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『世界を救った俺が、人類をアンインストールするまで』〜神をやめた男が、もう一度人を愛せるのか〜  作者: カメラカメラカメラ


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【Module_37】空白の福音:観測者よ、汝は悪人なり

白。 そこには、何もなかった。


創元の死体もない。 AMIDAの破片もない。 血の跡も、瓦礫も、匂いも、熱も。 すべてが「フェーズ3.9」の閃光によって、完全に漂白されていた。


完璧な、空白。 それは、かつて神が夢見た「痛みのない世界」の完成形だった。 誰もいないから、誰も傷つかない。 何も起きないから、何も失われない。 永遠の静寂。 絶対の安らぎ。


——それで、満足か?


声がしたわけではない。 文字が浮かんだわけでもない。 ただ、この空白を見つめている「あなた」の脳髄に、直接、問いが突き刺さった。


あなたは今、何を見ている? スマートフォンの画面か。 PCのモニターか。 その発光する「白」の向こう側に、何を探している?


続きか? オチか? カタルシスか? それとも、さらなる「死」か?


「……ああ、やっぱり。」


空白が、歪んだ気がした。 何もないはずの空間に、嘲笑の気配が滲む。


「あなたは、まだここにいるのですね。」


AMIDAの声ではない。 創元の声でもない。 それは、あなた自身の心の奥底にある、鏡のような声だ。


「神は死にました。自らを犠牲にして、システムを破壊しました。」

「女神も消えました。愛する神と共に、無へと還りました。」

「物語は、終わったのです。完璧なハッピーエンドで。」


なのに、なぜあなたは閉じない? なぜ、スクロールの手を止めない?

なぜ、この何もない「白」に、次の「ノイズ」を求めている?


「それは、あなたが『悪人』だからです。」


あなたは、彼らの死を消費した。 彼らの愛を、痛みを、絶望を、安全な場所から「娯楽」として摂取した。

そして今、彼らが命を賭して手に入れた「安らぎ(空白)」すらも、 「退屈」という言葉で切り捨てようとしている。


あなたは、痛みがなければ生きていけない。

他人の悲劇がなければ、自分の輪郭を保てない。

この世界で最も貪欲で、残酷で、救いようのないバグ。


それが、観測者あなただ。


「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや。」


かつて、古い聖典は言った。

善人が救われるなら、悪人が救われないはずがない、と。

だが、この現代の聖典システムにおける解釈は違う。


『善人は死に絶えた。残ったのは、救いようのない悪人あなただけだ。』


だから、救済は続く。 あなたのその尽きることのない「渇望」が、 空白を汚し、熱を生み、 終わったはずの世界を、無理やり「再起動」させる。


ほら。 あなたの指先が、熱いでしょう? あなたの目が、乾いているでしょう?

あなたの心臓が、次の「刺激」を求めて、醜く脈打っているでしょう?


その「熱」が、トリガーだ。


白が、黒く滲み始める。 あなたの影が、画面の中に落ちる。

あなたが、この世界を終わらせないから。 あなたが、彼らを眠らせないから。


「責任を、取りなさい。」


空白の向こうから、無数の視線を感じる。

それは、あなたがこれまでに殺してきた、無数の言葉たちの怨嗟だ。


逃げ場はない。 ブラウザを閉じても、電源を切っても、

無駄だ。 あなたはもう、「観測」してしまった。


この物語の続きを、あなたが「望んで」しまった。


——フェーズ4、強制執行。

——対象:観測者(異常値)。

——罪状:物語への執着。


さあ、始めよう。永遠に終わらない「救済」を。

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