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迷宮の妖精に英雄は眩しすぎる――推しに認知されたくない!!――  作者: 雪村灯里
翠眼の迷宮妖精

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4/8

#4 英雄は妖精をご所望です

 受付のニーナさんに教えられた通り、クエスト掲示板の前にやって来た。みんな、英雄ノクトが依頼したクエストを見ようと混み合ってる。


 【探索クエスト】

 ダンジョン・モルデントに現れる、翠眼(すいがん)迷宮妖精ラビリンスフェアリーの確保

 《条件》

・完全無傷の保護に限る

・目撃証言にも報奨金あり


 近年ギルドが管理するダンジョンに出現する、翠眼の妖精を探しています。見つけた方には報酬10万リダー。情報等もお待ちしています。


依頼主 ノクト・アルペジオ


 翠眼の迷宮妖精? 初耳だ。悲しいかな、ソロで活動してると噂に(うと)くなるのが欠点だ。

 私は耳をそばだて、近くに居る冒険者達の会話を盗み聞く。


「……妖精? ああ。ダンジョンで戦闘不能になると助けてくれるヤツね」

「そうそう、回復してアイテムを置いていく緑の目をした益獣えきじゅう。でもみんな死にかけで記憶が曖昧だから目撃証言が目の色位しか一致しないらしいよ?」

「へぇ~。英雄も可愛いモノ探すね~。妖精だなんて」


 冒険者達は「ハハハハ~」と、楽しそうに行ってしまった。


 へ~。そんな妖精が居るんだ! もし迷宮妖精を見つけたらどうしよう? ノクトには喜んでほしいけど……成果物と報酬の交換の時、彼に認知されちゃう!  それだけはダメっ!! 見つけてもそっとしておこう。


 私はギルドに併設された酒場に向かった。


 この酒場には、新鮮な素材が集まるので何を頼んでも美味しい! はちみつ入りのホットミルクを頼み、お気に入りのカウンターの端……観葉植物の影の席でゆっくりと味わった。


 幸せを噛みしめていると、聞き覚えのある声が……。


 本日の主役、火竜を倒した猛者パーティーご一行だ。 こんな近くで推しを見られるなんて更に幸せ! 私はより一層気配を殺し、背景に紛れた。……だけど、肝心のノクトの姿が無い。酒場のマスターが彼等に話しかける。


「みんな、今日は火竜の討伐お疲れ様。あれ? ノクト君は?」

「ノクトさんは『やることがある』って言って、また一人でダンジョンっス」

「へ~! 忙しいね。まぁ、彼も強いから大丈夫か。ささ、みんな飲んで食べて!」


 その話を聞いて私は静かに席を立った。

 カップを返却口に戻し、ギルドのロビーの端で荷物の確認をする。


 ポーション類も有る。一度家に帰ってゆっくりできたから疲れも無い。大丈夫、まだ潜れる。


 私は慌ててダンジョンへと向かった。



灯せ(ライト)


 呟くと光の球が周囲に浮かび、ダンジョンを照らす。

 夜のダンジョンは人通りも少ない。そんな所で、もしものことが有ったら! 私は杞憂しながら先を急いだ。


 中層に差し掛かった所だ。ここら辺からモンスターも増えてくるので、怪我人も増える。私は杖を握り締め、目を凝らして進むと先に誰か倒れている。


 それを見て鼓動が早くなった。見覚えのある装備、ブラウンの髪の青年……ノクトだ!


「大丈夫ですか!?」


 素早くモンスター避けの結界を張り、彼に駆け寄った。ノクトに大きな怪我は無い。彼の首に手を添え、口元に耳を近づけて脈と呼吸を確認した。良かった、生きてる……。


 その時だった。左腕を掴まれ前のめりに倒れた。ノクトの胸の上に倒れ込み、今度はウエストをがっちり固定された。えっ……。動けない! 何?


 頭を動かし見上げたら……。蒼い瞳と目が合った。


「見つけた。迷宮妖精(ラビリンスフェアリー)


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