VSダエモノイド
ツェツィーリア対ツォファル。
ツォファルは黒いローブを着た黒魔術師のような男だった。
顔は黒いフードで隠されており、中は闇に包まれていた。
うかつに動くことはできない。
ツェツィーリアはまず、ツォファルの実力を測ろうとした。
亜空間はプラネタリウム。
星々がツェツィーリアの頭上にあった。
ツォファルは闇を収束した。
ツォファルの手に闇が宿る。
「!? 闇、ですの!?」
ツェツィーリアが警戒する。
ツェツィーリアが銃砲を構えた。
ツォファルは闇をツェツィーリアに向けて放った。
ツェツィーリアは青いビームを闇の球に向けて撃った。
青いビームは闇の球をあっさりと貫通して破った。
「……」
「あら? ずいぶんと無口なんですのね? その程度の攻撃がわたくしに通じると思いまして?」
ツェツィーリアは得意げに笑った。
ツォファルはだんまりのままだ。
そもそもツォファルはしゃべれるのだろうか?
ツェツィーリアにはそんな疑問が浮かんだ。
ツォファルは今度は両手に闇をまとわせた。
闇の球が二発。
ツォファルは闇の球をツェツィーリアに向けて放った。
「そんな攻撃!」
ツェツィーリアは青い銃砲で闇の球を二発同時に撃ち破った。
その余波でビームがツォファルに飛んでいった。
ビームはツォファル自身にまで迫った。
しかし、ツォファルはそれをかわすそぶりがない。
ビームはツォファルの体の闇に当たって貫通する、と思われた。
ところが、ビームはツォファルの闇によって消し去られた。
「なっ!? わたくしのビームが!?」
驚くツェツィーリア。
そうこうしている間に、ツォファルは無数の闇の球を出現させた。
「くっ!? なんて数ですの!?」
ツォファルはそれら闇の球を次々とツェツィーリアに向けて放った。
「くっ! 迎撃ですわ!」
ツェツィーリアは闇の球を必死に撃ち抜くしかなかった。
次々ととどめなく闇の球が飛来する。
ツェツィーリアは何とか迎撃することができた。
しかし、圧倒的な物量を前にツェツィーリアは押されていく。
ツェツィーリアのほおを一筋の汗が流れた。
「くっ! なめないでくださる! エーテルビット!」
ツェツィーリアが六基のエーテルビットを出現させた。
エーテルビットはツォファルに飛んでいき、彼を全周囲からビームで焼き尽くす。
「ぐおお!?」
それは初めてのツォファルの声。
ツォファルは苦しみの声を出した。ツェツィーリアのエーテルビットが効いたのだ。
「ぐっ、この女ぁ……よくも我に傷をつけてくれたな。許さん……許さんぞぉ! 闇魔気!」
ツォファルが自身の影を伸ばしてツェツィーリアの足元まで送る。
その瞬間、ツェツィーリアは後退していた。
ツェツィーリアの足元から鋭い刃が飛び出てきた。
「あら、無口かと思いきやしゃべれたんですのね。わたくしあなたはしゃべれないんじゃないかと思っていましたの」
さきほどの攻撃は危なかった。
本能的に危機感を持ってとっさに後退したのだが……。
まさか地面から刃が出てくるとは思わなかった。
「死ぬがよい! 闇黒砲!」
ツェツィーリアに闇の粒子の砲撃が行われた。
だが、砲撃はツェツィーリアの十八番だった。
砲撃勝負ならツェツィーリアの方が上だ。
ツェツィーリアはフルチャージの銃砲ビームをツォファルめがけて撃ち込んだ。
きらめく青いビームがツォファルを襲う。
ツォファルはそれに呑み込まれた。
ツォファルは倒れた。
ツォファルの敗因はツェツィーリア相手に砲撃戦を挑んだことだ。
「まあ、こんなところですわね」
ツェツィーリアが勝利の宣言をした。
フローネ対ナオミ。
