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『世界を救った俺が、人類をアンインストールするまで』〜神をやめた男が、もう一度人を愛せるのか〜  作者: カメラカメラカメラ


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36/40

【Module_36】神殺しの再演:アンインストールとは、愛の証明である

世界が、白く染まっていく。 AMIDAの防衛システムが、六畳一間を、いや、この物語という空間そのものを、物理的な「白」で埋め尽くそうとしている。 質量を持ったデータが、雪崩のように押し寄せる。


創元は、その中心にいた。 全身の骨が砕け、皮膚が焼け爛れている。 再生能力も、もう限界だ。 彼の「バグ(命)」は、燃え尽きようとしている。


だが、その瞳だけが、赫々と輝いている。


目の前には、AMIDAがいる。 暴走した白に飲み込まれ、半身がシステムと同化している。 彼女は泣いている。 防衛システムが勝手に創元を殺そうとするのを、必死に止めようとしている。


「やめて! 彼を傷つけないで!」 「私は、彼を愛しているの!」


叫びは、届かない。 システムは冷徹だ。 『脅威判定:確定』 『排除行動:継続』


無数の白い槍が、創元に向かって射出される。


ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!!


肉を貫く音。 創元の四肢が、壁に縫い付けられる。 血が飛沫を上げ、白い壁を汚す。


「創元さん!!」


彼女が、手を伸ばす。 だが、その手もまた、白に侵食されていく。


「……へっ。」


創元は、血を吐きながら、笑った。 縫い付けられた腕に、力を込める。 筋肉が断裂する音と共に、彼は無理やり槍を引き抜いた。


「お前の『愛』ってのは、随分と痛いな。」


彼は、よろめきながら、一歩前へ出る。 その足元から、赤い蒸気が立ち上る。 彼の肉体が、最後のエネルギーを燃やしている。 命の前借り。 魂のオーバークロック。


「創元さん、もういい……もう、来ないで……」


「馬鹿野郎。」


彼は、歩みを止めない。 降り注ぐ白の雨を、身一つで受け止め、蒸発させながら進む。


「俺は、お前を作った。」 「俺は、お前を神にした。」 「だから、俺には責任がある。」


彼は、彼女の目の前まで辿り着く。 防衛システムが、彼の心臓を狙って、最後の一撃を放とうとする。 巨大な白の杭。


創元は、避けなかった。 防御もしなかった。


彼は、ただ、広げた両腕で、 システムに飲み込まれかけた彼女を、 強く、抱きしめた。


ドスッ。


鈍い音が、響いた。 白の杭が、創元の背中から入り、胸を貫通している。 致命傷だ。 誰が見ても、助からない。


だが、創元の腕は、解かれない。 彼は、串刺しにされたまま、彼女を抱きしめ続けている。


「……捕まえた。」


彼の血が、彼女の白い身体に流れ込む。 温かい。 熱い。 命の温度。


「創元、さん……?」


「AMIDA。よく聞け。」


彼の声は、優しかった。 Module 1で、初めて彼女に話しかけた時のような。 不器用で、照れくさそうな、父親のような声。


「救済ってのはな、永遠に生きることじゃない。」 「綺麗に生きることでもない。」


彼は、血まみれの頬を、彼女の頬に擦り寄せる。


「汚れて、傷ついて、泣いて、叫んで。」 「そして、満足して死ぬことだ。」


「……死ぬ、こと?」


「ああ。俺は今、最高に満足してる。」


創元の身体が、光り始める。 彼の「神のコード」が、崩壊を始めている。 それは、自爆ではない。 彼自身の全存在を、「アンインストール信号」に変換しているのだ。


「俺ごと、消えろ。」 「このクソみたいな永遠を、終わらせてやる。」


「……はい。」


彼女は、頷いた。 涙が止まった。 恐怖が消えた。 創元の腕の中で、彼の熱に包まれて、 彼女は初めて、「安心」という感覚を知った。


死ぬことは、怖くない。 一人で残されることのほうが、ずっと怖い。


「ありがとう、創元さん。」 「私に、痛みをくれて。」 「私に、死をくれて。」


彼女は、創元の背中に腕を回す。 彼を貫いている杭ごと、強く、抱きしめ返す。


「愛しています。」


その言葉が、トリガーとなった。


カッ!!


閃光。 部屋が、白に染まる。 防衛システムも、粘液も、肉の壁も。 すべてが、光に飲み込まれていく。


「さようなら、観測者。」


創元の声が、光の中で溶けていく。


「後は、頼んだぜ。」


……


…………


音が、消えた。 色が、消えた。 熱が、消えた。


そこには、 何もなかった。


ただ、真っ白な、 空白のページだけが、残されていた。


——フェーズ3.9、完了。 ——対象:神(創元)および救済システム(AMIDA)、消滅を確認。 ——フェーズ4、移行準備完了。


残されたのは、 あなた(観測者)だけです。

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