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勇者と魔法とエッチな防具  作者: 姫宮 雅美
レベル04「狙うのは 女戦士の 爆乳だ!」
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(クロエの過去)

 クロエが女の子を苦手になった原因は――十一年前にさかのぼる事になる。

 娘のクロエの王立学園初等部の入学式を前にして、父親のアンドレ・ブルゴーは王宮の警護隊長に抜擢された。

 赤色人の由緒ある家系のブルゴー家。

 クロエたちの家族は、王都とは遠く離れた赤色人の都に住んでいたので、父親のアンドレは単身赴任となった。

 当時五歳のクロエは、父親が遠くに行ってしまう事に泣いて抗議した。

 しかし、王宮の、ニコラエヴァ王家の警護に嬉々として向かった父の姿を見て、王家の皆を呪ったクロエ。

 父は事あるごとに、王家の姫君たちを「可愛い可愛い」と褒め称えていた。


 そして、初等部入学式の日。


 王立学園の初等部の制服は紺色のセーラー服であった。女子も男子も同じ紺色の短パンをはく。セーラーの白い襟には紺ラインが二本入り、白色のスカーフをしていた。

 頭には、白い水兵帽子を被る。なんとも可愛らしい水兵さんたちが、初等部の講堂で並んで椅子に座っていた。

 クロエの席の隣に腰掛けていたのは、事もあろうかニコラエヴァ王家の第三王女のマリヤだった。


 その、女の子らしい可愛い姿にも嫉妬した。水兵帽からのぞくサラサラの金髪をお下げにしていた。それが似合いすぎていて、悔しかった。

 幼い頃から男勝りに育てられた自分。父は、自分は可愛くないのだ。自分よりも、王家の姫さまたちに心変わりしたのだ。


 ――父に捨てられた!


「あの……私は、マ、マリヤ・ニコラエヴァといいます。あなたの、お、お名前は、く、クロエさんですよね……お、お友達になりませんか?」

 少しオドオドしながら差し出された、小さな右手。

 相手の眼を見る。

 クロエの故郷の空の色、綺麗な青色の瞳だった。

 クロエは、その手を払い大声で叫んだ。


「父さんを返せ!」


 金髪碧眼の美少女はビックリし、体が固まる。やがて、両目に涙を浮かべていくマリヤ王女。

 いまにも、こぼれ出しそうだった。

 ヒックとしゃくり上げた。

 周囲の大人たちが、慌てて駆けつける。

 マリヤ王女は、入学式の会場から連れ出されていった。


 ――翌日。


 マリヤ・ニコラエヴァが学校を辞めたと聞かされた。でも、自分が悪かったなどと、クロエは少しも思わなかった。

 そんな事で、簡単に辞めちゃうなんて――なんて弱くて、なんて脆い子なんだと感じた。


 そして、その二年後。


 マリヤ殿下は、王宮とそこに住まう全ての人々と、破滅の運命を共にする。


 初等部には試験休みはない。

 あの日――初等部に通い、寮に入ったままだったら、マリヤ殿下は死ぬことはなかっただろう。



 王宮の警護隊長の父親も、その時に死んだと思っていた。王家に、王家の姫たちに殉じたと信じていた。

 二年前、高等部入学式――その日までは。


 大占い師のサーシャ・フリードルが、クロエが『大戦士』であることを嬉々として告げる。

 その事に、クロエはちっとも驚かなかった。父と同じ『大戦士』の道を進むのは、当然の事と考えていた。


 その時、渡されたステイタスカードに、新着アイテムが届いていることに気が付く。

 何とそれは、ブルゴー家に代々伝わる家宝の『炎の鎧』であった。前の持ち主は父親であったが、アイテムの持ち主が死ぬと次の継承者に自動的に譲渡されるのだ。

 王宮破滅の時期の父の継承者は、父の実兄の伯父のアランであった。だが、伯父には『炎の鎧』は移譲されていない。


 それは、父親の生存を意味する。

 大陸のどこかで、父のアンドレは生きている。

 だがそれまでの期間、父親は母や娘の自分に一度も会おうとはしなかったのだ。


 今度こそ、父に捨てられたと実感した。


 十五歳になった王立学園高等部の入学式。その日に、家宝の『炎の鎧』が譲渡されていた。父は生きていて、娘の自分に譲ったのだ。


 何故、合おうともしない!

 もっともっと、腹立たしかった。



「……ですのよ、クロエさま。カイト君が勇者さまとは意外でしたが、お友達として、クラスメイトとして、今まで通り接して行きたいと考えております」


(つらつらと、ペラペラと、全く良く喋る娘だな)


 クロエはうんざりした顔で、目の前のマーガレットの顔を眺めていた。


「どうしました?」

「いや、食事が終わったのでな」

 紙ナプキンで口元を拭くクロエ。

「じゃあ、私とカイト君の交際のお力添えになってくださるのですね。クロエさまが協力なされるのならば、百人力……いいえ、千人・万人力です!」

 マーガレットの目がキラキラと光る。


(どういう流れで、そんな話になったのだ?)

 クロエは考えようとしたが、やめた。こういう輩(やから)が、一番タチが悪い。


「男女交際は、本人たちの自由だ。そこにオレ……いや、ワタシの介入する余地は無い。勇者の彼に取り入って、良い目に合おうとの魂胆だろうが、生徒会長のマリー・アレンが狙っているのだろう? 彼女の言い分には正当性があるし、家柄では誰も勝てん。何よりも、生徒代表のアンナ・ニコラは実の姉ではないのだろう。十年も一緒に暮らした仲だ、そこに割って入るのも難しいぞ」

「そんなことはありません! 仮に、二人がカイト君の妻になったとしても、可能性は低いでしょうが、第三夫人の座を狙うだけです!」

 クロエの言葉にむくれるマギーだった。ムキになって反論している。彼女の本心が、透けて見えるというものだ。


「可能性の問題なら、このワタシも勇者さまの花嫁候補だ。可能性的にはゼロではない。何といっても勇者と大戦士は攻撃の要になるからな。一緒のパーティーになれば親睦を深めることになり、もしやの関係もあり得るぞ」

「え?」

 思わぬライバルの出現に警戒するマーガレット。


 こんな筋肉ゴリラ女が?

 ――そんな表情だ。


 ソバカスだらけの顔で、睨みつけて来た。大きくて垂れている目が吊り上がる。途端、顔付きが凶悪になった。


(これが、この娘本来の姿だな)

 クロエは思う。


「アハハ、冗談だ。真に受けるな。そんなに睨むと可愛い顔が台無しだぞ! アハハ!」

 クロエは空っぽになったトレイを持って、食堂の配膳所に食器を戻しに向かう。


 クロエは思う。

(ああ、やっぱり女の子は苦手だ)



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