第1話 歩き
あんなに高かった日が西の山脈に沈んでいく。
1日ってこんなに短かったかな?
楽しい気持ちだからこそ、そう感じているのかな?
まあいいだろう、何も悪いことではない。
そんな身軽さが、僕をどこまでも行ける気にさせた。
(5分後)
どうしてだろう、前に進めない...
心の中ではずっと「進むまなきゃ」と思っているのに、洋袴を動かすことも叶わない。
そこらで拾った木の枝に頼る自分が惨めすぎる…
もう、なんて日だ!
しかし、こんな山中で嘆いている場合ではない。
昔、亡き父からこんな噂を言われたことがある。
「行ってきます!」
「お〜い、夜8時までには絶対に帰って来るように。」
「え、どうして?」
「子供が夜遅くに歩いていると、この辺りの山に住むあいつに誘拐されてしまうんだよ。」
当時は「子供扱いするんじゃねぇ」と思うだけだったが、まさか10年の時を経てその身になるとは思わなかった。
全く、運命ってのは融通が効かないものだ。
「ササササ」
ん?なんか音が鳴ったような。
気にするな、まさかここで出会うわけが...
「ガサササ」
え!絶対なんか来てる!
「ガサガサ」
急げ!残ってる力で歩く速さを上げるんだ!
「ガサガササササ」
まずい、あんまり動かない。
「バサッ!グウオオオ!」
だ...駄目だ、誰かあああ助けてくれぇ!!!