テオスファイラ
天馬たちはヨセフたちと再び合流した。
そして、天馬はヤコブの塔で起きた出来事をすべてヨセフに報告した。
「ふざけるな! 俺たちはユダの奴に利用されたってのか!」
シメオン将軍が声を荒げる。
シメオン将軍は武闘派で、短気で気性が荒く、軍人らしい人である。
もともと父親から軍隊教育を受けており、それで、ヘブラエイの軍隊に入った。
シメオン将軍は仕えるべき理念がある人である。
「まあ、そういうことになるでしょうね。すべてはユダの支配のため……」
ヨセフが暗い顔を見せる。
一室の空気が暗くなった。
「それで、どうする? 俺たちはすぐに地球に帰りたいんだが……」
天馬が控えめに要求した。
「そうですね。私たちは天馬殿に恩義がある。それを果たしましょう。シメオン将軍! ナフタリ号の準備だ!」
「はっ!」
シメオン将軍が退出していった。
「ナフタリ号? それは何です?」
天馬はヨセフ市長に尋ねる。
「それは次元跳躍能力を持つ、我々の空飛ぶ船ですよ」
ユーリアは基地にある礼拝堂で祈っていた。
ユーリアはひざまずいて、天馬たちが無事に帰ってくるように神に祈りを捧げた。
「主なる神、ヤハウェよ。私の部下たちが一人も死なずに帰ってきますように」
ユーリアの心は天馬たちなら大丈夫という気持ちと、不安の間で揺れ動いていた。
「あら? ユーリア司令も祈りに来たんですか?」
ユーリアは振り返った。
そこには白衣に軍用スーツを着た医務官サーシャがいた。
ユーリアはここでサーシャと出会うとは思わなかった。
「サーシャ……あなたも?」
「はい、そうです」
サーシャはユーリアの隣でひざまずいて祈った。
もちろん、サーシャは天馬たちの無事を祈っているのだろう。
ユーリアが隣のサーシャに声をかける。
「天馬君たちは無事に帰ってくるかしら?」
ユーリアには帰ってきてもらいたいという思いがあった。
「ユーリア司令? 珍しいですね。ユーリア司令が不安を吐露するなんて……」
ユーリアはため息を出した。
「私は全員が生還した顔を見たいのよ。それで……」
その時、建物が急に揺れた。
地震だった。
地震は大きく、礼拝堂が揺れ動くようだった。
震度5はあっただろう。
「地震!? 大きいわね!」
ユーリアとサーシャは地震が収まるのを待った。
やがて揺れも収まる。
その時、ユーリアのスマートフォンが鳴った。
ユーリアは電話に出る。
「はい、こちらユーリア=マリーアです。……なんですって!? 御前山が!? わかりました!」
ユーリアは緊急事態が発生したことを受けた。
「? どうしたんですか?」
「御前山よ。御前山に異変が生じたらしいわ。すぐに、外に出ましょう!」
ユーリアは外に出て、御前山を見た。
御前山は巨大な植物と化しており、その触手が周囲に張り巡らされていた。
そして、樹の上に丸い、大きな球体があった。
ユーリアはそれを見て戦慄した。
いったい何が起こっているのか。
ユーリアには現状を見ても何もわからなかった。
ユーリアは基地の中から変異した御前山を見た。
「あれはいったい何なの!? 天馬君たちと関係あるのかしら?」
そこでユーリアの上空にゲートが開かれた。
その中から、一隻の飛行する船が出現した。
「あの船は……あれは敵、それとも味方?」
それはナフタリ号であった。
ナフタリ号はメタリックシルバーの外観をしており、細長いシャープなデザインだった。
中央のクリスタルから光の柱が生じる。
その中から、天馬たちが現れた。
「天馬君! それにみんな!」
天馬たちは転送されたのだ。
「御使 天馬及び、隊員全員一人もかけることなく帰還しました!」
天馬が敬礼してユーリアに報告する。
ユーリアは目から、涙をこぼした。
「さすが、天馬君ね。ありがとう、みんな。全員無事に帰ってきてくれて! 私はみんなと再会できてうれしいわ!」
ユーリアは感極まった。
このまま、この余韻に浸っていたい。
だが、事態はそう行かないようであった。
「ユーリア大佐……感動の再会と言いたいところですが、まずは『あれ』を何とかするのが先決です」
「そうね。司令部に行きましょう」
天馬たちはディスプレイから変わり果てた御前山とテオスファイラを見た。
「……そう、この事件の首謀者はユダなのね」
天馬はユーリアにテラでの出来事を報告した。
そしてユダの目的が地球とテラの二つの世界を支配することにあると。
「あのテオスファイラの中にユダがいます。この事件を終わらせるためには、ユダを倒すしかありません。今すぐ突撃したいところですが、準備不足では返り討ちに遭う可能性が高いでしょう。明日、総攻撃をかけるといいかと。おそらく、ユダの野望を防げるのはスピードだと思います」
