちまち刃が首に引っ掻かれば、じわじわと切断されていくだろう。


「だぁあああああ! よせ、よせって! タンマ! ストップ! 俺を殺す前にトイレに行かせてよ! 決して逃げないからさ!ね? ね!?」

「トニーの言った通り軽口が減らねえ野郎だ」


 必死な言い分も虚しく、チェンソーの刃はトミーの首元へ近づいていく。トミーは必死に首を傾け、生きる時間を数秒増やす事しか出来なかった。

 チェンソーで首を真っ二つに切断される寸前、常人であれば恐怖心で何も考える事が出来なくなり、叫び続けながら死を待つ事しか出来ないであろう。しかしトミーは違った。軽口を言うその裏側では、冷静に打開策を練っていたのだ。トミーは人間離れした精神力の持ち主だった。

 何か打開策はないか? トミーの漏らす荒い息遣いに連動して、チェンソーの刃が近づいていく。刃がトミーの首元を擦るその時だった。


「五十キロの金塊が欲しくないか?」


 言った途端、チェンソーがその場で一時停止した。デュークは興味深そうにトミーを見つめ、問いかける。


「詳しい話を聞こうか?」

「その前にロープを解いてくれねえかい。これじゃ顔も掻けねえや」

「……いいだろう。おい」


 そう言うと、デュークの部下がトミーを縛っているロープを解き始めた。その間にトミーは、拘束されている間、見えなかった部屋の箇所を素早く見回す。するとドラム缶の上に、トミーの475ウィルディ・マグナムと、それを入れたホルスターが置かれていた。あれを奪い返す事さえ出来れば、ここから逃げ出せるかもしれない。


「さあ話してもらおうか。五十キロの金塊についてな」

「二日後にとある銀行へ輸送されるんだ。俺にも少し分けてもらいたいもんだよ」

「何処の銀行だ。それを教えてもらわなきゃ困る」

「俺がこれ以上言うとでも? 悪いが続きを聞きたかったらトイレに行かせてくれ」

「……フン。いいだろう」


 トミーは一時的に解放された。複数の見張り達と同伴する事を条件に、トイレに行く事が許されたのだ。

 しかし金塊の話は真っ赤な嘘である。ならば、なぜ黒人達はトミーの金塊の話を簡単に信じてしまったのか? それはトミーの職業が警察官であるために、金の輸送情報等を知っている可能性が高い為だ。第二に、スラム出身の者は金が絡む話になると乗り気になりやすいのだ。特にここ、住民の4割以上が犯罪者であるサウスブロンクスのような全米最悪のスラム街では、こういった大金が絡む話になると嘘でも信じやすい。


「ヤツは逃げ出しますよ? なぜ外へ出したんです」

「……少し俺も奴に興味を持ったからさ」

「興味、ですか?」

「本当に面白い野郎だ、死を目前にしても笑っていられるとはな。トニーが奴に惚れるのも無理はねえ……ふぅん。楽しめそうだな」


 言うと、デュークは腰に仕込んでいた拳銃を取り出した。いや、正確には拳銃ではなかった。M79_ソードオフと呼ばれるグレネードランチャーだったのだ。


「どれ、見物させてもらうか……厄介な野郎は、さっさと殺すのが俺のポリシーだが、お前だけは特別だぜ」


 デュークは葉巻を床に投げ捨て、足で踏み躙る。そしてM79を見つめながら、笑みを浮かばせて言った。


「お前が逃げようって考えてる事は承知だぜトミー。精々足掻いてみろ。この地獄の街から逃げられるか?」

ちょっと・・・金塊の話については無理矢理感がありましたね

この物語はご都合主義満載ですので、ご了承ください

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