1‐ファーストインパクト
※この作品は、某巨大掲示板に投稿したものを加筆・修正したものであることを、ここにお断りしておきます。
※towaの作品の「兄妹以上、きょうだい未満」という作品と同姓同名の登場人物が出てきますが、一部設定が同じである以外に、まったく関連はありません。ご了承ください。
第一印象は、あまりよくないものだった。
どこにでもいる普通のやつ、とか、あほっぽい顔、とか、鼻持ちならない、とか、その辺のいずれかだ。
なにしろ、越した先のアパートが以前にも増してボロボロで不機嫌になった所に、隣に建つ立派過ぎるほど立派な家の子供が笑って話しかけてきたのだ。
大人でも少しささくれ立った気分になるだろうなら、子供にしてみればなおさらだった。
黄色と緑のチェック柄のシャツに灰色のジーンズといった、ボーイッシュな格好をした短髪の女の子は、玄関先に立ってあからさまに不機嫌な顔をしている少年ににっこりと笑いかけた。
「わたし、七倉みどり。お母さんが、隣に越してきた子が同い年だから挨拶に行けって。
だから、これからよろしくね。そっちはなんていうの?」
本音を言うとまったくよろしくしたい気分ではなかったのだが、経験からキンジョヅキアイは初めが肝心だと分かっていたので、しぶしぶ答えることにした。
「俺は秋良高馬。それほど仲良くする気もないけど、お隣さんやったらしゃーないし、
ま、テキトーによろしゅうしたってや」
ことさらテキトーを強調して言い放つと、相手は微妙に含ませた棘に気づいたのか、少しむっとした。
「うん…でもテキトーにするぐらいだったら、初めからよろしくなんてしない方がいいと思うよ」
そう言って、彼女は背を向けるとスタスタと行ってしまった。
秋良は少し呆気に取られながらも、予想以上に生意気そうな少女の態度に鼻白んだ。
そして、行ってしまった背中を見送ることなくさっさと部屋に引き返した。
ものの一分もかからない、これが幼い秋良とみどりの出会いだった。
それから数日しても、秋良とみどりは、話したり一緒にいたりする機会を持つことはなか った。お互いに最初の出会いは印象が悪く、特に相手に興味を持つようなこともなかったので当然の結果かもしれなかった。
ただ、通う小学校も学年もクラスも同じなので、朝方の登校する時間や、下校する時間帯が重なってしまい、顔を合わせないまでには至らなかった。
そして、偶然鉢合わせなどしたときには互いに気まずげな顔をして、少し距離を置いて目的地までを歩くのだ。
そんな時、秋良は決まって居心地の悪い思いを抱いた。
彼にとってそれはとても以外で忌々しいことだった。
秋良から見る同年代の者たちは、皆同様に低俗で、取るに足らない存在だった。
幼い頃に父が母を捨ててから、ろくに定職に就かず酒を食らっている父と二人で暮らしてきた秋良は、その年で大人びた思考回路を強要された。
それゆえ、些細な事で囃し立てたり馬鹿にしたりする同級の子供は何も分かっていない馬鹿で、更に徒党を組んでいじめなどを行う輩は虫以下と思っていた。
だから、そんな奴らにどう思われようが気にしない。
自分は暇な奴らと違って忙しいのだ。
そういった思いで他人と接していた秋良にとって、隣の家に住む七倉みどりという存在は、 どうにも位置づけに困った。
彼女は、クラスの大半の者たちが持つ、異質な者を排除しよう、或いは無視しようという瞳で秋良に接しなかった。
だがたまに目を合わせると、その視線には明らかに嫌悪の色が浮かんで、表情も仲の良い 友達といる時と比べて硬くなる。
それなのに、今まで転校先見てきたような好奇の目や畏怖の目とは違って、彼女のそれは 不思議と秋良が馬鹿に出来ないような瞳であることだけは確かなのだ。
だからといって秋良が話しかけたり、みどりの方から話しかけてきたりというようなことはない。しかし、それだからこそ秋良は彼女の存在を必要以上に意識してしまい、たまに行動を共にするような事があれば、非常に気まずい思いを抱くはめになるのだった。
それはみどりの方も同じだったのか、出会い頭に一瞬戸惑うような表情をするみどりは、気まずげに「おはよう」や「ばいばい」を口にするものの、決して挨拶以上の交流を図ろうとはしなかった。
そんな日々を送り、いつのまにか一ヶ月が過ぎようとしていた。
秋良高馬は、某サッカー漫画のキャラのオマージュです。気付いた方、申し訳ありません。土下座して謝ります。




