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私の弟が妹になってしまいました。

私の弟が妹になってしまいました。続き

作者: 白い花びら

 ざっ!

 ざざっ!!


 これ、道行き人が引いている音だから。

 なんか凄いこと言おうとしているひとじゃないから。『ざ、ベストてん』みたいな。


 私の弟が歩く道には誰も立ちふさがらない。

 道を譲るのではなく、避けてるから!おもいっきり!

 目をそらすのはきっと怖いから。

 

 怖いよね。うん。


 わが弟。

 身長182センチ。体重78キロ。

 短髪。細マッチョ。顔つき、和風切れ長美人。

 無表情でも礼儀正しさがにじみ出て、「時任さんちの卯月ちゃん」てみんなに声かけられてかわいがられていたのに。

 服装が違うだけでこんなに凶悪な存在になっちゃうもんなんだね。 


 後ろを歩く私と葉月に問いかける目。

 どうしちゃったの??大丈夫なの??

 うん、そうだよね。

 困惑だよね。わからないよね。

 私もです。


 去年、父さんが町内の忘年会で仮装したときに着たセーラー服(うちの高校の)きっちりスカーフもつけて歩くわが弟。登校なう。

 性別変わっても校則はちゃんと守るんだ。


 葉月爆笑しすぎて呼吸困難。

 帰り一人歩きは絶対やめよう。

 聞かれても、答えられないもん。


 

 昨日の衝撃は忘れない。

 家に帰ったら、弟が女装していた。

 リップ塗った唇はなんだか艶かしくて、ピカピカの爪にその花柄ワンピースはどこから持ってきたんだ!!

 「卯月ちゃんって呼んでね♡」って。はーとって。って。

 呼べるかい!!!

 

 気がついたらもう朝で、ご飯も終わっていて(作ったの?食べたの?私が?)セーラー服をきっちりと着こなした卯月がカバンを渡してきたところだった。

 ソックスは白。髪にはかろうじて引っかかってる黒いピン。

 つやつやリップがやけに目に入る。


 ああ!誰か、夢だと言って!


 いつもはチャイムを押してからしばらく待たされる葉月が玄関の前で待ち構えていて、お腹を抱えて笑っていた。




 「ねえ、ねえ、おたくの弟どうなってんの?」

 「あれじゃね?性転換ってやつ。」

 「よくあんなでかいセーラーあったな。ぷぷっ。にあうんじゃね?」


 能天気なクラスメートよ。今は私に聞いてくれるな。

 私にもさっぱりわからないんだから。


 「時任姉〜。担任が呼んでる。職員室だって。」

 「いってら〜。」

 「がんば〜。」


 ははは、もう、どうにでもなれっていうやつだ。



 燃え尽きた私は只の灰。ハイって高いって言う意味だっけ。英語苦手。

 あっ、お弁当忘れた。購買まだ残ってるかなあ。


 「おおい。帰ってこいよー。弥生。」

 「お姉ちゃんをつけなさい。もしくは弥生さん。」

 「へいへい。弥生お姉様。」

 「ふざけない!」

 「はーい、真面目な話どうしたの?」

 「葉月、卯月なんであんなんになっちゃったの?何か知らない?」

 「知らないこともないけど、俺から言うのはどうかなあ。」

 「お願い、教えて!さっき担任に呼ばれちゃって、風紀を乱すことはやめさせろって言われちゃって。」

 「あ〜あ、なるほど。卯月、真面目な優等生だから、本人には言いづらい訳ね。きっちり校則守っているのはあいかわらずだし。ぶふっ。」

 葉月の笑い上戸が。もう!


 あんぱんにかぶりつく。

 あんこ、うまっ!

 牛乳と一緒に食べるとまさに至高!


 「あんぱんと牛乳って張り込みかよ!」

 「突っ込みはいいから、卯月のこと教えてよ!」

 「うーん。ここじゃなあ。」


 はっとして周りを見渡すと、そらされる視線。

 中庭って結構人いるのね。


 みんなだって知りたいよねえ。

 だが、ことわる!


 「わかった、放課後。葉月の部屋で。」

 「え!俺の部屋?いやいや、それは、どうかな。いや、弥生がいいならむしろ歓迎しても良いけど。」

 急にあたふたする葉月。顔赤いよ。

 ははあん、散らかってるのね。恥ずかしいのね。

 お姉ちゃんにはお見通しよ!


 「じゃあ、駅前のスタバで。」

 「 ・・・。うん。」


 よし、ちゃっちゃと吐かせて、事件解決だよ。

 るん、るんっと。




 「弥生、絶対わかってないよね。」

 「当たり前だ。精神年齢推定5歳。」

 「幼児かよ!」

 「それで、行くのか。」

 「そ、そりゃあ、約束だから。」

 「顔が赤いぞ。やめておけ。」

 「うっ。卯月。だ、だいじょうぶだ。」

 「デート、だな?」

 「ひっ!・・・やめます。」

 「よし。」


 

 

 るんるん。

 放課後、駅に向かう途中でメール。

 ありゃりゃ、逃げられた。

 葉月のドタキャン。

 どうしようっかなあ。


 「君、1人?良かったら一緒にお茶」

 「やよちゃああん。ごめん、待ったああ♡」

 「すみません!人違いでした!!』


 弟よ。

 いろんな意味で怖いから。

 無表情で、はーとってどうやってるの?

 「はーちゃん来れなくなっちゃったの。だから、もう帰ろう?」

 だから、無表情はやめようよ。

 周り、誰もいなくなっちゃうから。


 姉はあなたのことが本当にこれっぽっちも理解出来ません。


 帰りは手をつないで。

 大きな卯月と小さな私。

 152センチの私は弟と並ぶと大人と子ども。

 小さな町内だから、間違う人はいないけど視線が生温いのは気のせいじゃいと思う。


 でも、人見知りで恐がりやの卯月のためだから恥ずかしくなんてないやい!


 「卯月。お姉ちゃんに話したいことあるよね?」

 「ないよ。おねえちゃん、卯月ちゃんて呼んでくれなきゃ泣いちゃうぞ。ぷんぷん。」

 「・・・。」

 「しかたないなあ。うっちゃんで許してア・ゲ・ル♡」


 「うあああああああ!!」


 走って逃げる。

 運動音痴の私なんて卯月の早歩きにもついていけないから、なかなか差は付けられないけど、卯月が家に入る前に自分の部屋に飛び込むことはできた。

 セーラーを着せてしまいました。

 スカーフすると結構暑いです。(体験談)

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― 新着の感想 ―
[一言] 朝から楽しく詠ませて頂きました! (*^×^*)ぶぷぷっ! お姉ちゃん、大変ですね(笑) しかしのかかし(笑)本当面白いです(≧∀≦) 勿論!続きが知りたいです(*^^*)
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