幼馴染とお弁当
「一度でいいから幼馴染にお弁当を作ってもらえる人生が良かった」
「キショイ」
「キショくないだろ、寧ろ控えめすぎる願いだろ、幼馴染にお弁当を作ってもらいたいだけだぞ、しかも一回、味、量、見た目は問わず」
「まず幼馴染がいないでしょ、最初から間違ってる」
「もうご飯詰めてくれるだけでいいんだけどな」
「自分でやれ。何夢見てんの」
「俺達ギリ幼馴染にできないか?お前は幼馴染ヒロインだったりしないか?」
「しない。私達中一からでしょ」
「そうか、女子にお弁当を渡されるというシチュエーションが欲しいのか、俺は」
「知らないわよ。つーか、さっさと食べなさいよ。昼休み終わっちゃうわよ」
「幼馴染にお弁当作って貰ってる男子をお前は肉眼で見たことがあるか?」
「オタクに優しいギャル以上に見たことがない」
「そっちのがいるのか?」
「いないわよ、どっちも」
「そうかいないのか」
「いません。もうこの話はおしまい」
「つーか、お前の母ちゃんが作ったものって何でも美味いよな。なんつーか、複雑な味がする」
「複雑?」
「このミートボールとか、単にケチャップだけならこんな味にならんだろ」
「ママが作ってるから知らないわよ」
「この間の黒酢の酢豚がものすごく美味しかった。史上最高酢豚。俺の知ってる酢豚じゃなかった」
「そう」
「あとチーズ入れた卵焼き」
「何、あんた、私のママのお弁当食べたいってだけじゃないの。幼馴染どこいったのよ」
「うーん」
「うーんじゃないわよ。可愛い幼馴染にお弁当作って来て欲しいんでしょ」
「可愛くなくていい、嫌。可愛くないわけないからな、幼馴染ってだけで可愛いんだ」
「はいはい。もうホントにキショイ」
「お前だって何かあるだろ、属性が」
「ないわよ。私より背が高かったらそれでいいわよ」
「俺じゃん」
「あんたよ。何回このやり取りすんのよ。もう飽きた。明日ママにお弁当作ってもらってあんたの教室まで行って渡してあげようか?」
「嫌、お前は彼女だから」
「わかってるわよ。もうさっさと食べなさい。この贅沢者、貴族か」
「贅沢言ってないだろ。弁当箱にご飯詰めて欲しいだけだぞ」
「私みたいに美人な彼女がいるのに幼馴染が欲しいなんてほざくのが贅沢だって言ってんの」
「はは、ホントにな」