天馬が自分の所信を表明する。
天馬は度重なるダエモノイドとの戦い、そしてテラでの戦いでかなり鍛えられていた。
戦士としても、指揮官としても大きく成長した。
「そうね。今日はゆっくり休んで。明日、総攻撃をかけましょう。ほかのみんなも同じように休むように」
「「「「「はい!」」」」」
天馬はフローネの部屋を訪れた。
そして、フローネがしゃべることなく、いきなり口づけする。
「ん!? 天馬しゃん!?」
フローネが抵抗するようなそぶりを見せる。
だが天馬にはわかっていた。
フローネはわざと抵抗しているのだ。
そうして、天馬のアプローチを誘っているのである。
「いやか?」
天馬は短く問う。
天馬は今しかないと思った。
決戦は明日。
この任務も生きて帰れるかわからない。
天馬はフローネを抱きたかった。
「いいえ……逆に私から言いたいです。私を抱いてください……」
天馬はフローネと濃厚なキスを交わす。
天馬はフローネの唇に吸い付き、下をからめる。
それからフローネの発達した胸に顔をうずめる。
それから天馬は服の上からフローネの胸を愛撫する。
「あっ、ダメです……服の上からなんて……」
「フローネ、愛しているよ」
「はい、私も愛しています」
二人は思う存分愛し合った。
「初めまして、テラ人のヨセフです」
「初めまして、ユーリア=マリーアです」
ヨセフとユーリアが互いに握手した。
ヨセフは身長が高いのでユーリアを見おろす格好になる。
「本来なら、外交について話をしたいのですが、今はテオスファイラをどうするかを考えましょう」
「その通りですね。サーシャ、御前山の様子を」
「はーい!」
サーシャが明るく返事をする。
サーシャはコンソールを操作して、ディスプレイに御前山の情報を映した。
「作戦は簡単です。まず、皆をナフタリ号に乗せ、テオスファイラに突入する。そして特殊防衛隊の六人を突入させ、ユダを討つ。それだけです」
ヨセフが作戦を語った。
「敵からの反撃はどうするのかしら?」
ユーリアが指摘する。
「おそらく、地上から行こうとすれば、あの根と触手にからみとられるでしょう。あれ……つまり覇王樹は空に対して攻撃するすべを持ちません。空から突入する方がベストでしょう」
「そうですね。それがいいでしょう。みんな、聞いた? これからナフタリ号に乗り込むわよ!」
ユーリアが命じた。
こうして。天馬たちの最後の戦いが始まった。
ナフタリ号ブリッジにて。
「あれが、テオスファイラ……」
天馬は深紅に輝くテオスファイラを見て息を漏らした。
天馬はテオスファイラを見据える。
これが最後の戦いだ。
ユダとの決戦――。
必ず、ユダに勝って見せる。
「みんな! これが最後の戦いだ! 各人最高のコンディションで挑め!」
天馬がみんなに言い聞かせた。
「はい! みんなでいっしょに帰ってきましょう!」
とフローネ。
「当然ですわ! わたくしはシュヴェスター! ユダなんかに負けるものですか!」
とツェツィーリア。
「隊長の言う通りですね。この戦いですべてが決まる。そう思います」
とソフィーヤ。
「私たちみんなで帰ろうね!」
とアンジェリーナ。
「この戦いにすべてをかけましょう。私たちの全力で!」
とハルカ。
「俺はみんなと共に戦えることを誇りに思う!」
天馬が付け加えた。
「それではナフタリ号、テオスファイラに侵入せよ!」
ナフタリ号はテオスファイラに向けて出発した。
「フッフッフッフッフ! フッハッハッハッハ!」
その時妖しい声がした。
忘れもしない。
これは因縁の相手、ユダの声だ。
「!? この声は、ユダ!」
天馬が怒りをあらわにする。
「さあ、ぼくのもとに来るがいい! そこですべての決着をつけようじゃないか!」
ユダの言葉がテオスファイラから響き渡る。
ユダはこちらを招いているのだろう。
ということはユダには絶対の自信があるということだ。
ユダは自分が負けることなどありえないと考えているに違いない。
この声は皆に不快感を与えた。
「今のところ、何もありませんな」
シメオン将軍が発言する。
「安心したまえ! テオスファイラからの攻撃はない! さあ、早くぼくのもとにきたまえ!」
ユダが手を広げているさまが浮かぶようだ。
「ユダはああ言っているが?」
ヨセフがシメオン将軍に向ける。
「ユダの言葉は信用できませんな。ここは慎重に行動すべきかと」
ヨセフとシメオン将軍が互いに意見を交わす。
結局、攻撃を受けることはなく、ナフタリ号は吸い込まれるようにテオスファイラに入った。




