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勇者と魔法とエッチな防具  作者: 姫宮 雅美
レベル06「盗賊の 鼻を明かして 宝取れ」
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(緊縛のアンナ)

「姉ちゃん!」

 カイトは驚く。瞬時の出来事であったのもあるが、紫のドレスをまとう金髪美少女の胸を強調するかのような、独特でいやらしい縄の縛り方であった。


「ニャハハ。緊縛の秘技・亀甲縛りや! 大盗賊の特殊技能の一つやで。兄ちゃんも覚えておくと、ええで。女の子を楽しませて悦ばせるからな!」

 嗜虐的な笑顔を顔に貼り付かせているミーシャ。彼女も曾祖母と同じくツルペタのロリロリ体型であった。巨乳相手には、ムキになっていたぶる性質があるのだった。

 彼女も、大陸中の全ての巨乳を憎悪する。

「きっこう?」

 何にも知らないカイトは、首をひねる。


「な、何をしたいの?」

 淡々と聞くアンナ。仰向けの体をねじって、縄から抜け出そうと格闘していた。

「そやな。金髪姉ちゃんは色色とステイタスカードをいじっているみたいやな。現状レベルだけやなくて、名前とか……。喋ってもらおか、姉ちゃんの体にな!」

 ミーシャはアンナのステイタスカードを、穴が開くまで見渡す。そして、右の人差し指をクルンと回していた。


「ああー! くぅー あぁーん!」

 アンナの悩ましい声が酒場内に響く。

「ね、姉ちゃん!」

 アンナを拘束している縄が、ギリギリと締め上げられているのだった。

 カイトは今すぐにでも救い出したいと思うが、ミーシャの持つナイフの刃がキラリと光り、踏みとどまる。


「アンナさん!」

「オイ、オマエ!」

 マリーとクロエが同時に叫んだ時。


「おっと、動くなよ」

 黒頭巾団の一人が叫ぶ。


 そいつは見覚えのある小男だった。盗賊団の連中は彼の指図で、各々が手に持った武器をマリーとクロエに押しつけていた。


「おおお、オマエも動くなぁー」

 カイトの首元に、今度は斧の鋭利な刃が押しつけられる。

 ブッチだった。彼は新しい斧を用意していたのだ。



「へー、マリーはんは、バストサイズが92センチに成長してしてるのか。クロエのダンナは……1メータルまで胸囲が発達したんやな。そんなん、誰得なんや」

 ミーシャは、ステイタスカードに手をかざし、何やら数値を読み上げる。

 ツカツカと歩いて、アンナの頭の側に立つ。


「な!」

「何で知ってる!」

 マリーとクロエの言葉。


「ステイタスカードには、パラメータ・モードなるものがあるんや。各人の身長・体重・スリーサイズなんかの数値や、過去の戦闘データや現在の体力・魔力のゲージに、所持しているゴールドの金額まで見られるんやで、大占い師には!」

 ニカ――っと笑い、カードの表面を二人に見せて来た。

 マリーとクロエが目をコラして見ると、小さな項目と数字が見て取れた。


「ステイタスカードに、そんな使い方がありましたの!」

 マリーは驚いていた。


「でもな、この金髪姉ちゃんと、この男の子にはロックが掛かっとる。ん!? この子は、『勇者』なんか! ほぇー、初めて見たわぁー」

 ミーシャは珍しい動物でも見るかの様な表情で、カイトに向く。

 何故か恥ずかしくなり、顔を赤くしてうつむけるカイト。


「そうです! カイト君は『勇者』なのです。その彼を中心として、王家の伝説の至宝を探すべく、わたくしたちは旅に出ているのです。ミーシャさんも学園の卒業生だったら、実習の過酷さはご存じでしょう。是非とも協力して……」

「嫌や!」

 マリーの言葉に被せるようなミーシャの発言。


「どうしてだ?」

 クロエは冷静に聞くが、盗賊団の手下が刃物を押しつけて来て、体を引く。


「嫌なモンは嫌やからや。どうして、いけ好かん学園長の出した課題に協力せなならんねん! そや、この金髪ちゃんに、どうすれば職業欄以外のステイタスカードの項目をいじれるのか、聞かんとな」

 ミーシャは腰を落として、彼女を見下しながら言った。

 アンナは顔に大盗賊のツバが掛かり、顔を背けていた。


「遠慮するわ。盗賊に協力するなんて、真っ平ゴメンだわ」

 縄で縛られ床に寝そべるアンナは、プイと横を向く。


「そうか、そうゆう態度なんやな」

「姉ちゃん!」

 カイトが叫ぶ。アンナを縛る縄が、ヘビのように激しくのたうっていた。太くよられた縄の端が、アンナの口の中に飛び込む。


「うぐ! うぐぐぐ」

 喉の奥まで侵入されて、アンナは苦悶の声を出す。


「うひゃひゃ、喋る気になったかいな? このまま縄が奧の奧まで侵入して、気管まで塞ぐと、息が出来へんようになるで。おっと! 魔法を使おうとしても無駄や。緊縛術を使ったんで、指一本も動かせんはずや。お口をふさがれて、魔法の詠唱も出来へんで、観念しいや」

 ヒョイと立ち上がり、両手を腰に当ててアンナの顔をのぞき込むミーシャ。

 縄が意思を持った生物のようにうごめき、アンナの行動を完全に制限する。ミーシャの口の端が上がり、歯を見せて笑う。


「姉ちゃん!」

「動くなと言っただろ、兄ちゃん!」

 ブッチは斧の刃をカイトの首筋で軽く動かす。スゥーと冷たい感触。首の皮膚の表面が薄く切れたかも知れない。

「うぐ、うぐぐ」

 赤くなったアンナの顔が、紫色に変わり、やがて青くなる。

「やめて下さいミーシャさん。このままでは、アンナさんが窒息死してしまいます」

 両手を上げて恭順の意思を示し、降参しようと思ったマリーだったが――。


「ゴトリ」

 後ろから音がして、カイトは驚く。

「ブッチさん?」

 カイトの首筋に斧を押しつけていたブッチの全身が凍り、斧と共に床に倒れ込む。


「な、なんや!?」

 ミーシャが驚くのも無理は無い。店内にいた彼女の手下が軒並み凍らされていた。カチコチの氷に覆われていて、生死は今のところ不明である。


「これは?」

「なんだ?」

 マリーとクロエも驚愕の表情を浮かべている。ミーシャはこの事態を引き起こした犯人を見つけ出す。


「オマエやな!」

 ミーシャは、床に這いつくばっているアンナを睨みつける。アンナの金髪を掴んで引っ張っていた。



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