サン・マリーノ
サン・マリーノは経済と観光の町である。
オフィス街には高層ビルが立ち並び、その経済力を誇っている。
サン・マリーノでは起業家が多いことでも知られている。
公用語はイタリア語だが、英語も通じる。
それが魅力的な投資先になっている理由でもある。
イタリア語が公用語となっていることもあって、イタリア系移民が多い。
サン・マリーノは太平洋に浮かぶ『真珠』とほめたたえられていた。
天馬たちはサン・ジョヴァンニ空港に到着すると、すぐにホテル・ロマーノに向かった。
天馬は五人にビーチに集合との命令を出しておいた。
天馬は一人早くビーチに到着していた。
「さて……ビーチバレーの準備はできたし、あとはみんなを待つだけか。いったいどんな水着でやってくることやら」
天馬も男である。
女性陣がどんな水着を着てくるか、興味がないと言えばウソになる。
そもそも、特殊防衛隊は自分しか男がいないではないか。
いまさらながら、ハーレムかと苦笑する。
「隊長!」
「ん? フローネか?」
天馬に声がかけられる。
この声から天馬はフローネの声だと悟った。
最初にやって来たのはフローネのようだ。
天馬は振り返る。
そこには白いワンピースの水着を着たフローネがいた。
水着の白がフローネの白い肌を強調する。
デザインはシンプルで、白い色がフローネの銀髪と調和していた。
フローネらしい清楚なデザインだ。
天馬はフローネに見とれた。
フローネの胸や、お尻、太ももを見る。
見てしまう。
フローネのスタイルの良さがはっきり表れている。
「あ、あの、どうでしょうか?」
フローネが赤くなりながら、もじもじと尋ねてくる。
「あ、ああ。似合っている。かわいらしくて、すてきだよ……」
これは天馬の偽らざる気持ちだった。
二人して赤面する。
実はこれには裏があって、ほかの四人はあえてフローネを一人だけ先に行かせたのだ。
フローネを天馬に第一に見せるためだ。
そのため、四人はあえて遅れていくことにした。
「「「「隊長ー!」」」」
その声に天馬は現実に引き戻される。
「おっ、ほかの四人もやって来たか」
「お待たせしましたわ」
「お待たせしました」
「準備が手間取りましてえ」
「期待させてしまいましたか?」
ツェツィーリアたちがやって来た。
どうやら彼女たちはビキニ派とワンピース派に分かれたようである。
ツェツィーリアは青いビキニにパレオ。
ソフィーヤはシルバーのビキニ。
アンジェリーナはフリルのいっぱいついたワンピース。
ハルカはダークブラウンのビキニだった。
天馬はがん見しないよう気をつけた。
「さて、まずはビーチバレーを行う。二つのチームに分けてプレーする。その間、入れ替えも行うぞ。海に入るのはそれからだ」
「「「「「はい!」」」」」
六人はさっそくビーチバレーを行った。
運動神経はハルカとツェツィーリアが突出していた。
アンジェリーナはまるで駄目だった。
それでも六人は三対三に分かれてビーチバレーを楽しんだ。
天馬はアンジェリーナとフローネをフォローしながらハルカやツェツィーリアのスマッシュに耐えた。
さすがに能力のばらつきがあったため、最後はバランスを考えてチーム分けした。
天馬の目論見であるチームプレーはビーチバレーを通してかなりものになった気がする。
このビーチバレーで相互に協力することをシスターズは学んだようだ。
これなら、魔獣に一人突っ込んでいくことはないだろう。
天馬の目的は達成された。
ビーチバレーを昼まで楽しむと、それぞれお昼と自由行動。
泳ぐもよし、観光もよしだ。
シスターズは観光よりもショッピングを楽しんでいたようである。
日々はあっという間に過ぎ去り、とうとう帰国前日になった。
その日の夜、天馬はホテル・ロマーノから夜の町を見ていた。
ベンチに座ってスポーツドリンクを飲む。
「隊長……」
そこにフローネがやって来た。
ほおが上気している。
「隣、いいですか?」
「ああ、いいぞ」
天馬はしばらくフローネと話さなかった。
別に話したくなかったわけではない。
話さないことで、互いの存在を感じ取っていたのだ。
天馬は明かりがつけられた夜のビーチを眺めていた。
「隊長のおかげで、この休暇中は楽しく過ごすことができました。なんだか、あっという間でしたね」
「そうか。楽しんでくれて何よりだよ」
楽しい時はすぎるのが早い。
ふしぎなほどで。今回の休暇も過ぎてしまえばあっという間だった。
「ほかの四人はどうしたんだ?」
「ほかの四人はですね、何か用事があると言っていました」
この『用事』とは口実である。
ほかのみんなは天馬とフローネをくっつけるために、フローネを一人だけで天馬のもとに送り出したのだ。
「隊長……隊長は私のことをどう思っていますか?」
「え? あ……」
フローネの真剣な表情。
フローネはときめくような潤った目で天馬を見つめてくる。
天馬はこれを見て自分が正常ではいられなくなるような気がした。
天馬はドキッとした。
フローネとこうして二人きりで過ごすのは久しぶりだ。
思えば、ほかの四人に付き合っていた分、フローネとの時間が取れなかったかもしれない。
いや、きっとそうだ。
フローネは天馬との関係を変えようと思っているのだ。
それが天馬にはわかった。
それに対して自分はどう答えるべきか?
それは天馬にはわかっていた。
天馬はここで逃げるわけにはいかないと、勇気を奮い立たせた。
「好きだ、フローネ。愛している」
天馬は確かに伝えた。
それはさざ波のようにフローネに伝わった。
「!? 私も隊長を……天馬さんを愛しています」
フローネが身を乗り出してくる。
フローネは目を閉じた。
それは愛の印。
天馬はフローネの両肩に手を置くと、天馬はフローネを抱きしめるようにフローネと唇を重ねた。
かくして一行はサン・マリーノから帰国した。
帰国した天馬はフローネとの関係を重視した。
天馬にはフローネが生涯にわたって歩むべきパートナーに思えた。
そこで天馬は『ティファニー・リゾート』にフローネを誘った。
それも泊りがけで、だ。
フローネはこの意味を理解した。
天馬だって男だ。
性的欲求は持っている。
フローネはこの誘いに応じた。
二人は『ティファニー・リゾート』でアトラクションを楽しんだ。
一通り、レジャーを楽しむと、天馬とフローネは部屋に帰ってきた。
「天馬さん、私、テーマパークなんて初めてきました」
フローネはまだ興奮しているようだ。
アトラクションの余韻に浸っているのかもしれない。
「どうだった? 楽しかったか?」
「はい、天馬さんといっしょでしたから……」
まるで天馬といっしょならどんなところでも楽しくなると言わんばかりだ。
「そうか。楽しんでくれてよかった。誘ったかいがあったよ」
「……」
「……」
二人の視線が交差する。
二人は互いの顔を見ると、そのまま自然にキスをした。
二人もうぶではない。
この後何をするかはわかっている。
「フローネ、いいかい?」
「はい……優しくしてください……」
もはや二人には言葉は必要なかった。
そして、二人はその日一夜を過ごした。
それは思い出になるような日だった。




