第2話
3人がしばらく現状確認をしていると急に店のドアが開き、風が店内に吹き込んできた。一瞬の静寂の後、鎧を身にまとった女性が入ってきた。
「何てことだ…これは何かの魔法か?一瞬でこんな城が出現するなんて…」
女騎士は困惑の表情を浮かべながら、彼女は店内を見回している。
接客が職業病になっているアラタが自然に彼女に近づく
「いらっしゃいませ!…じゃあないか、あなたは?」
女性騎士は少し逡巡したのち、毅然とした態度で答える。
「我が名はセリカ・トラース!誇り高きトラス王国の聖騎士である。お前たちこの城は一体なんのつもりだ?」
(『城』?取り合えず物凄く警戒されているようだ。異世界から来たといって信じてもらえるか…)
コウタが考える間に、ゴウが近くにあった電動ドリルを手に取った。「見てくれ、セリカ。これは電動ドリルという道具だ」と、彼はスイッチを入れてドリルを回転させた。
ウィィィン!!とドリルの音が店内にこだまする。
セリカは驚きを隠せず、「それは…魔法の杖か?」と目を丸くした。
「試してみるといい」
ゴウはセリカに雑に投げてよこした。ボタンを押すと自分でも作動できることが分かり不思議がっている。
(よし、その隙にアレをとってくるか)
文具コーナーに向かおうとすると。サエが一歩前に出て、セリカに向かって美容製品を手に取っていた。「これは化粧品というものよ。女性が美しさを保つためのもの」と言って、彼女は保湿クリームの容器を開けた。
「これもまた魔法の一種なのか?」
セリカは初めて見る美容製品に興味津々のようだ。
戻ってきたコウタは地球の地図を広げる。
「これは私たちの世界の地図です。見てみて、ここにはあなたの知る場所は一つも描かれていないでしょ?」
セリカはその地図をじっと見つめ、しばらくの沈黙の後、ゆっくりと頷いた。
「私が初めて見る地図だ。あなたたちは本当に異世界から来たのだね」
そして、彼女はアラタたちにこの国が魔王の手によって荒廃していることを告げた。彼女自身も戦闘のための装備を身につけていた。そのことが、彼女が最初に見せた過剰な態度の理由だった。
「なるほど、セリカさんも大変なんだね。僕たちに出来る事があれば協力するよ!それこそ建物の補修材とかは豊富だから…代金はもらうけどね」
セリカはアラタの言葉に一瞬、驚きの表情を浮かべたが、すぐにそれが笑顔に変わった。「それなら助かる。我が国の町や城は魔王の軍勢によって壊滅的な打撃を受けてしまった。あなたたちの力があれば、復興が捗るはずだ」
「とは言え、代金を支払う手段がないと困るな…」とコウタが心配そうに言った。しかしセリカはにっこりと笑い、「心配しないで。まだ国には財宝はあるわ。それに、あなたたちの助けに対する報酬としてだけでなく、この国が元通りになるまでの生活費も含めて考えているの。」
「それなら問題なさそうだね。じゃあ、早速行動に移そうか?」とアラタが提案すると、セリカは再び笑顔を見せた。
「ありがとう、アラタ。それに、あなたたち全員への感謝の気持ちも忘れないわ。さあ、始めましょう!」
こうして、アラタたちはセリカとともに国の復興を手伝うことになった。