15話
雨衣はこの道場に飽きていた。それは全くと言って良い程娯楽や男気が無かったからだ。初めは「女ばかりで気楽ねぇ」と考えていたが、何時に成っても師匠からは免許皆伝を貰えず、鬱屈した道場と言う空間でただただ時間だけが過ぎている様にしか思えなかった。そう思うのもこの閉ざされた道場にいつまで居なきゃ為らないのか分からないからである。
そして、そんな娯楽も無いこの道場に男が入門したのだ。今まで女しか居なかった閉塞された空間に雨衣の好みど真ん中な顔立ちに身体つきは、やや筋肉質な男。これを逃す手は無いと思い、普段では見せない程の積極性で攻勢に出てるのであった。
そういう思いがあり先ほどの部屋の一幕であった。この道場は先に何度も説明したとおり、女しかいないのである自ずと道場初の男として入門した倫は他の門下生からも注目の的である。紗兎は倫が纏っている雰囲気が凄く自分好みであり、岬は雨衣と同じで顔が好みだった。いずれも閉塞した世界にぽんっと降り立った倫に一目惚れした者が多かったのだ。そんな倫と何かお近付きになる方法は無いかと模索し探りを入れてるのである。
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やっと飯にありつける、そんな事を考えながら倫は雨衣に示された部屋へと入った。そこには、純和風な食事が整列して配膳されていて皆が席に付き姿勢正しく正座で待っていたのだ。夕飯の献立は白身魚の酒蒸しに胡麻の和え物、大根とじゃが芋の味噌汁、白米、それに茶は香りがいいほうじ茶だった。味噌汁も出汁をしっかり取った煮汁に味噌を溶いて作られた物だった。
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それから暫し経ち夕食はつつがなく終わり、ほうじ茶を飲みながら倫が寛いでいるとその周りには女性たちが集まった。女性達は倫の趣味だったり好きなスポーツだったりとパーソナルデータを聞いてきた。それも目が凄く必死で答えなくてはいけない様な気になるから全員の質問に答えて時間を潰す事になるのであった。そうしていると室外から声が掛かった。
師匠「もうその辺にして、寝る準備をしなさい、明日も朝から厳しい稽古になります。」
一同「はいっ!」
その声により倫の周りから蜘蛛の子を散らす様に女性たちが離れていった。そしてやっと解放された倫は何が楽しくて自分の事を話さなきゃいけいけないのか、こうして軽く拷問ともとれる時間を過ごしたのであった。
少なかったので修正させて頂きました。良かったらお願い致します。