別室へ
メイド風の女性が数人、真達の元へ近づいて来て「別室へご案内します」と声をかけて来た。
真は美咲と目を見合わせて、とりあえず着いていく事にした。
とりあえずはこの大勢の人達の見せ物になっているよりは、きっとマシだろうと思ってもいた。
サイゼ○ヤのテーブルや椅子と一緒に飛ばされて来ていた、陸のママバッグや自分達のバッグや携帯を引っ掴み、案内に従い家族はホールを出る。
廊下に出るとホール内と遜色ない程に、豪奢な造りの廊下に真は驚いた。
アンティークな雰囲気の壁紙は天井まで続き、窓際にある猫足のテーブルは、細かい花の彫り物があしらわれている。
花の真ん中には1つづつ、宝石でもはめ込んである様だ。
テーブルの上にはお宝鑑○団に出て来そうな、立派な大きな花瓶。
花瓶に生けられている花々も、丁寧に手がかけられている事が伝わってくる。
この立派なテーブルと花瓶のセットが、1セットでも数十万はしそうな物が、5m間隔くらいで窓の前に全て置かれている。
廊下もとても長く、床にはペルシャ絨毯の様なものがずっと敷かれている。
これまた豪華な金枠で縁取られた窓に近づいた時、見えたのは広大な西洋風の庭園。
「。。、一体ここはどこなんだ。。。?」
窓の外の風景に、真は思わず足を止めて呟いた。
その横で美咲も、
「本当に異世界に来たというの。。?」と、
不安そうだ。
唯一桜だけは
「マジで異世界っぽいじゃん!凄くない?」
「ベルサ○ユ宮殿ってこんな感じかなー?」と、楽観的だ。
キョロキョロと周りを見回す陸を、しっかり抱っこしたまま真はしばらく立ち尽くしていた。
案内のメイド達は立ち尽くす時間を、静かに待ってくれていた。
だが少ししてから、メイドの1人の「ご案内致します。」という声で我にかえり、再び案内に従い家族は長い廊下を進んでいく。
宮殿風の扉をいくつも通り過ぎ案内された部屋は、やはりとても豪華で広い。
桜いわく、「学校の教室6つは入るね!」という広さ。
壁際には所々ヨーロピアンな柱が建てられ、置かれているテーブルや椅子等全てが高級アンティーク間違いなしの雰囲気を醸し出している。
部屋は絨毯と壁紙の色で、微妙に2つに分かられている印象だ。
扉から手前半分の空間には、8人位が座れる大きなオーバル型のテーブルと椅子が置かれている。
晩餐会の絵画とかに描かれていそうな雰囲気だ。
そして扉から奥の半分には、ソファーと少し低いテーブルで4人がけくらいの席が2カ所、くつろぎスペースの様な感じだろうか?
「こちらのお部屋でお待ちください。
何か御座いましたら、扉の外におりますのでお声をお掛けください。」と、メイド達は部屋を出ていく。
部屋の扉がパタンと閉まった瞬間、真は一気に全身に疲労感を覚えた。
そしてさらに頭はフル回転で色々と考え始めたが、考えは全くまとまらない。
だか真がグルグルと思考を巡らし、扉の近くで陸を抱いたまま立ち尽くしている間、美咲は部屋の奥のソファーへ行き、そこのテーブルで陸のミルクを作り始めた。
「今のうちにミルク飲ませとこう!」
「オムツも変えたいけど。。ちょっとここじゃダメだよね?」
「ママバッグがあって良かった〜!」と1人で話している。
うん。。母は強いな。
桜は部屋の色んな所を物色している。
「見て!このテーブル可愛い!」
「ディズニープリンセスの世界でありそうじゃない!?」
「羽ペンまである〜」と楽しそうだ。
そんな2人をみて、とりあえずは落ち着いて腰をかけようと、真は粉ミルクを作っている美咲の元へ近づく。
ソファーへ腰をおろすと、ふっかりと腰が包み込まれる様な感覚。
座り心地まで高級なんて凄いな!と真は、心の中で思わず呟いていた。