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何故あれ程複数のグループがいるのに悪魔を倒したとの情報が出ないのかが8階に到着して理解できた気がする。
「照明がここから無いのね。」
懐中電灯を片手に遠くを見ている。ハカセは探検家の様なヘルメットにライトを取り付けているので相変わらず防御力が高そうだ。
「ここで何か出てきたら桃、怖い~」
朱音と桃が手を繋ぎながらいるのだが、確かに視界が悪くて光の範囲しか存在するものか判らない。
「僕はさ、最初にダンジョンに入った時にこんな感じだと思っていたから、なんとなく想定内って気がするんだけどね。」
そう、僕は地下鉄の通路みたいなダンジョンの方が違和感があったのだ。まぁ、これだけ暗いとは思っていなかったのだが…
「他のグループがなかなか来ないのがよく分かるね。敵が出たら大変そうよ。」
いくみの細い身体が暗闇で妖艶に見えてしまう。
「……今いやらしい事考えてるでしょ?変な事しないでよ!」
彩希がすぐに僕の事を読み取ってしまう。
「ええっ!キラー、こんな怖い場所でそんな事考えてるの!」
桃~ちょっと拡大し過ぎるよぉ~
「賑やかだけれどお前達はそろそろ黙ってくれないか?ああ、全員黙らせてあげよう、永遠に!」
暗闇から白いスーツの男が。
「あっ!この前のAクラスとか言ってた奴等かぁ~」
僕は軽く見てしまった。そうか、あのライヴ映像から行方が分からなくなっていたのは8階に居たからなのか。
「俺達も上で歩き辛くなったからな。新規で来た奴等を襲撃が一番楽だわ。まさか、お前達がノコノコ降りて来るとは思わなかったよ。」
白いスーツの男がニヤニヤしながら剣を抜く。
「今回は貴方達は既に敵としか思っていないわ。」
いくみのナイフで1人早くも倒れた。
「ごめんなさいね。トドメ。」
呟きながらすずかが鉈を振り下ろす。斬ってはいないで撲った感じだ。
「お、お前達闘い馴れてないか?」
雑魚の1人は白いスーツの男の隣で慌て出した。
「落ち着け!」
白いスーツの男が周囲に言うが尚更慌て出す。
「悪いけれど、Aクラスとか気にしないから私達の前から消えて!」
彩希が白いスーツの男に包丁を。
流石に剣で受け止めたのだが、
「一番槍~」
桃が左肩を槍で突いた。
完全にこの流れは彼等から戦意というのを削ぎとってしまった。
「お前等よくも!!」
言っている間にドンッ!と音を立てて白いスーツの男は倒れた。
「もう付いていけねぇ~」
仲間に後ろから刺され白いスーツの男は血塗れになっていた。
「裏切られたって事かしら?ワンマンチームだったみたいだものね。」
哀しげに彩希が白いスーツの男の遺体を見下ろしている。
「そうだね、この暗闇の中で考え方が違う方向になれば大変な事が起きるって事の実例ね。」
いくみも深刻な顔をしている。
「結局彼は何がしたかったのかしら?弱いのを倒して自分が上でいたかったのかな?寂しい人ね。」
すずかが言った事がだいたいの事なのであろう。
上位の立場に居たくて下を叩き潰そうとして、最後は仲間に裏切られたって事か…
「みんな一緒に頑張ろうね!」
僕はみんなに声をかけた。
「そうね、いやらしい事ばかり妄想しないでね。」
彩希が辛辣な言葉で返してくれた。
僕達は彼等より団結している筈だ。