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アイテットの異変

教会に着いた。


町のシンボルだけあって、やはりかなり大きい。

5階建でたくさんのステンドガラスが使用されている厳かな姿だ。

ただ、建てられてから長い年月が経っているのだろう。

それなりに歴史を感じる。


「とりあえず中に入りましょう。

皆さんも神に祈ってみてはいかがですか?

信心深い者を神は寵愛しますからな。」


ドウキョウがそういって教会に入っていった。


俺とテオもそのあとに続く。

たくさんの長いすに体を軽く捻った女神の像が中央にある地球でよく見るタイプの教会だった。

中も外観ほど古い感じではなく、隅々まで掃除がいきとどいているといった感じだ。


「アイテットによくぞ来られた。この出会いを神に感謝いたします。」


キョロキョロと内装を見ていると、初老の優しそうな顔のじいさんに話しかけられた。


「貴方は私と同じく神職の僧侶と見えましたが、この町にはどのようなご用件で来られたのでしょうか?」


「あなたがこの教会の神父ですかな?拙僧はドウキョウと申すもの。

この町には()()()()()()()()のですが、しばらくの間、この教会で世話になりたいのですがよろしいか?」


「アイテットの神父を任されております。

ヴィクターと申します。この教会は私一人で管理しておりますから、部屋もかなり余っております。

好きなだけ、何日でもお過ごしください。」


ニコニコとした顔でそういっている神父のヴィクターは、聖職者というよりは魔法使いの学者のようないでたちの長い灰色ローブと眼鏡が似合うナイスミドルだ。

さすが神父ともいうべきか、第一印象で安心感を覚えるような優しさを感じるな。


そんなことを考えていると、やっとヴィクターさんは俺たち2人に気づいたようだ。

「そこのお連れのお二人は……?」


「申し遅れました。Eランク冒険者のテオといいます!」

「ロロネです。よろしくお願いします。」


「テオさんに、ロロネさんですね。

この時期に冒険者の方が教会に滞在してくださるのは大変ありがたい。

お二人もぜひここでゆっくりとお過ごしください。」


「こんな時期というのは、魔獣が町に出ているという……」


「ええ、そうです。嘆かわしいことに子供や女性を好んで狙っているようでして、早く討伐されることを祈るばかりです。」


そういって悲しげな表情でうつむいてしまった。


「そんな卑劣な魔獣は僕とロロネさんがいればすぐに倒せますよ!

ですよねロロネさん!」


そんな風に突然話を振られたが、魔獣と戦うのは極力避けたい。

これまでの情報から、かなり弱い子供と女性を狙う狡猾さと、痕跡を残さない器用な魔獣であることがわかっているのだ。

俺単体の実力はFランクなのだから、万が一にも勝ち目はないだろう。

しかし……


「ヴィクターさん、魔獣と遭遇した時には町のために戦おう」


「おお、なんとも心強いお言葉。

この出会いは神の思し召しでございます。」


そういってヴィクターは膝をついて女神像に祈り出した。

いつしか辺りは夕焼けに染まり、情緒的で感動的な雰囲気に満ちていた。

ドウキョウは空気を読まず、ウロウロと教会内を散策していたが。





結局、しばらくドウキョウの提案でアイテットに2週間ほど滞在することになった。

この1週間、テオと交代でドウキョウに付いて回り彼を警備した。

ドウキョウは町の人々から様々な話を聞いて回足ったりしていたと思いきや、1日中女神像を眺めていたりと意味不明な行動を続けていた。


俺とテオは、ドウキョウの警備がない日には魔獣の情報を求めて聞き取り調査や、魔獣の痕跡を探した。

だが、やはり見つからなかった。


そんな中、


「キャーーーーー!!」


まだ日が昇り始めて、人通りが少ない町に女性の悲鳴が響いた。


「テオ」


「ロロネさん、先に行って様子を見てきます!

ドウキョウさんと一緒に来てください!」


そういってテオが、この1週間近く宿としていた教会の1室を勢いよく飛び出していった。




ドウキョウは女神像の前にいた。


「ロロネさんおはようございます。

今日はテオ殿がついてくれる日ではなかったでしたっけ?」


「悲鳴が聞こえなかったのか?」


「悲鳴?? 聞こえませんでしたねぇ。

ボーっとしていたせいでしょうか。」


町中に響くほどの悲鳴だった。

聞こえないはずはないのだが、そんなことよりもドウキョウを連れて様子を見に行くことを優先した俺は、テオの後を追いかけるのだった。



町の人々はすでに悲鳴が起きた場所に集まっていたようで、遠目からでも人だかりで場所がわかった。


「ロロネさん!」


そんな中、テオが手を挙げているのが見えて俺たちは合流した。


「子供が魔獣に連れ去られたようです。黒色で小さめの魔獣みたいです……。

そこでヴィクターさんが介抱している母親が手を離したすきに子供を連れて逃げたということでした。」


人だかりの中心では、確かに母親らしき人がヴィクターによって介抱されていた。


「さっきまで錯乱していたが、今は落ち着いたようです。

この場は私に任せて、魔獣の追いかけてください。」



ヴィクターのその一言で、町の人々はこの場を後にしていった。

ふと、ドウキョウの姿がないことに気づいた。



「テオ、ドウキョウがいない。

教会に戻ったかもしれないから見て回ってくれ。」


「分かりました。ロロネさんはどうしますか?」


「ヴィクターにもう少し状況を確認しようと思う。」


「わかりました。ロロネさん、一人で魔獣と戦わないでくださいね。」


そういって、テオが教会に走り去っていった。

しかし、人間の子供を連れ去るほどの力を持つ小柄な魔獣がいただろうか。

仮にいたとしてもこの辺は魔山脈から遠く、比較的弱い魔獣しかいないはず。

明らかに魔獣の存在は異常なのだ。

胸騒ぎがする。



俺は連れ去られた子供のことを思い、イヤな想像を振り切るように頭を振った。



一区切りついたら人物紹介挟もうかなと思います。

引き続きよろしくお願いします。

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