ナオミは忍者の姿をしたダエモノイドであった。
彼女は目元だけ出していて、それ以外の部分は覆っていた。
「あなたが私の相手ですか? あなたの名前は?」
「私はナオミという。我が主ミリアム様にかけておまえを殺す!」
フローネはクリスタルロッドを出した。
「フン! きさまはここで死ぬのだ!」
亜空間は小川の中だった。
ナオミはクナイを両手で出してフローネに投擲した。
少し前のフローネであれば一撃で死んだだろう。
だが、フローネはずっと自分で訓練してきた。
フローネが強さを身につけたのは天馬の影響が大きい。
フローネは通常の学業、訓練だけでなく自主トレーニングも積んでいた。
今では攻撃魔法も使えるようになっている。
フローネは杖から光の矢を出した。
光の矢はクナイに当たってクナイをそらした。
フローネの光魔法はその絶技とも言えた。
ナオミは爆薬を取り出して、フローネに投げつけた。
爆薬がフローネの前で爆発する。
「ハッハッハッハ! どうだ! そのまま焼け死……な!?」
ナオミは目を見張った。
そこには魔法障壁で自身を守っていたフローネがいた。
ほんの数週間前までのフローネではここまでできなかっただろう。
フローネはこれまで血のにじむような訓練をしてきた。
そのため、現在のフローネは並のダエモノイドを軽く倒せるほどのレベルに成長していた。
「星名 フローネ……まさかここまでできるとはな……どうやら私の認識を改める必要がありそうだ。この私も本気を出すとしよう! ライジンの術!」
ナオミが雷をフローネに降り注がせた。
フローネは障壁を展開する。
「フン! そのまま雷で潰してくれるわ!」
ナオミがフローネに雷を打ち込んでいく。
障壁にヒビが入る。
「くっ!?」
フローネの顔が苦しむ。
このまま雷を受け続けたら障壁は破られるだろう。
フローネはあえて障壁を解いた。
「バカめ! 自ら障壁を解くとは! さあ、殺してやるぞ、星名 フローネ! 死ぬがいい! ライジンの術!」
雷がフローネの上から降り注ぐ。
フローネは杖を上に上げた。
フローネの杖に魔力が集まる。
雷はフローネに襲いかかるはずだった。
ところが雷はフローネの杖先で消失した。
消滅したのだ。
「そうなんども同じ攻撃はくらいませんよ!」
フローネは雷を『魔素』に分解したのだ。
魔法の源は『魔素』であり、それは魔力によって操られる。
「くっ! ならこれはどうだ! 雷球!」
雷の球をナオミは出した。
ナオミの雷の球は放電していた。
「くらえ!」
ナオミは雷の球を投げつけてくる。
ナオミの雷球をフローネはじっと眺めた。
フローネは中くらいの光の矢を形成し、雷の球めがけて放った。
光の矢は雷の球を射抜いた。
「くっ!? やるな! だが、これで! 雷電槍!」
ナオミは雷の槍をフローネに向けて撃った。
「無駄です! 光の矢よ!」
フローネは光の矢を雷に向けて発射した。
二つの魔法は互いに相殺し合った。
「くっ! ただの小娘ではないというわけか……だが、これで終わらせてくれる! 多連・雷電槍!」
八つの魔法陣が宙に現れた。
ナオミは雷の槍を、しかも多数操ってフローネを殺すつもりだ。
フローネは杖の先に星の魔力を集めた。
そして星の光をナオミに向かって放つ。
「シュテルンリヒト(Sternlicht)!」
星の輝きがナオミに迫る。
シュテルンリヒトはナオミの雷電槍すべてを押しのけて、ナオミ自身を呑み込んだ。
「うわああああああああ!?」
ナオミは倒れた。
「これも教官の訓練の賜物です!」
それがフローネの勝利宣言だった。




