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第4話

「銀河を、この手のひらに……か。なんともドラマティックでロマンティックな発想だね」

 レンは言った。笑っているようにも見えたが、本気で笑っているとも思えなかった。

「でも、どうするんだい? 銀河をこの手のひらに……って言うが」

 レンは上を指差した。

 そこにはただ星空が、銀河が広がっていた。

 あの星空を、彼女に見せてあげたかったのだ。

 だが、今彼女は――生きていない。

「彼女に……見せてやりたかったんだ……」

「星空を? けれど、星空は大量のネオンに燻っているじゃあないか。それに君は犯罪者の烙印が押されている。何れ君を捕まえに来るはずだ。どうするというんだ?」

「邪魔なロボットは凡て止めるよ」

「彼女に星空をみせるために、かい?」

「ああ、そうだ」

「君は本当に一途だ。ニンゲンにどれほどの価値があるというのか。ニンゲンは元々この星に住んでいたらしいが……今は住んでいない。我々がこの星に住んでいるのだから」

 レンのいうことも解る。

 だが私は、この世界に住んでいたというからニンゲンがえらいというわけでもない。彼女があの場所に住んでいたから、私は彼女を守っていたのだ。

 嘘をついていた、と言われれば否定できない。

 私は彼女に「私はニンゲンだ」と嘘をついていたのだから。

「だからといって……彼女を『国家』に突き出せば守ってもらえるのか?」

 国家とは、私たちが住む星を統治する組織のことだ。

 国家は法律で統治している。法律は国家のえらいロボットたちが設定した百四十条で構成されている。だが、その法律は国家に甘く、我々のような一般市民には厳しい法律となっている。

 普通のロボットから税を取り立てる法律を強化しようと言っている『国家』が貴重なニンゲンを平和に取り扱うだろうか――私はそうは思わない。

 彼女は確実にサンプルにされて、『国家』繁栄のための犠牲となるのだろう。それは果たして正しいことだといえるのだろうか。脳を弄られ、最後まで酷い生き方をする彼女を想像して、それでも『国家』に突きつけるだろうか?

 私は、そこまで狂ってはいなかった。

 私は、彼女を『国家』につきだしたくはなかった。

「……普通居ないぞ。自らの身体よりも他人の、しかもニンゲンの安全を確保するだなんて。この世界は弱肉強食、僕たちは『国家』に一生従うしかないんだ」

 果たしてそうなのか。

 そうだと言えるのか。

「……本当にそうなのか?」

「……何が言いたい?」

 私は一つ、考えがあった。

 彼女が死んだのを目撃して、まだ信じられなかったが、それでもあるひとつの考えが浮かんでいた。

「彼女を……彼女を死なせてしまったのは、いったい誰が悪いのか。それは簡単だ。『世界』だ。私でもあり『国家』でもあり、すべてのロボットがひとりひとり、いや、一体一体その罪を背負っている。それを贖うためには……いや、私がその罪を贖うことが出来るのか解らないが……たった一つだけ方法がある」

「何だ、言ってみてくれよ」

 そして私は、レンとスロウスにその作戦を語りだした。

 これは誰のためでもない、彼女のためにすることだ。

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