牢屋での会話
…ん?これ私にかい?
「毛布でもわだしだがったんだがないでの、おらの服で申し訳ないだ。3日前洗ったばかりだがら、そんなに汚くないど。」
……そうかい。
「あど、ほんとはよぐねんだけどこれもな、夜は冷えるがらな」
お湯とこれは…砂糖菓子か
「ほんどは牛乳にしようと思っだんだが、膜ができるでな朝回収に来た看守にばれてしまう」
…おや、私だけ特別扱いかい?
「悪事をはだらいだわけでもないでな」
おやおや、実は大罪人かもしれないよ…
「ガッハハハッ…何の罪だど⁉連れ去られるまえ見だが?偉そうにいづもしでいる看守が鼻の下伸ばして、傑作だっだど」
…そうかい?君はどうなんだい?その暗い顔は…女の裸を楽しみに来たってわけじゃないんだろう?
「……べっぴんさんがあんなことをしてはいげねえど、良くない輩も見どるがもしれん」
いまさらだよ。私が5歳の時、実の父親に襲われた
「……っ」
女の勘だろうかね?母親はすぐ気づいた。実際に行為を見たのは十回も抱かれなかった頃だろう。助かると思った愚かな私を“女”は火かき棒で殴ったよ。母親は娼婦だったが齢1桁の女に男を奪われたのはプライドが許さなかったんだろうね。
「もう…いいだ」
正確には、あまりの怒りにそれは床を抉ったわけだが。当時の私は直撃すれば死んでいた。幼心にも殺されかけたことは分かって動けないでいると母親は叫び声をあげて私を何度も殴った。そして泣きじゃくる彼女を…父親はそんな母親を抱きしめた。
「もうっいいだ!!!!!嫌なことを思い出せてすまなかっただ…」
なに、終わった話さ、落とし前もつけてある。
「………おらの妹も、領主に連れていかれて、殺されただ。おらから見ればあんだにもまげねえべっぴんだった。花の手入れが上手いからだって庭師にやとわれて、とっさんも、かっちゃんも、おらも最初は喜んでて……でも、連絡がつがなくなって。…聞きに行ったんだ。そしだら首をつって死んだっで…おら、何も、でぎながった…そっがら、おら、情報だ集めて、本当のことしだっだ、だけど結局、領主に…領主に…何もできながっだだ…」
ふーん、悪い奴もいたもんだ。よくあることなのかい?
「…ああ。珍しい話ではないそうだの」
ああ…そうか、君は私が妹さんみたいにならないようにと注意しに来たのか
「……」
殺しに行かなかったのかい?
「おらだっで殺せるんなら殺しどる!!…あいつが殺せるんだっだら命を悪魔に売ってもええだよ」
……
ふぅ…これはいいねあったまる。
「……おらはそろそろ行くだよ…そろそろ交代する時間だでの」
ああ…
「なにがあっだら呼ぶだよ、あと半刻ぐらいはいるでよ」
…ああ、そういえば聞き忘れていたな。その領主の名は?
「……」
…領主の名は?
「…ロリャーナ公爵だど」
…おやすみ。優しい者よ。今日私と話したことは忘れるといい…
「…?」
…ああ、あと来週から一週間は休みをとるといい。疲れがたまっているだろう…?
外に出るときは顔もむくむだろうからお面でも用意しておくといい。
その翌日
交代に来た看守が見たのは血塗れの留置所。
咎の軽い一部の罪人と一部の看守を除いて数十人の規模で殺されていた。
そして、咎の重いたまたま昨日入ったばかりの”連続殺人鬼”は特に凄惨な様子だったという。
そして、一週間後の新聞、ロリャーナ公爵一族の首が飾られたという情報が一面を飾った。
その体には酷い拷問を受けた跡がうかがえたという。
優しい男はその日溢れんばかりの歓喜に震えた。
男は号外を聞き、家にすぐ帰った。歓喜で体が弾けそうだったからだ。
お面を取り、涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を洗う。
鏡に映る自分の顔は…一週間前の言葉を思い出す。
ああ…そうかわかった…
あの人こそ、あの方こそ、全てを救うあのお方に違いない…
「ああ…勇者ざ…ま……」




