表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

第5話


 私は行動を開始した。今はスロウスとレンとは別れて、私一人で行動している。救援は心強いが、悲しきかな、単独行動の方が逃げるのには楽だ。こちらは戦力を分散させ、戦いづらくなってしまうが、その反応はあちらも同じのはずだ。

 とにかく今は私が提案した無理難題を否定もせずに黙って頷いてくれたあの二人に感謝しなくてはならない。感謝も何も、私がこの牢獄から脱出しない限り、それも無駄になってしまうのだが。

「……出口は、どこだ……!」

 必死に必死に必死に、駆け出す。思考が行動に追い付かない。私は今、彼女のために行動しているのだ。彼女は目が見えず、星空が見えなかった。だからこの惑星の――綺麗な星空を見せてやりたかったのだ。

『――あのロボット野郎、何処に行きやがった!』

 不意に声が聞こえて、私は物陰に隠れた。その刹那、私が向かおうとしていた方角から一体のロボットがズシンズシンと大きな足音を立ててゆっくりと向かってきた。

 そのロボットは私の何倍も大きかった。私の身体はどちらかといえば流線型で、彼女ニンゲンのように滑らかなフォルムをしていた。現代科学が成し遂げた、最新鋭のロボットだ。しかしそのロボットはゴツゴツとしていた。強引に付けられたかどうかは知らないが、腕を大きく見せるために、本来の腕に幾重もの拡張パーツを組み込んでいる。それでは逆に、腕があまりにも重すぎて充分に動くことが出来ないのではないか? ……そういう可能性すら浮上する。

 ともかく、外形を見た限りでは、そのロボットは素早く動くことが出来ない――そう確信するのも、無理はない。

「……大方護衛ロボットといったところだが、しかし実際はそうでもないだろうな。私のような最新鋭のロボットを相手にすることもそう少なくないはずだ。ということはそのパターンは染み付いているはず」

 だからといって、ここで立ち止まってはならない。

 だからといって、ここで諦めてはならない。

 まだ進める。

 まだ戦える。

 まだ彼女のために――ここで倒れてはならなかった。

 そして、私は。

 一歩を踏み出した。

 それは、ほかの人から見れば小さな一歩かもしれない。

 それでも。

 私にとって、それは大きな一歩だった。





「なあ、スロウス。あれでいいのか?」

「あれでいいのよ」

 私とレンは彼と別れて、牢獄をひたすら走っていた。

 向かう場所は、彼の計画通り。

 私たちはその計画に従うほかない。

 私たちは彼の言う「銀河を、この手のひらに」という言葉を信じるしかなかった。

 どうして、そこまで信じ込めるのか――って?

 それは愚問だ。おかしな話だ。

 信じられるから、信じているのだ。

 ただ、それだけのこと。

 それだけなのに……どうして勘繰ったりするのかな?

「……だってあんだけロボット見知りだったスロウスが、あそこまで肩入れできるロボットが居たなんて知らなかったからね」

 レンはそう言った。

 たしかにそうかもしれない。私はロボット見知りだ。

 彼にどうしてそこまで肩入れするのか――もしかしたら、彼にはそれほどの魅力があるのかもしれないが――今はそれを考える必要もない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