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無口で怖いとクラスで有名なギャルの和水さんが、僕だけに優しいんですけど  作者: 美濃由乃


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僕なんかの部屋にいる和水さん⑤


「……ん?」


 微かに感じた何かの匂いで、僕は意識を取り戻した。


 ゆっくりと目を開けると、見えた光景はなんとも味気ない自分の部屋の天井。


 意識を失う前に見ていた和水さんの下乳ではない事にガッカリする。


 ついでにいうと後頭部に感じる感触も変わっているようだ。


 和水さんのあのむちむちの太ももではない事くらい、僕は後頭部だけで感じ取れる。それだけ僕は童貞のプロだ。


 思った通り、身体を起こしてみれば僕の頭の下には、クッションが枕として置かれていた。


 クッションも気持ちいいけれど、和水さんの太ももとは比べるまでもない。


 いったい和水さんはどこに行ってしまったのだろうか。


 僕が眠っている……いや、気絶している間に帰ってしまったのか、部屋の中には和水さんの姿が見当たらなかった。


 一人で気持ちよく極楽浄土に行ってしまった僕に呆れてしまったのだろうか。


 僕は和水さんを探そうと立ち上がった、


「……あれ?」


 ところで気が付いた。


 僕の身体には、布団替わりに何か紺色のものがかけられていたのだ。


 それはなんと、女の子の制服、ブレザーだった。


 それが何かを認識した僕は迷う事なくそのブレザーを手に取って、瞬時に臭いを嗅いだ。


 その一連の行動には一切の躊躇はない。


 女子のブレザーに気付いてから、わずか0.1秒の早業である。


 ブレザーの内側に顔を押し付け、必死になって鼻から臭いを吸い込みまくる。


 申し訳ないけれど、僕は変態だ。


 誰にも見られていない状況で、女の子の服なんかがあったら我慢できるわけがないのだ。


 思いっきり臭いを嗅ぐこと数分。僕にはこのブレザーが誰の物かが分かった。


 だが念のため、しっかりと確信を持って宣言するために、僕はブレザーの脇の部分に鼻を近づけた。


 何故か。


 よく汗をかき、体臭が色濃く残る部分が脇だからだ。


 ブレザーの脇の部分を鼻に押し当てて臭いを吸い込む。


「これは……間違いない、和水さんの制服だ」


 僕は男子だから女子のブレザーなんて持っていない。


 そして先ほどまでこの部屋には和水さんがいたのだから、状況を考えればこのブレザーが和水さんのものだという事はすぐに分かる。


 だが、もし、急に目の前にブレザーが現れたとしても、僕は臭いだけで和水さんのブレザーを見分ける自信があった。


 これには物凄く自信がある。


 喩えクラスメイトの女の子全員分のブレザーを目の前に並べられたとして、その中から和水さんのブレザーを探し出す自信が僕にはあるのだ。


 最近僕は何度も身近で和水さんの体臭を嗅ぐ素晴らしい機会に恵まれていた。


 ついさっきだって和水さんのオッパイに顔を埋めていたのだ。


 あの甘ったるい刺激的な香りを嗅ぎまくった僕が、もう和水さんの匂いを間違う事などあり得ないというわけだ。


 と、他の人が聞いたらただ気持ち悪いだけで、何の自慢にもならない自信を持ちながら、和水さんのブレザーの匂いを堪能していると、不意に何か違う匂いを鼻が感知した。


 和水さんのいい匂いを邪魔するその匂いは、和水さんの体臭とは違うベクトルのいい香りで、僕はその出所が気になった。


 どうやらこの香ばしい香りはキッチンから漂ってくるらしい。


 それに気が付いた時、僕はキッチンからこちらに近づいてくる足音に気が付いた。


 慌てて鼻に押し付けていたブレザーを離す。


 その一瞬の後に、和水さんが部屋に戻って来た。


「あ、目覚めてたんだ」

「すいません和水さん、寝ちゃってました……って、和水さん!?」


 僕はやってきた和水さんの格好に驚きを隠せなかった。


 何故か。


 正面から見た和水さんは、その豊満な身体にエプロンしか着けていなかったからだ。


 腕も足も、首筋も、どこを見ても素肌が見える。


 つまり、これは、僕が何度も夢に見た、あの裸エプロン!


 あの和水さんが、裸エプロンで僕の前に姿を現したのだった。


「どうしたの? そんなにびっくりした顔して」

「だ、だって、それ、それ」

「ん? それって?」


 この状況の不味さが分からないのか、和水さんは首を傾げて僕を見つめ返してくる。


 その仕草がいちいち可愛らしくて、裸エプロン効果にもやられていた僕は、もういろいろと辛抱たまらん状態だった。


「そ、それです、そのエプロン!」

「あぁ、これね、キッチンで埃被ってたから、勝手に使っちゃった。別にいいでしょ?」


 そのエプロンには見覚えがあった。


 確か小学生の頃だろうか、家庭科の授業で僕が作ったエプロンだ。


 家で使えるからと頑張って作ったはいいものの、未だに僕は一度も着用した事がない。


 その僕が作ったエプロンを和水さんがそのお身体に着用していた。


 小学生の自分が作ったエプロンはかなり小さい。


 使う事自体は問題じゃない。


 問題なのは和水さんの使い方だ。


 身長があまり伸びなかった僕ならまだ普通に見えるかもしれないけれど、身長だけでなくいろいろと大きい和水さんにはどう見ても小さすぎた。


 いったい膝上何センチだろうか。それに、大きな胸を覆っている部分は、もうはちきれそうな程ぱっつんぱっつんに伸びきっている。


 そんな和水さんの姿はあまりにも刺激的すぎた。


「いや、それはもちろんいいんですけど、その使い方は、倫理的にマズイといいますか」

「は? どいう事? エプロンはこうやって使うものでしょ?」

「えぇええ!? 和水さんはいつもそうやってエプロンを使ってるんですか!?」


 思わず大声を出してしまう程の衝撃だった。


 なんと、和水さんの中では裸エプロンが常識らしい。


 僕は和水さんが裸エプロンで料理をしている姿を瞬時に想像した。


 それは夢のような光景だった。


 そんな夢のような光景を実際に見る事ができる和水さんの家のキッチンは、きっと天国のような場所に違いないと、僕はそう確信したのだった。

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