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裸の付き合い

酔っぱらったアガツミの介抱はユキちゃんが喜々として引き受けてくれた。

少し酔いがさめたら、風呂に一緒に入るとのことだったので、

自分も一人風呂に向かうことにした。

旅館の床をペタペタと歩く。

春は来たと思ったが、まだ夜は冷える。

足早に風呂に向かうと、籠には一人分の衣服が置いてある。

どうやら先客がいるらしい。

服を脱いで向かう。

かけ湯をして、

先に体を洗い、浴槽へ向かうと、その先客がいた。

少し離れた位置で浴槽につかる。

魂の選択

そんな神々の大いなる意思によって行われる行為ではなく。

魂の洗濯である。

疲れが体からにじみ出てお湯に溶けていく。

そんな気分で浸かっていると。

先客が控えめに手を振っているのに気付いた。

はて?だれだろうと思っていると近づいて話かけてきた。

「ふふ、この姿では初めてかな。」

「ええと、すみません、覚えがないんですが…」

近づいてきた青年はどこか中性的で、顔立ちは整っている。

細い肩に色白の肌は湯の熱にあてられほんのり桃色に染まっているだろうか。

いやまてよ、この造形というか姿格好どこかで…

「っ!」

「シドクさん…なんで男湯に…っていうかなんで」

「ふふ…、おかしくないでしょ、だって…」

「男なんだから」「男なんですか!?」

重なる声。

「ふむ…ごちそうさま…」

「…まじまじと見ないでください!」

そう、「彼」は先日あったキョンシーの商人シドクだった。

実は私はねと話す彼女の話を聞くに

彼女には、どうやら男になる時期があるらしいのだ。

異能にかかわる性質であり、それがたまたま今日だったと。

彼…いいや面倒な。

意識は彼女として接する時に近い。

彼女から少し離れて横並びに座る。

しばらく彼女からの何か話したげな視線を感じたが

疲れもあってまぁいいかとぼーっとつかる。

彼女もしばらくしてぼーっとつかることに決めたらしく

二人並んでぼーっとつかる。

しばらくして、

「今日はどんな一日だったんだい?」

湯からから立ち上る暖かさと浴槽を形作る木の香りに包まれ

少しリラックスしたころ、そう彼女が口を開いた。

今日はどんな一日だったか。

思い出す。

ギルドで報酬をもらい。

腕試しで叩きのめされ、肉体的にも精神的にもぶっ潰された。

そしてラステネさんには慰められもした。

夜の歓楽のエネルギーに圧倒され

今は疲れ、こうして湯に浸っている。

「悪くない一日だったと思います。」

苦味もあったが心地よい疲れがあって、呟きながらも少し頬が緩んだ。

「…シドクさんは?」

「ん?」

「どんな一日でしたか?」

「そうだね…一言でいえばショックな一日だったかな」

「そう…なんですね」

「でも。それでも今あるものを大事に、生きていかなきゃいけないんだろうなって思うよ。どんなに辛くともね。」

シドクさんの声は気のせいかもしれないが、震えてるような気がした。

なにかしなければという気がして声をかける。

「…手を」

「手?」

首をかしげながらも、手を差し出すシドクさんの手を握って

ただ握る。

しばらくの間、そうして手を握って互いに話をした。

シドクさんの両親は幼い時に魔物に襲われ亡くなったこと

シドクさんだけは運よく救われ、救われた先で商人としてのイロハを学んだこと。

俺もアガツミに幼い時に救われたこと。薬師としての生活から外の世界を学ぶために冒険者に転身したことなど…。

話題はかならずしも温かなものだけではなかったけれど、

穏やかな気持ちで長い間話し込んで、お互いに風呂を出るころには結構のぼせていた。

風呂を出るとユキちゃん達に出会う。

アガツミは完全にすやすやと寝てしまっている。

髪を洗われている途中で寝てしまったのだとか。

本当に子どもみたいな人だ。

シドクさんは興味深そうにアガツミをみて。

この子が君を拾って育ててくれたのかい?と尋ねる

そうです。と答えるも

ユキちゃんに?という顔をされる。

ふぇるとさんがアガツミを救ったのではと聞かれる。

なんのこっちゃと思ったが、そういえばギルドでアガツミがそんな設定を言っていたっけと思い出す。

あー、ま。この二人ならいいか。

わけあって細かい過去については秘密にしていることを正直に話した。

二人は意外にも

「そうなんですか」

「まぁ、色々あるからね」

と突っ込んでこなかった。

冒険者にはそんなに珍しいことではないらしい。

ユキちゃんは

すやすや眠るアガツミとこちらを交互にみて、

「でも、納得」と言う。

「納得?」

「お似合いっていったほうがいいかも。宿待ちをしていて色々な人を見てきたけれども、あなたたちは特別な感じがしたの。だから過去は秘密なんて言われてもなんだかわかるなぁって」

「シドクさん、俺たちそんなに変わって見えます?」

「うーん。でも、普通の人からみたらアガツミちゃんのインパクトが凄いかもね。美人で首だけって。」

「ああ…」

「ぜひ、有名になってもらって、いい広告塔になってほしいです」との言はユキちゃんだ。

「直球だね…」

「その代わりに…」

「うん?」

「私たちはいい時間を提供するの」

「それはもうお世話になってます…」

シドクさんとユキちゃんが話すのを見るのは初めてだったけど、

男の姿でさえも顔なじみらしく和やかな空気が漂っていた。

その日はしばらく3人でのんびりと話をしてお開きとなった。

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