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シスターズ

天馬は五人にフローネ、ツェツィーリア、ソフィーヤ、アンジェリーナ、ハルカに集合を命じた。

時間は昼間。

時は休日。

外出用の恰好をするよう指示した。

天馬は五人といっしょに外食するつもりだった。

「教官! お待たせしました!」

フローネがミニスカートでやって来た。

「フローネか、一番早かったな」

「まったく、わたくしを呼び出すなんて、一体なんですの?」

ツェツィーリアが顔をしかめる。

彼女はロングスカートをはいていた。

だがどこうれしそうだ。

「ツェツィーリアも来たか」

「教官、お疲れ様です」

ソフィーヤがにっこりとした笑顔で現れる。

彼女もシックなミニスカートで現れた。

「やあ、ソフィーヤ」

「アンジェリーナ、到着です」

アンジェリーナがフリルがたくさんついた服で現れる。

「よし、アンジェリーナも来たな」

「教官、一体何の用ですか?」

ハルカがジーンズをはいてやって来た。

「ハルカも来てくれたな」

天馬が五人の顔を見てうなずいた。

「これから、基地の近くのラーメン屋に行こうと思う。それでみんなを呼び寄せたんだ。行けないものはいるか?」

「私は教官とならどこでも大丈夫ですよ」

フローネが断言する。

「まあ、たまには庶民の食を食べるのも悪くはありませんわね」

ツェツィーリアがしぶしぶ肯定する。

「そこのラーメン屋っておいしいんですか?」

ソフィーヤは乗り気だ。

「麵を見るとパスタを連想しますよう……」

とアンジェリーナがつぶやく。

アンジェリーナはイタリア系移民だ。

パスタと麺は連想するに違いない。

「教官のおごりなのですか? わざわざ私たちを連れて行ってくれるということは期待していいでしょうか? 料理の研究にも一興ですね!」

とハルカが期待する。

「そのとおりだ。カネは俺が持つ。全員いけるようだな。それじゃあ、歩いて基地を出ようか」


天馬たちはラーメン屋『ドンベエ』にやって来た。

昼の前だった。

客の集まりがもっとも集中する時だ。

天馬たちは11時20分に基地を出発し、11時40分に『ドンベエ』へとたどり着いた。

『ドンベエ』の駐車場は12時前だというのに50%は埋まっていた。

天馬たちは『ドンベエ』の中に入る。

『ドンベエ』の中に入るとラーメンの匂いが天馬の鼻に入ってきた。

『ドンベエ』は中流家族を対象にした店だ。

そのため、席の数が多かった。

さっそく天馬たちは席に座ってメニューボードを見る。

「ねえ、教官? ここのおすすめはなんですかあ?」

アンジェリーナが尋ねてくる。

「ここのおすすめは『ドンベエ・スペシャル』だ」

「じゃあ、わたくしはそれを注文しますわ」

「あ、私もそれで」

ツェツィーリアとフローネはあっさりと決まった。

「私はとんこつラーメンにしようと思います」

とハルカ。

「私はネギみそラーメンがいいですね」

ソフィーヤも決めたようだ。

「よし、みんな注文するものは決まったようだな。すいません、注文をお願いします!」

天馬が注文をする。

店には家族連れが多くいた。

おもに顧客を中流市民、それも家族連れにしているせいだろう。

かくして、この日は天馬がみんなにおごった日となった。

みんなはラーメンを思い思い食べていた。


五人の女性たちがユーリアの司令室に集まった。

彼女たちはSchwesternシュヴェスターン、つまりシスターズと呼ばれていた。

そこには天馬とサーシャもいっしょだった。

ユーリアが改まった調子で述べる。

「ここで一つ、重大な発表があります」

ユーリアが口を開いた。

「私たちは上層部から正式に一つの部隊と認められました。以降は私が司令官として指令を出します。そこで一つ、天馬君の地位に変更が生じます」

「地位の変更って……もしかして天馬教官は別の部隊に行くんですか?」

フローネが不安を口にする。

ユーリアはそれを打ち消した。

ではいったい、天馬に生じるという地位の変更とは何だろうか?

