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「掘れば掘るだけ金が出る坑窟があるらしいの。だからね、私も掘ってみたいのよ!」
彩希の目が金色に染まっている。
「おかげでここは誰もが入って行ってる訳だ。でも、強盗団もいる訳だよね?そんな物騒な場所で金を探すってのは厄介だなぁ…」
僕達も街の人達がなかなか言葉を濁して言わなかった金が取れる場所に興味を示してしまった。
「でも、場所が判っていないのよねぇ。誰かが掘ってきたのを見ただけで…」
いくみの疑わしい口調に夢と現実を照らし合わせて、なんとなく夢から引き戻された気もする。
「なんか、奥の方をずっと掘っている人達がいて、真似して掘るとケンカになるからダメだって、そこにいたオジサンに言われたよ~」
流石、桃はだいたいオジサンが何も聞いてないのに教えてくれる。
「まぁ、兎に角入ってみましょう。賞金稼ぎか、黄金漁りかは別として興味はあるわ。」
すずかが今回は少し積極的である。
「そう?私の鉈が血を求めているのよ。」
すずかが呪われたの?
「最近ね、すずかがキラーだけのグループに思われたくないんだって!美女軍団なのにねぇ~」
朱音が自分で美女軍団って言っちゃった。
そんな話をしながら入口に。
思ったよりもかなり大きな入口だった。
「横に10人並んで入れるね。洞窟ってこんなに入口広いんだっけ?」
桃がはしゃぎながら入口の上部を見た。
「ギャー!」
桃が叫ぶのも無理は無い。天井にビッシリと蝙蝠がいた。
「洞窟なんだからしょうがないさ!それよりも臭いが辛いかもね。蝙蝠ってのは大丈夫なんだけれど…」
僕は桃を見ながら洞窟の中へ足を踏み入れた。
「一応電気が暗いけれど、点いているんだ。これならまだ最初は楽に歩けるわ。」
彩希が壁を見ながら歩いているのは恐らく金の事に興味を示しているからだと思われる。
「結構人も多く入っているみたいね。洞窟なのに随分と人の声で賑やか。」
いくみがナイフを確認しながら歩いていく。
「強盗団ってどの人達が強盗団なんだか分からないわ。金目当てのグループも多いから、それを襲いかかるのかもね。」
朱音の言葉は結構現実的な話だ。悪魔を倒す為に冒険していた時とは微妙に今回は違う気もする。
「フフ、気を付けないとここで死んだら蝙蝠のエサになるだけよ。」
一緒全身に寒気が走り、声の方向を全員で見た。
「ヒツバーかと思ったけれど、違うお姉さんだった~こんにちは!!」
僕のテンションが上がった事でどんな美女が出てきたか、御推測願いたい。
「貴方達も金が目当てかしら?私はルイア、後は仲間達って感じなのだけれど……」
妖艶な笑みを魅せながら、なんとなく右手が動いたのを確認した。
ゴン!予想通りハカセも見ていたらしい。上手く盾で防いでくれた。
「あら!闘い馴れしているのかしら?フフ、貴方達が金が目当ての前に強盗団を捜しているみたいだから出てきたけれど、そうね…そこそこ経験がありそうで楽しみだわ。」
ルイアと名乗った美女が持っていたのは丸い鉄球と鎖が付いている武器だった。
「ルイア、ここはまだ浅い。今は様子見って事を忘れずに。」
横に付いていた男がルイアに耳打ちして、そのルイアもまた艶かしいポーズで僕達に向かって投げキッスをした。
「じゃあまたねぇ~」
ルイアが居なくなった。
「何?あれ?あんなのが強盗団なの?強盗団って薄汚いか、モヒカンでヒャッハーとか言ってる奴等じゃないの?」
いくみ~モヒカン=悪いはやめろよ~
どうやらルイアと云う美女は強盗団の人物らしい。解ったのはそれだけだった。