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近づく毒

2話目。


ロロネの朝は早い。

毎日の日課としている素振りを行い、武器や手入れを行う。

毎日1000本の素振りが、ゴブリンと遭遇した時に命を落とさずにいられる秘訣なのだ。

ゴブリンを安定して倒せる実力があったら、とっくにEランク冒険者になれるのだが、彼は危険を犯すことを良しとはしない。



「よし…ギルド行くか」

日課の1000本素振りを終え、愛剣を磨き終えたロロネは依頼を受けに向かった。





冒険者ギルドはいつもより若干ざわついていた。


「ロロネさん、この依頼やめといた方がいいですよ」



ギルドの受付嬢に、いつも新しい依頼を持ってくると言われるセリフだ。

これが何回も成功している依頼という点を除けば、いつもとまるで同じだ。


「なぜだ?」

「採取地に大型魔獣の足跡が見つかったそうですよ」


「なんの魔獣が出た?」

「足跡を発見した冒険者の話では、レッドベアーぐらいの大きさで蹄の足跡だったそうです」


…判断が微妙なラインだな。

蹄系のモンスターは草食モンスターが多い。

可能性としては、若い個体のギガントホースが高い。

それならば、狩場を知り尽くしている俺なら、遭遇しても何かしらやりようがありそうだ。

だが……


「今日はやめておく」

「賢明ですね」


その日は、村の外門の警備の依頼を受けた。



次の日も依頼を受けに冒険者ギルドに来たのだが、

冒険者の数が少なく感じた。

耳に聞こえてきた話を聞くところ、例の魔獣調査にボードンが向かったまま帰ってきていない様子だ。

ひとまず受付でも事情を聴くことにする。


「まだ、狩場の調査は終わっていないのか?」

「昨日、ボードンさんのパーティーが採取場の魔獣の調査に出たきり、戻ってきていないんです」


D級冒険者の実力でギガントホースに後れを取ることはないと思う。

道に迷ったか、報酬の分配で揉めたか、ギガントホースの運搬に苦戦しているのだろう。


「ロロネさんなら、ちゃんと帰ってきそうですし、確認をお願いしてもよろしいでしょうか…?」

「毒消し草の依頼を頼む」

「ありがとうございます!」

「依頼のついでに様子を見てくるだけだ」


あのパーティの荷物持ちの少年が気になったため、やはり様子を見に行くことにした。

危険は冒さないという主義で今までやってきたが、狩場を知り尽くしたという慢心がこの決断を招いたのだろう。





一日経過したが、助けが来る様子はない。


依頼自体は、狩場に現れた大型魔獣の調査ということで、危険があったのは確かだ。

しかし、村最強の()使()()がいるこのパーティーの一員という楽天的な気持ちがあった。

だから、武器を持たずに馬鹿みたいに大きな荷物を担がされることを容認したのだ。


しかし、荷物を持たなくても俺は()()()()()()()


武器を使おうとすると、体が思うように動かなくなる呪いなのだ。

その代わり、大量の荷物をもっても苦にならないほど肉体が強い。

大きなケガをしたことがない。



だが、そんな力は荷物持ちにしか活かせない。

戦士が武器をまとえないのでは、はっきり言って何も意味がない。

しかも、力が強い代償に人一倍痛みに弱かった。

体を全力で動かすと、全身が引きちぎれるような痛みに襲われる。


そんな俺が、代々優秀な戦士を輩出する故郷の島を出たのは、単純に居場所がなかったからだ。


だから居場所を求めて、俺でも活躍できる荷物持ちになった。

流れ着いた村で、最強のパーティーに入れたが所詮は荷物持ち。

最近はろくに報酬を分けてもらえなくなったが。


そして今。



「テオ、お前はクビだ。最後に囮になってパーティーに貢献しろ」



最後の居場所も失った。






半日歩いて昼頃に、ようやく例の魔獣の足跡を見つけた。


発見した蹄は、村の領主が引いているギガントホースの蹄とは、そもそも種類が違うということしかわからなかった。

ただ、足跡が浅く感じられたので、足のサイズだけ大きな魔獣という可能性もありそうだ。


「なんにせよ、もう倒されてるだろうしな」


もしかしたら行き違いになっているかもしれないが、自分の安全が一番なので魔獣の出現が少ないルートを選択した。


まあ、素材の運搬を手伝う羽目になるよりかは大分ましだな。


そんなことを考えていると、前から冒険者が息を切らせて走ってきた。




「なにがあった?」

ボードンのパーティーで弓を担当している奴だった。


「ポイズンバロメッツが出た!早く逃げたほうがいいぜ」


ポイズンバロメッツは、植物が4足動物をかたどったような姿だが、実態は毒を持つ肉食魔獣だ。

一目でわかるほど擬態は不自然で、その植物系の見た目から火に弱いと勘違いされる。

しかし、全くそんなことはなく、B級の魔獣として倒すのは厄介な部類とされる。


まず、全身から神経系の麻痺毒を分泌しているため、長時間戦闘をしていると強烈な痛みに襲われ、体の自由が利かなくなる。

また、その巨体は何百年も生き続けている木のように頑強でしなやか。

加えて、切断系の攻撃は再生するから効果が薄いと聞いたことがある。


素材は武器防具に使われたり、家具や薬にもなるが、狩るのが難しいので高級品だ。


「そんな大物が来ているとはな」


しかし、動き自体は遅く、逃げるのはそこまで難しくはない。

襲われたということは、大方、素材目当てで戦いを挑んで敗れたのだろう。


「他の奴らは?」

「バラバラに逃げたからわからん。俺は逃げるぞ」


そう言い残して、彼は村へ走り去っていった。

村へ状況を知らせるという意味では、もうやることは済んだようなものだが。


「どうしたものか…」


単に様子を見に行くだけのつもりだったのだが、このままだとポイズンバロメッツと会敵することになるかも知れない。


「それに、俺が行く意味があるんだろうか」


戦闘力ではむしろお荷物だろうと考え、俺は村に戻るか迷うのだった。








しばらくは、短期で集中して投稿してみます。

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