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ユダ=イスラエル 及びエンディング

「よし、出撃だ!」

天馬たちはブリッジから降りて、テオスファイラの内部に侵入した。

おそらくユダは気づいているだろう。

どのような防衛機構があるかは知らないが、この戦いは今までのどんな戦いより厳しくなるだろう。

天馬は闘志の炎を燃やした。

テオスファイラの中は白銀の結晶世界(Die Kristalwelt)だった。

見わたす限り、白銀の世界が広がっている。

道は通じているようだが、どこを通ればいいのか。

「ここは白銀の世界か……道が通じているな」

天馬は結晶の配置を看破した。

「大きく、迂回しなければならないようですね。慎重に進みましょう!」

ハルカが言った。

六人は迂回するように円を描いて、白銀の世界を移動した。

途中、敵はいないようだった。

どうやらユダは自分の手ですべてのケリをつけるつもりらしい。

天馬たちは中心部から上に続いていた道を通り、さらに上昇した。

きらめく銀世界の道をみんなは駆けあがる。

そしてそこはテオスファイラの中枢。

そこにユダはいた。

そこにはユダの趣味か、高級で豪華なソファーが据えられてあった。

「フフフフフ……ようやく来たね。待ちくたびれていたところだよ」

ユダが妖しく笑う。

天馬はそれに不快感を感じた。

ユダのやり方が気に入らない。

まるで遊んでいるようだ。

「ユダ! おまえを倒してすべてを終わらせる!」

天馬が刀をユダに突き付けた。

天馬の心が、みんなの心が熱を帯びていく。

この戦いですべてを決める! 

それは天馬たちの一致した想いだった。

全員が武器を構えた。

「フッフッフッフ! 地球もテラもすべてぼくの前にひざまずくのさ。その邪魔はさせないよ」

ユダがあざ笑うように言う。

「ふざけるな! 俺たちはおまえの支配など認めない! 必ずおまえを倒して決着をつける! 地球とテラはわかり合えるはずだ!」

天馬の中に熱い思いが湧きあがってくる。

それが天馬の口を動かし、言葉をはかせる。

「フッフッフ! さて、それはどうかな? 結局はどちらか一方が他方を支配する関係しかありえないのさ! さあ、天馬! 美しく! 美しく! 美しく! 美しく! 美しく散ってくれたまえ! 君はぼくの力にひれ伏すんだ!」

