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始まり

地球とは異なる世界にて。

そこは塩の海の上にいくつもの塔が建てられていた。

その中で最も高い塔があった。

それは『ヤコブの塔』と呼ばれていた。

その頂で女帝風の、金髪の長い髪に黒いバトルドレスを着た女と、白い髪をツインテールにして白いミニスカートの少女が会話していた。

「地球侵攻の計画は順調か、ミリアム将軍?」

「はっ、万事順調に進んでおります。地球側には我らを止められる兵器は存在しません。地球は確実に我らがものとなるでしょう」

ミリアムはこうべを垂れる。

ミリアムはこの女に絶対の忠誠を誓っていた。

彼女は進んで女帝にひざまずく。

「フハハハハハ! それはよろしいことだ。我々の魔獣部隊によって、地球は蹂躙されるであろう。フフフ、この戦争、戦う前から勝ったも同然だな」

女帝が哄笑を浮かべる。

この女帝はディアボイア帝国の君主であった。

「しかし、一つだけ懸念がございます」

「? なんじゃ、それは?」

「はっ! 地球側と我が世界がゲートによってつながった結果、我々の世界のエーテルが地球に漏れ出しているのです。おそらく、このままではエーテルに適応した者が現れるかと」

ミリアム将軍が懸念を述べる。

これは予想されていなかった事態だった。

エーテルは超自然的霊的物質で、それに触れた人間や動物を変異させる力があった。

特に人に作用するとその人物に異能を授ける。

「つまり、『能力者』が現れると言いたいのだな、ミリアム将軍?」

「はっ、その通りでございます!」

女帝は深く思案した様子を見せた。

ミリアムは何も発言しない。

ミリアムは女帝が言葉を発するのを待っていた。

長いとも思える時間だった。

「ふむ……能力者の方が軍よりもはるかに厄介じゃな。能力者は我々に対抗できる力がある。……ミリアム将軍!」

「はっ!」

沈黙が破られた。

「地球に侵攻しつつ、現れた能力者を殺せ。能力者の存在は我々の計画を狂わせかねん」

「はっ、かしこまりました!」

「クックック、地球にどれだけ我らが魔獣部隊と戦えるか、見ものだな」

女帝は玉座に座りつつ、視線を夜空の星の方に向ける。

その視線が何を見ているのかはミリアムにはわからなかった。


「えー! フローネ! また告白されたの!?」

「しー! 声が大きい!」

「さすがですねえ。フローネちゃん!」

三人の女子生徒が会話していた。

話しをしているのは星名ほしなフローネ(Frone)とメグミ、キナコであった。

この会話は登校中のものだった。

星名フローネ――星見ほしみ学園の2年生で現在17歳。

フローネはライラックの髪に青い瞳、そして白いブレザーに青い、プリーツスカートを身につけていた。

フローネの髪はセミロング。

服の下からたわわな体が現れており、美人でスタイルもよかった。

そのため、よく男子生徒から告白される。

実際、フローネを狙っている男は多い。

「フローネってホント禁欲的よねえ……そんなに告白されても断固として応じないんだもん」

「いいのよ。私は今は学業に集中したいの。別に付き合いたい人もいないし……」

「フローネちゃんの言い分だと告白してくる人に不自由していないみたいだよ」

「私は美人だからっていう理由で告白してくるの人が気に入らないだけよ」

フローネはプイっと顔をそむけた。

これはフローネにとって変わらないはずの日常だった。

フローネはこういう日々がずっと続いていくものだと思っていた。

こうして、友人と話をして、学校に通って、社会に出て行く……それが人生だと思っていた。

確かにいつかは結婚するだろうが、それは今ではないと思っていた。

そう、この日、この時までは……。

ドカーンと大きな爆発音が鳴った。

「え? 何?」

フローネは目を丸くする。

角から、一人の男が飛び出てきた。

「くっ!?」

男性は白銀に輝く刀に、青いプロテクトスーツを着用していた。

男性は背後にいるフローネたちに気づく。

「!? 民間人か!?」

男性は刀を構えなおし、何かに備える。

突然角から牙を持った虎が襲いかかってきた。

サーベルタイガーだ。

男性はサーベルタイガーの牙を刀で受け止めた。

「ぐっ!?」

二者のあいだで力のせめぎあいが起こる。

男性は刀でサーベルタイガーの牙を封じ込む。

サーベルタイガーは牙で男性を貫こうとする。

「キャウン!?」

突然サーベルタイガーが後方に跳んだ。

男性の刀は光輝いていた。

フローネには何が起きているのか、全くわからなかった。

目を見開いて呆然と立ち尽くす。

「民間人! 危険だ! 離れていろ!」

男性はフローネに声をかける。

しかし、フローネたちは呆然として動けない。

フローネたちには何が起こっているのか全くわからなかった。

フローネたちの心を文字で表すと。

「え? え? え?」

だった。

フローネもメグミもキナコも何が起こっているのかわからない。

「くっ、呆然としているな……現実に理解が追い付かないのか……」

サーベルタイガーは男性に跳びかかってきた。

「くらえ!」

男性はサーベルタイガーの横を通り過ぎる。

サーベルタイガーがフローネたちの前に着地する。

「ひっ!?」

フローネはすくんで地面に座り込んだ。

ガタガタと体が震える。

「安心しろ。そいつはもう死んでいる」

その瞬間サーベルタイガーの瞳から光が消えた。

サーベルタイガーは倒れた。

そして黄色い粒子と化して消えていった。

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