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宿待ち-続-

ラステネさんと、アガツミさん、ユキちゃんが話しているもとに行くと

そこには処置はされているものの怪我だらけのいかつい筋肉男がいた。

ザダンである。

まだ絡みに来たのかと駆け寄った。

「ほぉら、飴だよーん」

ぉ…ん?

若干の動揺が滲んでしまったが、平静を装って問う。

「な…なにしてんだ筋肉モヒカン」

「おぉ…お前もいるか?」

「あ…?」

気持ち悪い友好的さだ。まさか何か企んでるのでは…と思いかけると

「まだ気づかないのかい、ふぇると君?」

アガツミに笑われる。

「あはは…新人は実力を測っておかないとっていうのがうちのギルドの方針だから」

ラステネさんもそれに応じる。

「あ?あああ!!???」

ああそうか…ようやく得心がいった。

どうやら腕試しをされたらしい。

「ふぁはっはっはっはぁ~、頼もしい新人が入ってきたなぁ!!」

ザダンが喧しく高笑いをする。

「あの、俺たちは旅の途中なんですが」

「でも、しばらくはいるってこの嬢ちゃんから聞いたぜ」

「そりゃしばらくは居る予定ですけど」

「じゃあよろしくじゃねえか…それにここははじまりの冒険者ギルドだ。ここで得た何かしらはよそへ行ってもなくなるもんじゃねえ…。おめえは強いがきっとここで、いやここだからこそ学べることもある。」

「…まともだ……。」

「はっはっは大人だからなぁ!?」

「ザンおじさんは子どもたちにお菓子をくれたりするの」

ユキちゃんが口を添える。

「ザンのとこは兄弟が多くてな、こどもの扱いになれているんだ。」

モヤシが補足をする。

そこで疑問を投げかける。

「ってことは、あの告白振られたってのも…」

「それは本当だ、だから本気でぶっ飛ばしにいった」

「おい、大人どこいった」

「はいはーい。ふぇるとさんとアガツミさんはこちらにきてくださーい。冒険者登録しちゃいますから。お名前と種族、異能の記入をお願いします。あ…アガツミさんの分は…」

「あ、俺が一緒に書きます」

「わかりました。それではここからここまでお願いします。」

~~~

「ええ…と。ふぇるとさんはキョンシー、アガツミさんはデュラハン…」

「なるほど…「不死」持ちが生まれたことのあるキョンシーなら、あれだけの回復魔法と身体強化も納得がいきます。アガツミさんは…種族自体も大変珍しいかと思いますが…その…、お体の方は?」

腕の中のアガツミがぴょんとはね、ラステネさんの胸に飛び込む。

ナイスキャッチ。

そして上目遣いで訴える。

「ううっ…聞いてくれるかい、ラステネ君。聞くも涙、語るも涙の私の過去を」

「え…えぇ」

アガツミが語った、聞くも涙語るも涙の”ほら”話は…

2年前に山崩れに遭い、そこにたまたま居合わせた俺が介抱したものの意識を覚ました時にはすでに体はなかったとのことだった。

さらにアガツミは事故の前後の記憶をなくしており、

一通り周辺を探したものの体は見つからず、アガツミが記憶をなくしたことによって

体は迷子になってしまったかもという話だった。

なんでも体を探して俺達は旅をしているらしい。

そしてその中で徐々に芽生える二人の恋心…。

絶世の美女と過ごす日々に白髪の可愛い少年は日々内に獣欲を募らせていく…そう彼も男。

見た目は羊でも中身はそう狼だったのだ…!!

「いや!何の話だこれ!?」

「なんだい?いいところだったのに」

「いやこんな話俺知らない!」

「大体あってるじゃないか、君はもう私なしでは生きられない体だろう?」

「っ!…そういえなくもないですけど…」

「そんなかわいらしい顔をして、内心では獣欲を滾らせてるんだろう?」

「してねえよ」

「体の関係…獣欲を滾らす…」

「えーっとラステネさん?…そんな局所的に聞こえることあります?…そのあたりはアガツミの冗談ですからね?」

「わわわかってます!!その…男女の関係に立ち入るのは良くないですよね!?」

「うん!違いますからね!!!」

誤解だと説くこと。ことことことこと……

「大変だったんですね…」

「そうかい?」「大変でした‼」

「え?」「うん?」

「クスッ…お二人は本当に息ぴったりですね。時間を感じます。」

「時間ですか?」

「冒険者の方々を見る日々ですからね…。なんとなく掛け合いを見ているとわかるんです。いつも通り仲良く見えるけど微妙に空気が違って最近喧嘩したのかなとか?隠れた関係性…えっとこの二人付き合ったんだろうなぁとか。そしてお二人は」

ラステネさんが俺とアガツミの間を指さし、チクタクとゆれる。

まるでずっと一緒にいた家族みたいに見えます。

ラステネさん恐るべし。

こりゃ適当いったこともワンチャンばれてそうだなー

アガツミはそんなことを知ってか知らずかはたまたどうでもいいのか

ご機嫌にしていた。

この旅を成すためにはばれちゃいけないのに。

わかってるんですか、アガツミー。


日は沈みかけていた。

「ごめん。待たせちゃったね」

宿待ちの少女に声をかけると。

少女は「ほんとよ。でもいいの。」と答えてくれた。

(言葉遣いは自然体でいいと言うと彼女は年相応に話口調になった。可愛い…)

聞くと、宿待ちの少女ユキちゃんは、

待っている間は文字の勉強をしているらしい。

持っていたノートにこう書くのよと教えてくれた

「学校には行かないの?」

「行ってるわ。学校は午前中だけだもの。その後はおうちでご飯を食べて宿待ちに来るの空いてる時間には勉強してるの。」

「友達とは遊んだりしないのかい?」

「私は、宿を継ぐから…勉強しなくちゃいけないのよ、それに時々遊ぶわ。」

どうやら、宿待ちを毎日しているわけではないらしい。

「じゃあ私たちは幸運だったわけだ。君と今日ここで会って、いい宿に泊まれるんだから」

アガツミのその言葉を聞くと少女は今日一番の笑顔で

「私もよ。お姉ちゃん。…お客さんが連れて行くとお小遣いが貰えるの。にやにやするのやめなさいよ、別に私んちの宿を褒められて嬉しかったとかじゃないんだからね…」

「ふふ、あははは」

「くっ、ははは」

俺とアガツミの笑い声が重なり合い、石畳に響く。

話していると、ユキちゃんは、11歳という年齢の割に大人びた考え方をする子で

頑固さの中に歳相応の可愛さがあって、

つい心を掴まれてしまった。

宿につく頃には、俺もアガツミもすっかり

この子のファンにきっとなっていたのだろうと思う。

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