ユダは陶酔したように話し出す。

天馬はこの男のそんなところが嫌いだった。

「誰がそんなことをするか! 俺たちは決しておまえには屈しない!」

天馬がユダをにらみつける。

その目に宿るのは闘志。

「フフフフ……もはや言葉を交わしても無駄のようだね。ならばぼくの力を思い知るがいい!」

ユダは自身の前に穴のような闇を出現させた。

その中から一本のサーベルが現れる。

ユダはそれを手に取った。

「これでもくらいなさいな!」

ツェツィーリアがユダの態勢を待たずに銃砲で射撃する。

「いっけえ!」

アンジェリーナの矢が飛来した。

二人はユダに同時攻撃を仕掛けた。

二人の息はあっていた。

これが出会った当時だったらここまでできなかっただろう。

訓練だけではない。

実戦だけでもない。

血と汗の結晶とでもいうべきものだった。

ユダは手にしたサーベルで二人の攻撃をあっさりはじく。

ツェツィーリアは苦悶の顔、アンジェリーナは驚きの顔。

二人は同時攻撃でユダに手傷くらいはつけられると思っていたのだが、ユダはたやすくそれを止めた。

どうやら、ただのナルシストではないようだ。

この一件からも、ユダはかなりの実力者であることが分かる。

ソフィーヤとハルカがユダに攻撃する。

ソフィーヤは槍で突き、ハルカは刀で斬りつける。

ユダはそれらを軽くあしらった。

ユダは剣技においてもその極みに達していた。

「フフフ……サンダーストライク!」

雷の弾がソフィーヤとハルカを襲う。

それは感電しながら、二人を吹き飛ばす。

「ああああ!?」

「くうっ!?」

ソフィーヤとハルカから苦悶の声が漏れ出た。

「フフフフフ……サンダーストーム!」

雷の嵐が六人を襲う。

すさまじい雷電が火花を散らす。

「クッ! 散開しろ!」

天馬は隊員たちに散開の指示を出す。

どうやらユダは雷の魔法を使えるらしい。

「フフフ! それを待っていたよ! 雷電雨!」

雷が雨のごとく天馬たちに降り注ぐ。

雷電は恐ろしく正確に天馬たちに襲いかかった。

ユダはあえてサンダーストームで天馬たちを分散させ、それから雷電雨で広範囲を狙ったのである。

ユダの攻撃は苛烈を極めた。

「はっ! 天光斬!」

天馬はユダに斬りかかる。

ユダはあっさりとサーベルで天馬の攻撃を受け止めた。

「フッフッフ! どうしたんだい、天馬? 君の力はそんなものかい?」

ユダには余裕があるようだ。

ユダは天馬の刀をサーベルで弾いた。

「少し強くいこうとするか。闇魔斬あんまざん!」

ユダが闇の斬撃を放った。

天馬は天光斬で迎撃を試みる。

光と闇の斬撃がぶつかり合った。

しかし、勝ったのはユダの斬撃だった。

ユダの斬撃が天馬の肩に当たる。

天馬の右肩が吹き飛び、肩から血が流れた。

「隊長!」

フローネが後退してきた天馬に近寄る。

すぐに回復魔法で天馬を癒そうとする。

天馬の肩はフローネによって癒された。

「ありがとう、フローネ! これで俺は戦える!」

天馬が鋭い目つきをユダに浴びせた。

ユダは天馬たちを見下す。

「さすがは六人のチームプレー……さすがだよ。それに敬意を表して、ぼくも全力を出そうじゃないか!」

「!?」

闇が膨れ上がった。

ユダの体を闇が覆っていく。

ユダの体は完全に闇に覆われ、見えなくなった。

「フッフッフッフッフ! フハハハハハハハハ!」

ユダの哄笑が響く。

闇の中から、四枚の黒い翼を生やしたユダが現れた。

ユダ=イスラエル(Juda-Israel)である。

「フフフフフフ! さあ、天馬、行くよ! ぼくの闇の力を思い知るがいい! フィンスター・ラウム!」

ユダが六人を闇で覆った。

黒い闇が六人を包み込む。

六人は悲鳴を上げた。

「うおおおおおおお!?」

「「「きゃあああああああ!?」」」

「「あああああああああ!?」」

「大闇力!」

ユダが闇のドームで天馬たち全員を呑み込んだ。

闇力は闇属性魔法で、使い勝手がいい魔法である。

広範囲を攻撃できる。

闇は紫色にどよめいた。

「さて、これで……ん?」

闇の中から広範囲光魔法が現れた。

フローネの回復魔法だ。

花びらを咲かせたような光と共に六人は癒された。

「フハハハハハ! そうさ! そう来なくてはね! さあ、行くよ! フィンスター・マハト!」

六人を闇の剣が全方位から狙ってくる。

それは発射されて、六人に襲いかかった。

天馬たちは悲鳴を上げた。

致命傷は防いだが、全員血だらけだ。

すかさず、フローネが回復魔法を発動する。

全員が再びユダへと闘志を燃やす。

