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旅立ちの準備

勇者の権能を制限するために、アガツミと俺は必要な道具をそろえた。

たったの3日で。

ある種の歴史に終止符を打つにはあまりにも短い時間だった。

異能封じの札とやら、錆色の片手剣、血吸いの白布とやら、紐らしきなにか、…ギロチン。

(ギロチンはギロチン以外の何物でもなかった)

無論どれもただの道具ではない。

材料ですら、勇者の家だから材料が揃ったものの、本来は材料の入手すら困難だ。

いわんや製法をやである。

これらは全て、”先代の勇者”の秘法により作られており、

アガツミが言うには、どれも国宝級の代物レベルのものらしい。

(先代の勇者はものづくりに長けていたようである。ギロチンはギロチンでしかなかったが、アガツミはなによりもそれに興奮していた。たまらん一品らしい。わからん…)

5つの内4つは、物そのものがしまわれていたり、

材料と製法が記された書記が残されていたりとすぐに見つけられた。

最後の1つ、ギロチンについては中々手間取ったものの、

1日と半日ほど過ぎた頃、探すのに飽きたアガツミが”適当に”見つけた。

飽きたアガツミは「くぁ…飽きたな」と少しあくびをした後、

物凄くきょとんとした顔をして、不意に思いついたかのように自分の髪を一房掬い、その手を頭上に持ってきて手を離す。

すると、一部の髪が立ったままとなり、みょんみょんと揺れだす。

アホ毛だ。

…そして、「そおーれー、ここ!」なんていって、近くの押し入れをあけ、

肩からほこりを落とすかのような軽い素振りで轟音を立て、

壁の一部を壊すと、あら不思議。(ちなみに壁にはよくわからない色の金属板が入っていたが、無視である。)

はい!みなさんお馴染みの、ギロチン…

今まで見たことはないけどね。

ということで…

ザッ

「痛っ…」

「はっはっ…っはぁ…。…とりあえず、右脚はいけまし…たね」

血吸いの白布はアガツミの血で真っ赤だ。

この布は傷口からあふれ出す血を一滴も残らず吸いとる。

そして、その吸った分だけ鮮やかに染まっていく。

眼前に迫る夕焼けのような色。

ああ…ここまで綺麗に染まるまでには尋常でない血の量が失われたはずであった。

あぁなんて美しいんだろう…しばらくその色に見惚れる。

「ふぇ・る・と・君~?」

「ぁ…」

アガツミの言葉でぼんやりとした意識から目を覚ます。

俺は、切り落とした付け根の断面をより深く抉ろうとしていたことに気づく。

いや、既に傷口に触れかけていた。

「っ……ごめんなさいアガツミ」

この血吸いの布は果てなく、血を吸う布であり、血を吸わせるほど魅惑的な一品となるらしい。

超一級品の”呪い”の品だ。

この品は勇者によって作られたもののため違うそうだが、

血吸いの布にその色に魅入られて、ある都市が滅んだなんて伝承もあるんだとか。

傷口を普通の清潔な包帯で包み、ペタといった感じで札を貼りながら…

溜息ついてアガツミは言う。

「あてられたね。その体は魅了系に耐性ある筈だけど、モノがモノだから気を取られると影響受けるよ」

「気を付けます…。さすがに、この行為を好ましく思いたくないですから…」

「まぁ…気にしなくていいさ。さっき痛いっていったのはあれだ…熱くないのに、熱いっていっちゃうようなもんだよ。痛覚を今は切ってるからね。全然もう少し腿ミンチにしたいのが性癖だったらどうぞって感じだよ」

「性癖じゃねえです。はぁ…あなたが痛くないのはわかってますよ…さっきの「痛っ…」は痛くないデコピンされたときぐらいの反応ですから。でも…これだけ血が出るとその…やっぱりしんどくないですか」

「ぜーんぜん。私は、勇者だよー。さっきも言ったように痛くないし・つらくないし・問題ない、それに行きたいんだろう旅に。避けられないさ。」

「…はい」

「じゃあ、仕方ないだろう。ふぇると君、割り切りなさい。あと布はなるべく直視しないほうがいい。ふむ…一応、おまじないかけたげるよ。ほらおでこ」

「?」

おずおずとおでこを出すふぇると。

まだ残っている腕でアガツミが体を起こす。

「はぁ~い。ちゅっ…と」

「…」

「おまじない、さ。ちゃんと効果はあるよ」

「…ありがとうございます」

「ん?なんだい照れてるのかい?」

「…あー、次いきましょう…」

「お~ん?まぁいいか…がんばりたまえ~」

「はぁ…よしやろう」

「ちゅっ…はーい。判断が遅~い」

「なっ…ああ入れますよ!早く入れますからっ!」

「優しくしてね…」

「なんか言い方ぁ!」

その後もなんとか苦戦しながら、彼女の体をなんとかバラバラにしたのだった。

なお、切った左脚からは触手が伸び、吸い込まれそうになり、

切った右腕は逃げ出そうとし、切った左腕には襲いかかられた。

最後首を切り落とした時には、謎の裂けめが空中に現れ、上半身半分を呑み込みかけたところで腰に下げた錆色の片手剣が熱を帯びたおかげで、吐き出された。

そして最終的には、首以外の体を果てしない紅色をした血吸いの白布で包み、

紐らしき何かで硬く縛り異空間に通じる断面に放り込んで終着した。

裂けめはアガツミの収納魔法の空間と繋がっているらしかった。

残るは首一つ。

明日、俺は愛しきその首と旅に出る。

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