自意識過剰というわけではなく
一応の注意書き:前作の短編とは関わりがありませんので、その点はご注意ください。
僕のクラスには、無口でクールで恐ろしいギャルがいる。
彼女の名前は和水優香さん。
もう一度言うけど、なごみゆうかさんだ。
名は体を表すとしたら、和んでいて優しいギャルになるわけだ。
けれどそんな和水さんのクラスでの評判は、完璧に名前負けしているといってしまっても過言ではない。
もう一度言うけれど、なぜなら和水さんは、無口でクールで恐ろしいとクラスで有名だからだ。
皆から恐れられている和水さんはいつも一人。
たいていは窓際の一番後ろにある彼女の席に座って、不機嫌そうに窓の外を眺めている。
もし誰かが和水さんに話しかけでもしたら、彼女は眉間に皺を寄せて相手を睨み、無言で冷たく舌打ちして追い返す。その対応を受け、和水さんとお近づきになろうとした幾人もの男子が撃沈した。
僕は、軽率なクラスメイトの一人が和水さんから絶対零度の視線を向けられて、儚くも砕け散った様子を実際に見た。だからこそ、怖くて自分から和水さんに話しかけたことは一度もない。
これが和水さんがクラスで恐れられている理由だ。普通ならそれほどまでに恐れられていると、誰も関わろうとはしないけれど、今でも和水さんに近づこうとする男子が絶えないのは、ひとえに彼女の魅力が大きい。
これはクラスの男子のほとんどが言っていることだけど、ただ静かに座っている和水さんは、見惚れてしまうほど絵になるのだ。
目をうっすらと細め、頬杖をついて外を眺めているその横顔は大人びた色気があり、物憂げな様子の彼女が何を考えているのかつい知りたくなってしまう。
窓から入って来る太陽の光は、和水さんの明るいブラウンのショートヘアを輝かせる。耳元で光っている青いピアスとブラウンの髪のコントラストはとても綺麗だ
さらに目を引くのは、彼女が机に載せているあるものだ。普段からあんなに大きなものを身体につけていると、よほど重たいのかもしれない。
前かがみになって頬杖をついている和水さんは、彼女の身体にある大きな胸を机の上にいつも載せている。制服越しにもはっきりとわかるくらいの大きさで存在感が凄い。ここだけの話、僕はよく見入ってしまう。和水さんが少し体制を変える度に、机の上で形を変える膨らみが僕の視線を吸い寄せて離さないのだ。
スケベ野郎だと罵られるかもしれない。けれど僕は和水さんの隣の席だから、彼女の様子が他の人よりもよく見えてしまうのだ。そういう深い事情があるから胸に目を奪われても仕方ない。
あと、和水さんは座っている時よく脚を組んでいる。そうするとどういう事態が引き起こされるかというと、和水さんの太ももが大胆に見えてしまうということになる。なんとも素晴らしい光景が出来上がってしまうのだ。
かなり短いスカートは、和水さんが立っているだけでも危険が危ないような状態で、さらに脚を組んで座ったりしたらもう大変だ。染み一つなく、少し太めで柔らかそうな太ももが大胆にさらされる。
つまり、僕は和水さんの脚にも釘付けになってしまうということだ。やっぱりスケベ野郎じゃないかという声が聞こえてきそうだけど、隣の席という絶好のポジションに僕みたいな童貞が配置されたら、これは本当に仕方ないことなんだ。
それだけ和水さんが魅力にあふれているということで、だからこそいくら冷たくされてもアタックする人が途絶えないのだと思う。
そんな無口でクールでいつも不機嫌そうで怖い和水さんと、隣の席になってはや数週間。
僕はあるとんでもない可能性にたどり着いてしまっていた。
それは――
――和水さんが、何故か僕だけには優しいかもしれないということ。
まるで童貞がする都合のいい妄想のようなことを僕が考えているのは、僕が童貞だからというだけじゃなく、ちゃんとした根拠に基づいているのです。