「みんな! 最強の攻撃をユダに叩き込むぞ! ユダを一気に打ち破るんだ!」

天馬が号令をかける。

シスターズは技の構えを取った。

「フフフ、できるかな?」

あくまで侮るユダ。

ユダは天馬たちを格下の存在だと思っていた。

やがて天馬たちは自分にひれ伏すに違いない……。

そう思っていたのだ。

「光束射!」

アンジェリーナは光が束ねられた矢を射る。

アンジェリーナの光の矢はユダが出した闇に吸い込まれた。

「エーテルビット!」

ツェツィーリアがエーテルビット六基と、青いビームを同時に放った。

そのすべてをユダの闇が吸いつくす。

「氷花槍!」

ソフィーヤが氷の花のような槍撃を出した。

それがユダの肩をかすった。

「くおっ!?」

「今だ! 月光斬!」

ハルカの攻撃が三日月のような軌跡を描く。

ユダは闇でハルカの攻撃を吸収しようとしたが、完全には吸収できず、手に傷をつけた。

「はっ! くらえ! 天光覇斬!!」

天馬の最強の攻撃が、ユダを襲う。

天馬の光は強烈に輝いて、ユダを呑み込んだ。

ユダの悲鳴は光の中にかき消えた。


ユダは倒れた。

口から血を吐く。

「かはっ!? ……ぼくは、負けたのか……」

「ユダ……」

天馬の顔がユダの目に映った。

天馬は哀れみをこめてユダを見つめていた。

ユダはすべてを悟ったように脱力した。

「フフフ……天馬、少し昔話に付き合ってくれるかな?」

「昔話?」

「そうさ。実はぼくもなんだよ」

「何なんだ?」

ユダは確信めいた表情で。

「実はぼくもテラ人と地球人のハーフなんだ」

「!? なんだと!?」

天馬が驚きの貌を見せる。

「フフフ……もっとも地球人の父親とテラ人の母親のもとに生まれたのだけど……テラは父系でね、父方の血筋を気にするのさ。だからぼくはさげすまれた。父親が地球人だったからね。ぼくは周囲からいじめられて育った。そんなぼくを母さんはかばってくれた。だけれど、ぼくは自分の血を恨んだ。ぼくは一人だった。ぼくと君は対極の存在だったのさ、天馬」

「……」

天馬は無言だった。

天馬はユダを哀れに思った。

だが、ユダのしたことは許されることじゃない。

ユダがいかに酌量のある過去を持っていようとも……。

もっとも、弁護人くらいはつけてもいいが。

「君はぼくと違って仲間に恵まれている。ぼくにもそういう存在がいれば違った未来を送れたのかもしれないね……」

ユダは自嘲気味に笑った。

天馬はユダを説得しようとする。

「いや、まだ遅くない。今からでも罪を償うんだ。そうすれば、みんなおまえを受け入れてくれる」

ユダは天馬を驚きの目で見つめた。

それから力なく笑った。

「天馬……フフフ……ありがとう……さようなら」

ユダは自らを闇で包んだ。

フィンスター・マハトだ。

「ユダ!?」

ユダの体は跡形もなく消えていた。


ユダは死んだ。

ユダが倒されると、テオスファイラは崩壊を始めた。

結晶世界が轟音を立てて崩壊する。

御前山はめちゃくちゃになった。

天馬たちは一人もかけずに、ブリッジに帰還した。

戻ると、ユーリアが一人一人を抱擁した。

天馬たちの戦いは終わったのだ。

この戦いののち、月州連邦共和国大統領とテラ人ヨセフは会談を行い、双方の世界で交流を活発化することで合意した。

そして、その初めての交換留学生に天馬たちが選ばれた。

テラの側からはヨセフの息子、エフライムとマナセが選ばれた。

そして、テラに向かう前日の夜、天馬の部屋にて。

「なあ、フローネ」

「はい、何ですか、天馬さん」

「驚かないで聞いてほしい」

天馬は照れていた。

後頭部をかきむしる。

これは天馬が照れているときにする癖だった。

「?」

フローネは静かに聞いていた。

「俺は君に俺のパートナーになってほしい。つまり、その、なんだ、俺と結婚してくれ!」

天馬はもじもじするのは嫌だったので、直球を投げた。

「天馬さん……はい! 私でよければ、喜んで!」

フローネは感極まった。

フローネの瞳から涙が流れる。

「ああ、フローネ!」

天馬はフローネを抱きしめる。

そして強引に唇を奪った。

天馬はフローネの胸をつかんで愛撫する。

フローネが唇を離す。

「あっ、あっ、そんなことされたら私……」

「そんなことをされたら?」

天馬は意地悪く聞き返す。

「ああ、天馬さん……私を抱いてください」

「ああ……」

こうして二人は結ばれた。

二人は互いを激しく求め合い、愛し合った。

La fine

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