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第3話



「僕の名前はレンという。まぁよろしく頼むよ」

 私の捕まっていた牢獄はどうやら塔をまるまる使っていたらしい。物見の塔としてかつては使っていたらしいが、そんな平和な時代に使う必要も無くなったためか、改装され牢屋になったとのことだ。

 今私たちは屋根の上に乗っている。夜は見回りがあまり来ないので大変隠れやすい。そして作戦会議をするときに彼が自己紹介を始め――そして話は元に戻る。

「僕はスロウスの兄だ。ロボットに兄が居るのもおかしな話だがね」

「同じケースに入っていた『心臓』を使っていればそいつは兄弟だ。私なんてそれで何十体も居るぞ。本物か偽物か見分けがつかなくなってしまったくらいだ」

 心臓は製造ラインで同一ケースのものを使うことがあるらしい。生産コストを切り詰めるために、各パーツは色んな工場で作られるのだが、梱包されて送られてきたときにそのパーツは(CPUを除いて)ある決められた個数の入るケースに収納されている。

 そのケースに入っているパーツ――特に私たちロボットの動作に必要な『心臓』などはあるパターンによってそのケースに詰められていることが多く、型式もそのようにナンバリングされるのだという。

 ……と、そんな長ったらしいモノローグはどうでもいい。作戦会議をしなくてはならない。

「……あんた、ここから出るだけが目的なのか?」

 不意にスロウスからそう言われ――思わず私の思考は停止した。確かに、そうだ。果たして私はただここから脱獄するだけでいいのだろうか?

 それでは、意味がない。犯罪者の烙印を押されたままだ。

 私には未だ、やり遂げねばならないことがある。

「やっぱあんたはその目がいい。あんたは何だかロボットらしくない目付きをしているよ。なんというか……熱意がある」

「そうか? 私はいつもこのような感じだが。まったく普通だ」

「ずっと生き残りのニンゲン隠しておいて何が普通だよ、ヘドが出る」

 そう言って、スロウスは笑った。

 スロウスも私も、それぞれが出会って大分経つ。私が彼女にニンゲンのことを話したのは本当につい最近のことだ。彼女ならば話しても問題ない……と思ったからだ。

「……確かに私はロボットに対して悪いことをしてしまったのだろうか」

 私の頭の中ではそんな疑問が続出していた。

 何で、どうして、私は牢屋に閉じ込められなくてはならないのか。彼女は本当にニンゲンとして、ロボットに仇なす存在だったのか。

 どちらにしろ、私は彼女にしてやれなかった。

 手のひらに広がる銀河を見せてやることが出来なかった。星空は綺麗なのに、人工的な明かりがそれを遮るのだ。なんとも滑稽で、なんとも悲しい話だ。

「銀河を……この手のひらに……」

 気が付けば私は、その言葉を呟いていた。


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