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第10話



 私はエルムと一緒にある場所に到着した。

 そこは小さい役所だった。しかし、正確に言うならばその役所はもうつい先日に機能を終え、建物が解体されるのを待つ状態だった。

「ここが私たちの基地だ。隠れ家とも言えるかな」

「……とても隠れているようには見えないが……」

 ここでごねても何も変わらないだろう――そう思った私はエルムについていくこととした。それが私の選択なのだから。

 この後に何が起きようとも、それは私の選択で、それが嫌だからって時は戻せない。それは私が一番知っているはずのことだった。

 建物の中に入ると、一歩一歩と踏み込むごとに木で出来た床がきいきいと鳴いた。

 とても古い建物なのだろう。そしてそれがいつ頃から出来たものなのかは解らないが、少なくともこれが現在使われていることは無さそうだ。使われているならば警備の一つくらいあってもいいものだが、今はそれがまったくないからである。

「君の気になっていることを一つずつ解決していこう。なぁに、そんな長くはならないだろう。何が聞きたい? 私が知っていることで良ければ何でも話そう」

「ならば……レンとスロウスはどうした」

 先ず気になったのがそれだった。彼女はいったい何処に行ってしまったか、ということに。

 私の作戦に巻き込んでしまった負い目……というのもあるが、ともかく安心であることを、彼女から、姿を見て確かめたかった。

「……君が彼女たちを心配する気持ちも解る。彼女たちは何の問題もない。だが、今君と彼女たちが会っては困るのだよ」

「なぜですか」

「君も我々についたのならば、少々事情は理解してくれ」

 エルムはそう言うと突き当たりにある扉をノックして、扉を開けた。

「だが、それ以外のことならば話すことは出来る。例えば、君が一番気になっている『彼女』の情報とか……ね」

 そこは救護室のようだった。ベッドがあり、様々な機械が設置されていた。そのうちのひとつには波形が映し出されていた。

 そしてそのベッドに横たわっていたのは、私がよく知る人間だった。

「どうして……どうして彼女が……」

「警察で監禁されていたところを何とか連れてきたよ。状態はここにある機材をフル稼働することで何とか安定している。……しかし、それもいつまでもつものか……」

 エルムが何か話していたが、私には関係無かった。

 彼女が生きていること、ただそれだけでよかったのだ。

「彼女を救うには……さっき言っていた『アマテラス』とやらを起動すればいいのか」

 それを聞いて、エルムは頷いた。

 私は彼女を救うことが出来ればそれでいい。その後起きることがどうなろうとも、構わない。

 ならば私は――私はせめて彼女とともにありたい。

 人間ならば神に祈れば問題ないだろうが、我々ロボットは誰に祈ればいいのか解らなかったが――私はただ祈った。



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