ユーリアは手を後ろで組んで。

「違います。天馬君にはこれから五人を率いる『隊長』になってもらいます。天馬君の上司は私です。みんなはこれからは天馬君を『教官』ではなく『隊長』と呼ぶように」

シスターズが互いに顔を見合わせた。

みんなからは笑顔が漏れる。

互いに天馬のことを理解しているからだ。

「「「「「はい!」」」」」

ユーリアは笑顔になる。

これで承認は取れた。

後は天馬の仕事だ。

「それでは天馬君、軽くあいさつしてくれるかしら?」

「はっ!」

天馬がユーリアに敬礼する。

それからおもむろに天馬は話し始めた。

「このたび俺はみんなの部隊長として就任した。俺はみんなを決して死なせない。俺にとってみんなはとても大切な姉妹たちなんだ。俺はみんなのことを姉妹シュヴェスターンと思っている。君たちを率いて俺は異世界の敵と戦う。みんな、俺についてきてくれ。共に異世界の侵略に対して戦おう。以上だ」

みんなは拍手で天馬の言葉に答えてくれた。

とそこで警報が響く。

サーシャが電話を取って応対する。

「はい、はい、飛行型の魔獣ですか? わかりました。すぐに伝えます」

「どうかしたの、サーシャ?」

ユーリアがサーシャに尋ねる。

「はい、現在星見市上空に飛行型の魔獣が現れたとのことです。そこで特殊防衛隊はすみやかに出撃するようにと」

サーシャが電話の内容を伝える。

ユーリアは軽くうなずいた。

特殊防衛隊の真価を見せる時が来たのだ。

「わかったわ。それでは天馬隊長、あなたはみんなを率いてすみやかに魔獣を殲滅するように」

「は! ではいくぞ、みんな。特殊防衛隊、出撃だ!」

天馬は出撃の合図をみんなに送った。


部隊は星見市に出撃した。

六人では初めての実戦だ。

六人は次々と魔獣を倒していく。

しかし、天馬は六人を指揮しながら思った。

今まで行う機会がなかったからでもあるのだが、みな戦い方が個人プレーなのだ。

一対一の戦いに持ち込むと強いが、集団で攻められると弱いのだ。

今回の魔獣は特殊だった。

魔獣は集団戦で攻めてきた。

天馬は歯を食いしばった。

「くっ、こんな時に部隊の弱点が露呈されるとはな……」

この問題は六人のチームプレーを露出させた。

敵は集団で攻めてくる。

一対一ではやられるからだ。

前衛は天馬、ハルカ、ソフィーヤ。

後衛はツェツィーリア、フローネ、アンジェリーナだ。

敵は集団で攻めてきて、こちらの得意な個人戦では戦ってくれない。

それが天馬たちを精神的に追い詰めた。

「ハルカ! あまり、前に出るな! 囲まれるぞ!」

ハルカも苦戦していた。

「ツェツィーリア、ハルカを援護してやってくれ!」

「はい、隊長!」

ツェツィーリアが青いビームを出す。

すると魔獣たちは散開した。

ハルカの周りから敵がいなくなる。

今度はソフィーヤが複数の敵に囲まれた。

「フローネ、アンジェリーナ! ソフィーヤを助けてくれ!」

「「はい、隊長!」」

魔獣たちはフローネの光の矢と、アンジェリーナの矢を受けて後退していった。

魔獣たちは天馬たちを囲もうとしてくる。

それに対して、各個人は各個に撃破するだけだ。

だが、魔獣たちは集団で一人を攻めてくる。

このままではまずい。

天馬はそう思った。

六人のチームプレーはガタガタだった。

それに対して魔獣のそれは見事で隙を与えない。

攻撃を仕掛けられると、原則後退し、こちらを突出させたところを包囲し複数で襲ってくるのだ。

各人は自分の目の前の敵しか見ていない。

これは部隊として解決されるべき課題だった。

すくなくとも、一人も戦死させずに天馬たちは基地に戻ることができた。

救いはそれだけだった。

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